【南洋ホワイトベアーズ】


 今季のホワイトベアーズはリーグ戦3位で終わった。


 クライマックスシリーズのファーストステージでは、3位のチームはビジターゲームになる。

 

 試合は大阪で行われた。

 おれは大事な場面で、代打として二度打席に立ち、二度とも打てなかった。

 

 しかも2戦目の打席では、1点差の9回ツーアウトの場面で三振だった。

 おれの三振で試合が終わった。

 チームは2連敗して、ファイナルステージに進む事が出来なかった。


 

 ・・・あれが現役最後の打席だったのか


 フルスイングが身上だったのに、最後はハーフスイングの見逃し三振。

 

 アンパイアの右手が上がった瞬間に、湧き起こった大阪ファン4万人の歓喜の叫び声よりも、勝利を信じて南洋から駆けつけくれた、数千人のしろくまファンの溜息の方がおれの心に大きくのしかかった。


 

 ・・・あの時のあの中途半端なスイングが、おれの最後だったのか


 

 37歳、実働15年。

 二度の大ケガを経験している。

 そして1度はレギュラーに復帰する事も出来た。

 日本一には手が届かなかったけど、何度か日本シリーズにも出た。


 今季は47試合に出場して、55打数12安打、2割1分8厘、5本塁打、15打点だった。

 控えの捕手としてもひどい成績だ 。

 

 しかも、おれは代打専門や控えの捕手として契約しているわけではない。

 正捕手として給料を貰っている。

 なのにもう丸7年もそれに見合った働きをしていない。


 今季、正捕手を務めた片山もシーズン途中は腰痛で苦しんでいた。

 あいつももう35歳になる。

 

 守備の要と言われるポジションがこれでは、首脳陣としても不安でたまらないであろう。

 今季のようなベテランの2名体制ではとても安心出来ない。

 

 チーム編成を考えた場合、最初に解決しなければならない課題が捕手の世代交代、若返り。

 

 考えれば当然のことで、こんな事はリスク管理なんて大袈裟な話でもない。


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