派遣先の年末調整で
純木蓮
第1話 小さな折り紙箱
派遣先の仕事で、いま年末調整に行っています。
まさに12月にかけて書き入れ時で、毎日数百人という派遣社員を動員して作業を行っています。
日によって配属先が替わります。仕事そのものは単純作業で、9割方女性が働いています。
今日は封筒を開けて書類を振り分ける作業、今日はパソコンに数字を入力する作業、今日はQRコードを読み取る作業と、その日によって忙しい部署、作業が遅れている部署にまわされる感じです。
昨日は封筒をカッターを使って開封し、その中に入っている、住宅、保険、扶養の三項目の書類をそれぞれの指定の箱の中に入れていくという作業内容でした。
書類の中身はホチキスで留められてあったり、のりで貼り付けてあったり、輪ゴムでくくられていたり、クリップで挟んであったりと提出する人によって様々です。
作業の進行に伴い、外れたホチキスの針、クリップ、輪ゴム、消しゴムや用紙のかすなど、ちょっとづつゴミとして溜まってきます。
しかしゴミ箱は、あっちこっちにありません。
個人情報を取り扱う作業のため紛失は厳禁です。
そのためにフロアの限られたところだけにゴミ箱を置くようにしているようなのです。
そんな中に起きた出来事でした。
ちょうど休憩時間になり、前に座っている女史3名が、自分たちの机のうえに溜まってきた残骸についてどうしようかと話し合っていました。
そのうちの一人が
「あっ。そうだ、あの箱どうやって作るんだっけ?あの箱作ろうよ~」
と二人に問いました。
同時に二人は思い出したように
「あぁ~。あの箱のこと!」
「そうそうそう、余った紙で作ろうよ!」
それからは、三人集まれば文殊の知恵です。
昔に作った折り紙の箱をあーでもない、こーでもないと童心にかえってたのしく話し合いながら作っていきました。
「三角形から始めるんだっけ、四角形からだっけ?」
「ここから折り目を付けて、この線に合わせてここから折って~」
「ここからどうすんだっけ~?」
ほのぼのとしたその様子を、私はただ黙って見守っていました。
“歳はとっても気持ちは全く変わってないな~。あの頃と同じだ。”
その光景は小学校時代に同じクラスの女子が私の目の前でやっていたことと、なに一つ変わっておらず、なぜかホッコリしてしまいました。
そのあとトイレ休憩から作業場にもどると机の上に飴が置いてありました。
お礼を言って飴をほおばると
飴のから袋は、ここに入れて~と、見事に完成した小さな折り紙箱を差し出されました。
その表情は、なかなか満足げでした。
派遣先の年末調整で 純木蓮 @junmokuren
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