第11話 一芸一能

 古部室棟の片隅。

 占術部せんじゅつぶに存在が

 部員1名。本日付けで2名に増員。



 放課後、男女生徒教師問わず相談者が訪れては、「魔女」の宣託を受けて去っていく。


 俺はドアの横で集金する係。

 まさか金をとっているとは思わなかったが、


かてを得るのに己が才を活かすのは当然よ」


 だそうである。

 麻璃亜まりあは校長、教頭、学年主任の弱みを握っており相談も受けており、南高を実効支配じっこうしはいしていた。


 恐ろしい女だ。

 ただ、そんな「魔女」にも面倒な相手はいるらしい。


「麻璃亜様! どうかその御御足おみあしで踏んでくださいませ! どうか! 何卒なにとぞ御慈悲を!!」


 肥満気味の長髪の男子が唾と鼻水と涙をまき散らしながら土下座で麻璃亜に這いずり寄ってくる。この手のも稀に来る。これまではカーディガンガールードに袖を通して物理的に処理していたらしいが、


「駄犬」

「はいよ」


 今は俺の担当だ。


「出ていきな。集金は免除しといてやる」


 引きずり起こし、部室から蹴りだした。


「良い手並みね。駄犬にも使いみちはあるのね」


 褒められた。

 いや、褒められてないか。


「売り上げは?」

「30万」

「悪くないわね」


 凄い稼ぎだと思っていたが、そうでもないのか。


「けれど疲れたわ。部活占いはここれでお終い」

「応」

「話の前に、駄犬。お茶を淹れて頂戴」

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