幕間『ミーナ&ナーミの天下とりマス!!』
第一話
ここはアルドラマの首都にある魔界ブロードキャスティング(MBC)の本社ビル。12階のラジオブースでは今をときめく双子女子アナ『ミーナ&ナーミ』の人気深夜ラジオプログラム『ミーナ&ナーミの天下取りマス!!』の生放送が行われていた。
「深夜もどっぷりですが、アルドラマ中が大注目の七魔王の総選挙!ミーナの予想を聞かせてちょうだい!」
水色のリボンに水色の瞳、妹のナーミが総選挙の予想を問いかけた。
ラジオブースの中で、向かい合わせに座った二人の茶色いショートボブには、
トレードマークの大きなリボンが揺れていた。
「おそらく大方の予想はファシルス様なのな〜アルドラマの宰相だしなぁ」
ピンクのリボンにピンクの瞳、少しだけ背の高い姉のミーナが答えた。
アイドル風な衣装や可愛らしい顔立ちから、二人は男性ファンがとても多く、ミーナファンは『みぃなぁ』ナーミファンは『ナーミー』と呼ばれている。
「じゃあ、ミーナもファシルス様有利と?!」
「と・こ・ろ・が!シャンゼデルタのプライム様は対抗馬としては申し分ないのな!間違えなく!アルドラマ1のリッチマンだもんで〜」
「ほほぉ、リッチっていうのであればルクスリア様も負けてないですよ!」
「たしかに財閥クラスで情報が非公開ときてるのな。まさにダークホース!」
「ウチらの故郷カンタローザはどうなの?」
「あぁベルチ様ね、ないのな」
「うわぁ!冷たい!」
「ルネリアのルサルカ様もまずは自国の支持を得るところからなのな〜」
「ははは、ベルチ様、ルサルカ様ときたらエルデネのイラ様はどう?」
「イラ様なんて、ここ数年の自然災害で選挙どころじゃないのな?」
「それで?本命は!?」
「断然!リロイ様!まじでかわいい!弟に欲しい!」
「完全にあんたの趣味やないか!えー、以上ミーナ&ナーミの七魔王の総選挙予想でした!」
喋り方にどくとくの癖があるミーナの言いたい放題な語り口と、しっかりと番組を回すナーミのテンポの良い掛け合いで番組が進められていった。
放送終了後、ブースを出て二人が帰り支度をしていると、やたらと声が大きくテンションの高い番組プロデューサーが話しかけてきた。
「ミーナ〜ナーミ〜最高でしょ〜、君たち最高でしょ〜。先週のスペシャルウィークの聴取率ランキング聞いた?全時間帯総合2位よ!深夜で1.7%て!!ラジオ業界始まって以来の快挙なわけよ!ラジオの帝王ニジウミーさんまであと一歩よ!これからもよろしくねー」
「は、はぁ・・・」
「まぁそんなわけで、改編お楽しみにっ、んじゃまたっ!」
そういって番組プロデューサは去っていった。
魔界ブロードキャスティング(MBC)はアルドラマ全域を対象地域とする放送局だ。フラクタル鉱石で電磁波を受信できることが発見されて以来最初の放送メディア局でもある。
魔界ヴィジョンネットワーク(Mヴィジョン)などとともに、メディアグループ を構成する魔界ブロードキャストグループの中核企業であるMBCは、アルドラマ中のメディアネットワークの中でも最大手といっても過言ではなく、
特に若者から大きな支持を得ていた。
そんなMBCの中でも一際話題を呼んでいる番組が『ミーナ&ナーミの天下取りマス!』なのだ。
『ミーナ&ナーミ』はMBC初の双子女子アナ。次期エースとして期待された局アナだ。
入社2年目の時、ミーナがきっと武器になるだろうと取得した気象予報士資格がきっかけで、二人揃って早朝気象予報番組に抜擢された。
そのおかげなのか、美人双子女子アナとしてささやかながらも人気に火がつき、ついにはラジオ深夜枠を担当することになった。
その新人離れした歯に衣着せぬ物言いのミーナと、的確なアナウンス力と進行力を持つナーミとの双子特有の掛け合いが徐々に人気を集めると、ついには深夜番組にしてゴールデンタイムである昼放送の人気番組に迫る勢いを見せているのだ。
「ちょっとミーナ。いまの聞いた?」
「1.7・・・?誰も聞いてないのな〜」
「何言ってんの全時間帯2位よ!アルドラマ中で聞かれてるのよ!」
「1.7〜。そんなんで2位なの?って感じな〜」
「それに、そこじゃなくて!改変楽しみにって言ったのよ」
「カイヘン?」
「改変よ改変!つまりもっと早い時間に移動するかもってことよ!!」
「なははは、打ち切りの可能性もあるかもなのな〜」
「あるわけないでしょ!今や私たちはMBCの、いや、メディア界の宝なのよ。ミーナ&ナーミの快進撃は魔王でさえも止められない!!」
「なっははーん。やっと時代がミーナ&ナーミに追いついてきたのだね」
「そうよ!目指すはてっぺん!!まずはMBCで昼のオビとってやるわよ!」
「ナーミは気が早いのな〜ははは」
MBCアルドラマ本社ビルを出た二人。
するといつもの様に出待ちのファンたちが待ち構えていた。
「ミーナさま〜、今日もしびれる毒舌をありがとうございました〜」
「キメェんだよ〜、あっち行けっ」
「あざーーーす!」
「ナーミさん!カウパローザーです!結婚して下さい!」
「はいはい。いつもネタ投稿ありがとーう。気持ちだけ受けっとておくわ。また送ってね〜」
カシャッ カシャッ カシャッ。
モバイルで写真を撮る出待ちファンたちに、タクシーに乗りこむナーミが手を振る。
「30人てとこか・・・。少ないわね」
「そう?こんな時間まで待ってるなんてどうかしてるのな〜」
「何いってんの、出待ちは人気のバロメーターよ。ミーナはもうちょっと愛想よくしなさい」
「あの写真何につかうんだろー、なははは」
「も〜!気持ち悪いこと言わないでよ」
二人を乗せたタクシーが朝焼けに包まれて消えていった。
それから数時間後のこと・・・。
シャンゼ=デルタ国の魔王城では諜報員たちによる活動報告が行われていた。
テーブルの上に並べられたMBCを出てタクシーに乗り込む『ミーナ&ナーミ』の写真をシャンゼ=デルタの魔王プライムが見つめている。
スピーカーからは、数時間前に放送された『ミーナ&ナーミの天下取りマス』が流れていた。
『それで?本命は!?』
『断然!リロイ様!まじでかわいい!弟に欲しい!』
『完全にあんたの趣味やないか!えー、以上ミーナ&ナーミの七魔王の総選挙予想でした!』
「プライム様このモノたちの発言いかがいたしましょうか?」
「大した影響は無いとは思うけど・・・。キミが危険と言うのなら僕はキミを信じるよ」
「お任せください」
「
プライムは意味深な笑みを浮かべた。
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