第九話 『七魔王の総選挙 開催宣言!』

ここはエルデネの隣国、

魔王ベルチが治める鉱山と建築の国『カンタローザー』。

ある日突然、エルデネとの国境に面したフラクタル鉱山の一画が、見事な三日月型に抉り獲られてしまった。

それを高台からじっと見つめる魔王ベルチが側近に尋ねる。


「なぁ、これ治る・・・わけ・・・ねぇよな・・・」

「はい、治りませんね」


魔王ベルチは、モバイルを取り出し怒りに任せて電話をかける。


『ツー・・・ツー・・・ツー・・・ガチャ』


「あ〜イラくん」

『おはよう、はやいなベルチ』

「おはよう・・・おはようじゃねぇ!君なにやってくれちゃってんの!?朝起きたら山が吹き飛んじゃってるじゃん!どういうこと?!マジどういうこと!?」

『あ〜す〜ご〜い〜・・・電波が〜わ〜る〜い〜、プッ、ツー・・・ツー・・・』

「イラくん!!絶対いまのウソでしょ!」


無くなった鉱山に、魔王ベルチの泣き声がこだまする。



「いいんですかイラ様?ベルチ様に恨まれますよ・・・」


ポイっと、モバイルをメリスに投げるイラ。


「ほっとけばいいよ。何日かしたら諦めるだろ」


メリスが何か言いたげな顔をしている。


「イラ様!あ・・・あの・・・」


「派手にやりましたね」

朝日が眩しいのか、サングラスをしたDDがやってきた。

メリスは続きの言葉が出てこなくなってしまった。


「ところで魔王イラ、この『宣誓書』に“日付”をいただけますか?」

「DD、それは私が・・・」


『宣誓書』には、誰かがイラを思って書いてくれたであろうサインが既にあった。そして、日付は修正され空欄となっていた。

イラは黙って“今日の日付”を書いた。


「本日・・・午前6時37分、確かにエルデネの魔王イラ様の署名をいただきました。ではこれにて、魔界選挙管理委員会本部に提出させていただきます」

「せ、殲滅兵器使用の件は・・・」

「メリス、宣誓書は“今“いただきましたが。なにか、問題がありますか?」

「・・・ありがとうございます!」

「ご苦労さまです。・・・彼女の方は資料整理がまったく終わっていませんので目が覚めたらしっかりと働いてもらいましょう」


DDは、アンを引きずって帰ってゆく。その後ろ姿を見送りメリスが大きな涙の粒を流す。


「メリス・・・悪かったな」

「はい!悪いです・・・でも“魔王”ですから」


笑い合うイラとメリス。


半壊した魔王城や“蝗害デスマーチ”からの復興、魔王総選挙以外にもまだまだやるべきことがある・・・。でも、こんなに立ちあがるのが楽しいと思えることが不思議だ。オレはなにを今まで躊躇ってたんだ?


“あいつ”の、いや・・“アン”のせいだな。



―・魔界選挙管理委員会本部・―

午前8時57分・―


本部に設置してある公文書転送通信機が、最後の『出馬宣言書』を受信した。本部魔管が『出馬承認』を見届け、これにて七魔王の出馬宣言が完了。本部公式会見の準備の為に、原稿を大急ぎで書き上げていた。


午前11時24分・―


魔界に存在する各社媒体の番記者に『本日正午、七魔王の総選挙開催宣言を選挙管理委員会本部にて行う』と通知が下り、大急ぎで記者クラブが会見準備を進めていた。



その頃、”魔界ブロードキャスティングMBC”でもデスクとディレクターが慌ただしくしていた。


「なんでこんなギリギリの発表なんだよ?なにか聞いてるか?」

「なんでもエルデネの魔王イラの出馬宣言が遅れたそうだ。」

「田舎魔王がもったいぶっちゃって何考えてんだ。おい!各国の魔王の取材に今日行くぞ。段取りしとけ!」


正午・―


『七魔王総選挙』会見中継開始


三名の漆黒のローブを着た『幽体』が姿を現す。

選挙管理委員会本部のTOPの素性などは秘匿されており、実際に存在するのかどうかもわからない。

彼らは魔界アルドラマ中央政府から独立した存在であった。


「アクサンドラ“魔王ファシルス”出馬」

「シャンゼ=デルタ “魔王プライム”出馬」

「アークレリ “魔王リロイ”出馬」

「ハロゲート“魔王ルクスリア”出馬」

「カンタローザー“魔王ベルチ”出馬」

「ルネリア“魔王ルサルカ”出馬」

「エルデネ“魔王イラ”出馬」


「以上七魔王の出馬宣言書を確認した。これより一万年に一度、魔界アルドラマの統治者を決める総選挙をここに開催する。投票日まで、各魔王は魔界公職選挙法を遵守し、国民に真の魔王たる姿をみせよ」


各国に中継された開催宣言。

投票日に向けて選挙戦の火ぶたが切られた。



一方・・・

MBC深夜人気番組『ミーナ&ナーミの天下取りマス』では、別の『火蓋』が切られていた。

昼すぎにデスクに呼び出されたミーナ&ナーミ・・・。


「はぁ!?番組のスポンサーがおりた!?なんでよ?!」

「いや、いきなり怒鳴るなよ。ミーナ〜お前がこの前の放送でリロイ様推しって言っただろ?」

「・・・言ったかもしれないのな?」

「ミーナ言ってたよ。でもそれとなんの関係があるのよ?」

「いや、スポンサーってさプライム様のとこの会社なわけよ・・・。察してよ〜。あっそうだ!エルデネに魔王イラの取材行ってきてよ!感謝祭もあるしさ!ははっはっっは・・・。ごめん!」


デスクの横にあった、魔王プライムがCMキャラクターを務めるドリンクの看板におもいっきりケリをいれるミーナ&ナーミ!


取材カーに機材を積み込むアシスタントディレクター兼ドライバー兼メイク兼マイクマン兼ライトマン兼カメラマン兼・・・雑用の獣耳のミケくん。


「いや〜光栄ですミーナ&ナーミさんと一緒に取材できるなんて」

「ミケくん、あんた何年目?」

「え?先月入ったばかりです」

「もう何も聞くまい。ミーナ&ナーミは終わったのだ・・・」

「ナーミ!勝手に終わらせないのな〜」

「くっそー!絶対でっかいネタ取ってきてやる!!」

「いいっすね!でっかいネタってなんすか・・・?」

「うるさい!!いくわよ!」


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