第10話、魔族

 3体のレベルを確認した所で、次の魔物の軍勢を探しに飛び立った。

 更に20キロくらい進むと、結構強そうな魔物が3体ほど、王国に向かっているのが見えた。


「ドラドラ。あの魔物の近くに降りるぞ。」


「ギャオオオォ。」


 ドラドラに下降して貰い、すぐにプラチナとレッドを召喚する。

 目の前に来てから気づいたが、魔物が3体だけじゃなく、その後ろから1人の男が歩いてきた。


「魔族の集落から降りて来たら、こんな所にも人間が居るとはな。魔王様の復活記念に王国を潰しにきたんだが、その前に楽しい余興を始めようじゃないか!」


 背中から翼が生えていて、ツノが2本付いている男は魔族と名乗った。


(これが2000年前に人類を恐怖に陥れた魔族か。)


 俺は最大限の警戒をしつつ、相手の魔物に攻撃を仕掛ける。


 【スキル1:スカイクロー】


 天竜は鉤爪にドリルのような風を纏わせて、左側にいる蛇のような魔物に爪を突きつける。

 だが、その魔物は天竜の攻撃をスルリと交わして、何事も無かったかのように佇んでいた。


「くっくっく。人間風情がどう足掻いても魔族の魔力には敵うはずないのだよ。俺の契約している魔物のランクはAが3体だ。絶望に打ち震えるがいい!」


 魔族が魔物のランクを言うと、ランクは同等くらいだった。

 油断をしてもらう為に絶望感を出しておく。


「ひぃ! 誰か助けて!」


 それを見た魔族が笑いながら3体の魔物に物理での攻撃を施してきた。


 プラチナ【スキル1:カウンター】


 油断していた魔族の魔物は、同時にカウンターをくらってフラつく。

 俺はすかさず天竜のスキルをタッチする。


 ドラドラ【スキル3:ストームブレス】


 ダメージを受けてフラついていた3体の魔物は、天竜のブレスで瀕死の状態になる。


(さすがAランクだな。一撃では消し炭に出来ないか。)


 更に追い討ちでレジェンドウルフのスキル、乱撃をタッチして相手の魔物を切り刻んでいく。


「は?」


 負けるはずが無いと思い込んでいた魔族は、一瞬で敗北した事に気づくまで、少し時間が掛かった。

 唖然としている魔族を捉えるように天竜に命令を出す。

 魔族は逃げようとしたが、Aランクの天竜から逃げる術はなく、鉤爪に捕らえられた。


「よし。当分敵は来ないだろうし、一旦王国に戻って魔族を引き渡すか。」


 天竜に跨って王国に向かって飛び立つ。

 魔族は何やら騒いでいたが、気にせずに王国に向かって飛んでいく。

 王国に到着すると魔族はまだ騒いでいた。


「こんなことしてタダで済むと思うなよ! 下っ端の俺を殺した所で、人間共の運命は決まってるからな!」


「うるさいなぁ。お前の処分は陛下が決めるから大人しく待ってろよ。」


 俺は天竜と天竜に捕らえられている魔族を、城の前で待機させて城の中に入って行く。

 城には初めて入ったが、豪華なカーペットとシャンデリアが付いていて、小さな村で育った俺には落ち着かない外装をしている。

 1番奥の扉を開けると王様が座っていて、近くには息子のガストンが控えていた。

 俺は地面に片足を着けて、頭を下げながら口を開く。


「陛下。奇襲部隊のエレンです。次に来る魔物の討伐は完了しました。」


 周りから歓喜の声が飛び交う。


「それで……。魔物の中に魔族が紛れ込んでいたので、捉えて来たのですがどうしましょうか?」


 魔族の話を出すと、王様の顔が険しくなる。


「……魔族に質問をしたい。ここに連れてまいれ。」


「すみません。天竜に鷲掴みにして貰ってる状態なので、連れてくる事は出来ません。城の外に待機させているので、陛下も護衛と一緒に来ていただけませんか?」


 縄で縛ってるわけでもないので、王様を城の外まで来てもらうよう説明する。

 周りの兵士は危険だからと、王様が外に出る事に反対をしたが、王様は強引に黙らせる。


「ワシが自ら魔族とやらと話してみたいのじゃ。捉えられてる状態なら、ガストンと兵士達が周囲を見張ってれば危険はないじゃろ。」


 兵士達は納得して無さそうだったが、渋々折れて一緒に外に出る事にした。

 城の外に出ると、魔族がまだ騒いでいた。


「見せ物じゃないぞ人間共! 俺を殺すならさっさとやりやがれ!」


 王様達は魔族の異様さを目の当たりにする。

 黒い翼を背中に纏い、頭からは少し曲線の掛かったツノが2本生えている。

 目の色は赤黒くて、人間より魔物に近いと言う感想も聞こえて来た。


「陛下! やはり魔族は危険です! お下がりください!」


 兵士達が槍を持って前に王様の前に立つが、王様は手を上げて兵士達を下がらせる。


「魔族よ。何故人間をそこまで憎み、殺そうとするのじゃ?」


「クックック……。めでたい奴だな。別に憎んじゃいねーよ。人間共を殺してる時の感触や、悲鳴を聞くのが楽しくてしょうがねーだけさ。」


 魔族は人間を殺す事が快感なようだ。

 特に理由もなく2000年前は殺戮をしてたと言う事になる。

 王様は顔を硬らせて、次の質問をした。


「そ、そうか……。それにしても魔族は2000年前に滅んだはずじゃ。救世主によって絶滅した魔族が何故生きておるんじゃ?それに今更人間を滅ぼしに来る理由もわからん。」


「貴様ら人間に答えてやる義務もないが、どうせ貴様ら人間も死にゆく運命だから教えてやろう。」


 魔族は高らかに笑いながら語り始める。


「我ら魔族は1人の人間に滅ぼされた。だが貴様らの言う救世主も人の子だったのだよ。魔族の子供にまで手は出さなかったからな。そして魔族の子供達は人間が来ない所で、密かに戦力を増やして暮らしていた。そう、魔王様が復活する時まで!!」


 2000年前の真相が明らかになっていく。


「そんな我ら魔族の悲願が叶ったのだ。2000年の時を超えて魔王様の封印が解かれた! もう救世主の居ない貴様ら人間共に勝ち目はない!!」


 魔族が高らかに宣言する。

 魔王の復活を…。


「バカなっ! 魔王が復活したじゃと!?」


 王様の顔には焦燥が浮かび、それに伴って周りの人々にも恐怖が伝染していく。


「もうよい。兵士達よ! この者を殺せ。」


 魔族との和解は出来ないと判断した王様は、兵士達に殺せと命令する。

 人々に恐怖を植えつけた魔族は、笑いながら兵士達の槍に刺されて死んだのであった。

 


 魔族を処刑してから、冷や汗を浮かばせながら王様は城に戻っていく。

 俺も王様に報告する事があったので同行した。

 王様が王座に座ると、俺は改めて頭を下げて報告する。

 王様は冷や汗をかいていて、顔には余裕がなさそうだった。

 でもこちらも時間はあまり無いので、王様の息が整う前に口を開く。


「陛下。先程の魔族の件でお話があります。魔族を捉える前に戦闘をしたのですが、先程の下級魔族でさえAランクの魔物と契約していました。」


「なんとだと。魔族とはそこまで強いのか……。」


 俺が捉えた時の事を話すと、周囲がザワザワと騒ぎ始めた。


「そのことで1つ言いたい事があります。俺が奇襲部隊として軍勢を殲滅している時に、王国に魔族が来たら倒せる者が居るのでしょうか?」


 俺の一言でガストンが席を立つ。


「愚弄するな! 俺とランカが王国に居れば、Aランク程度どうとでもなるわ!!」


 序列1位のガストンと序列3位のランカが居ればどうにかなると言っている。

 俺はランキング1位と3位の実力を知らないので、少し挑発してみる。


「お二人はそこまで強いんですか? 流石ランキング1位と3位ですね〜。でも魔族を倒した俺より強いんですか〜?」


 ガストンの顔はみるみる赤くなっていき、実力の違いを見せてやると言ってくる。


「じゃあ当分魔物の軍勢は来ないと思うんで、今から1時間後にトーナメントの舞台で待ってますね。」


 俺は城から出てすぐに天竜に乗り、誰もいない森まで飛んでいく。


「さてと。Aランクを倒した事だし、プラチナは進化するかな?」


『プラチナ。リバース。』


 ステータスを見るとプラチナのレベルは75まで上がっていた。


(よしよし。進化出来るな。)


 プラチナが進化出来る事を確認して、俺は進化先を確認するのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る