第9話、災厄級魔物
ハルトと親睦を深めた数時間後。
外壁から凄まじい音が聞こえて、ハルトと共に外に出る。
「第二派が来やがったか。エレン行くで!」
「ハルトさん。ドラドラの背中に乗って移動するから俺の腕に捕まって!」
『ドラドラ。リリース。』
天竜を召喚して背中に跨る。
俺は手を伸ばしてハルトの腕を掴み、ハルトを天竜の背に乗せて外壁の外へと飛び出した。
外壁の外は地獄絵図のようになっていて、数千はいると思われる魔物の軍勢。
それと相対しているテイマーの軍勢が互いに殺し合いをしていた。
テイマーの方が数は少ないが、魔物の質はテイマーの方が上みたいで何とか奮闘している感じだ。
「ハルトさん! 劣勢を一気に覆すよ!」
「ワイ達の出番やな!」
戦闘が起こってる手前で降りて、ハルトと俺は魔物を召喚する。
『『リバース!』』
ハルトと合わせて計6体の魔物が召喚される。
「ハルトさんは左側に! 俺は右側の敵を殲滅してくる!」
「任しとき!」
俺とハルトは左右に分かれて走り出す。
右側の敵を一気に殲滅しようと思ったが、周りに居るテイマーが邪魔で天竜のブレスが使えない。
「皆さんブレスを使いたいので道を開けてください!!」
俺は大きな声で呼びかけるが、戦闘中の人達がこちらに気づく事はなかった。
(仕方ない。レッドで敵の数を少しずつ減らして行くか。)
レジェンドウルフに跨って戦いの隙間を針を通すかのように抜いていく。
戦いの中央付近に近づくと戦いは更に激しさを増す。
(うーん。こんだけ密集していると攻撃出来ないなぁ……。ちょっとスキルを確認してみるか。)
フェンリルのスキルを確認すると、威嚇と言うスキルに目が止まる。
ダメ元で使ってみようと思いスキルをタッチする。
【スキル1:威嚇】
レジェンドウルフは唸り声を上げて、全員噛み殺すとばかりに目をギラつかせて周囲を睨む。
その睨みに怯えた魔物達は我先にと逃走を始めた。
威嚇はテイマー達の魔物にまで効いたみたいで、俺の周囲100メートルくらいは誰も居ない空間が生まれる。
(スキルの威嚇……。思った以上に優秀だったわ。)
威嚇の需要性を理解してからは、威嚇を使用してドンドンと魔物を森に追い返していく。
1000体以上いた魔物の軍勢はほぼ撤退したようで、残りは1体だけになった。
「あの魔物が災厄級かな?」
「そのようだな。」
独り言を返されたことに驚いて、後ろを振り返る。
そこには序列1位のガストンが立っていた。
「ガストンさん!?」
「少年よ。今回の劣勢をひっくり返した立役者は君だな?あの魔物を倒す権利は君にある……が、自信がないのなら俺が君の代わりに倒そう。」
ガストンの傲慢な態度に苦手意識を覚える。
いつもなら身を引いていたのだが、敵がどれくらい強いか知りたいので断る事にした。
「あれくらいなら俺でも倒せるので、序列1位の方が出るほどじゃありませんよ。」
俺は笑顔でガストンの申し出を断るついでにフェンリルのスキルを押した。
【スキル3:乱撃】
ガストンの申し出を断る頃には災厄級魔物はキマイラの時と同様に地に沈んでいた。
ガストンは少し驚いた顔をして、序列3位の他にもマトモな奴が居たのかと言い残して王国に帰って行く。
第二派を退けてハルトと合流すると、ハルトから提案をされる。
「ここに留まるんは得策やないと思う。ワイの魔物くらいなら丁度良いんやけど、エレンの場合は攻撃範囲が広すぎて、味方が居ると邪魔にしかならへんやろ?」
「そうなんだよね。さっき天竜のブレスを使いたかったんだけど、味方が多すぎて使えなかったし。」
「せやろ。せやろ。だからワイが国王と直に話しをつけたる。それまでエレンは宿屋で待ってるんやで。」
ハルトは王国の方に駆け出して行く。
俺はハルトに言われた通りに宿屋で待機する事にした。
2時間くらい経ち、日が沈んできた頃にハルトが宿屋にやってきた。
「エレン! 王国の守りはガストンとランカに任せて、ワイ等は奇襲部隊として迫りくる魔物の軍勢を叩きのめす許可をもろたで!」
王様と何の話をしに行ったのかと思えば、2人で攻め込む許可貰いに行っていたようだ。
「その許可は有り難けど、ハルトさんにはここに残って欲しいかな……?」
苦笑いをしながら頬を人差し指で掻きながら言う。
するとハルトは絶対に足手纏いにならないと、力強い眼差しで言ってきた。
「はぁ〜……。この事はあんまり話したくなかったんだけど、言わないとハルトは付いてきそうしなぁ。」
「何のことかわからんけど、口は硬いから任しとき!」
「そう言われると信用出来ないけど……。でもハルトは害になりそうな事は言わなそうだから話すよ。」
俺は今まで隠していた進化スキルの事を話す。
聞いた時は驚いていたが、ハルトは全て信じてくれた。
「アッハッハ! 納得いったわ! レジェンドウルフなんて進化でもさせへんと、契約出来ると思わへんしな。」
「ホントに内緒にしてよ!?
それでさ。まだ進化も残ってるから、俺は攻めてきても死なないと思うんだけど……。」
「言いたい事はわかった。それでもエレンの相方として連れてってくれへんか?」
ハルトは俺の目を見て真剣に懇願してきた。
俺は顔を横に振ってハルトに言う。
「ハルトはマナ以外で初めて出来た相棒なんだよね。それを死地に連れて行くなんて事は出来ないよ。王様の許可があっても俺は許可しないから。」
お互いに意地をぶつけ合うが、今回は折れてはいけないと強く自分に言い聞かせ、ハルトの頼みを何とか断った。
そしてハルトに留守を任せて、俺は奇襲部隊として天竜に跨って敵地に1人で飛び込む。
王国から10キロくらい離れた位置に魔物の軍勢を発見した。
俺は空中からスキルをタッチする。
【スキル3:ストームブレス】
魔物の軍勢にストームブレスを広範囲で当てていく。
ブレスが通った後には魔物の姿はなく、数千体くらい居た魔物は半分くらい消し炭みとなっていた。
ブレスを吐いた敵が居ない位置に降りて、他の2匹を召喚する。
『レッド、プラチナ。リリース』
「プラチナは俺の前に立って、レッドとドラドラで敵を殲滅するぞ!」
「「ガウ! ゴオオォ! ギャオオォ!」」
3匹の声が返ってきてそれぞれの位置に立つ。
プラチナ【スキル2:リフレクション】
レッド【スキル3:乱撃】
ドラドラ【スキル3:ストームブレス】
俺が3匹のスキルを押すと左側はレッドが行き、右側をドラドラ。
プラチナは俺の盾役として機能する。
凄まじい音と共に、左右全ての魔物が塵になったり切り刻まれたりしていた。
中央に残った魔物はあまりの出来事に、我武者羅にプラチナを攻撃したり逃走を始めたりしている。
プラチナに攻撃してきた魔法攻撃はリフレクションによって反射されて死んでいく。
物理攻撃をしてくる魔物にはリフレクションの効果は無さそうだった。
「ドラドラ! レッド! 逃走した敵を逃すな!」
俺の命令で2匹は逃走を始めた魔物を殲滅して行く。
プラチナ【スキル1:カウンター】
スキルを変えると先程まで物理攻撃をしてきた敵に、プラチナは攻撃を合わせて殴り返す。
カウンターは物理系に使えるスキルらしい。
ドラドラとレッドが戻ってきて、第3派の魔物の大群を殲滅する事に成功したのであった。
(これだけ倒したんだ。レベルも大分上がってるかな?)
俺は3匹のレベルが気になりステータスを見る事にした。
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【現在のレベル】
レッド89/140
プラチナ71/75
ドラドラ75/100
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