第35話 準備が始まる

私たちは、普段通り話ながら廊下を歩いていた。ある話題に変わるまでは…


「アオイさんは元の場所に帰りたいとは思わないんですか?」

「戻りたいとは思うんですが…あんまりいい思い出はないので何とも言えないですね」

「もし、戻る方法があったとしても?」

「そうですね…」


正直、私は帰れるとは思ってない。だからこんなにも知識を頭に叩き込んでいるのだった。答えを曖昧にしたまんま部屋に着いた。送ってもらったお礼にお茶していきませんかと声を掛けた。


「いいんですか?お言葉に甘えて」


自分で部屋の中に誘ったが机の上はぐちゃぐちゃだった。ウィルさんに借りたままの魔法関連の本、図書館で借りた経営関連の本、その内容を書き写した紙たちが机の上を占領していた。


「あ、ごめんなさい。今すぐ片づけます」


慌てて机の上を整理する。色んなものが広がったままで恥ずかしい…


「経営…こっちは魔法…勉強熱心なんですね」

「いや、そんなことは…」

「あるんですよ」


その言葉を聞かなかったフリをして素早く片づけをした。終わったころ、丁度準備が出来たらしくお茶を始めた。この国の第二王子とお茶してると思うとちょっと驚きだけど…そんなことを気にしてたらキリがない。


「お待たせしました」


目の前にいい匂いが広がった。レーナさんが淹れてくれる紅茶は本当に美味しい。ルイ様と世間話を少しして帰っていった。私は、さっき見たいに机一杯に本や紙を広げ勉強を始めた。


「どうしても分かんないところは誰かに聞くとして…やっぱり経営難しいな」


日本にいた頃、少し経営については勉強した。でも、それは経営についてだ。エルメルトではない。だから勉強をし直さなきゃいけないんだけど大変なんだよ…


「ツキノ様、また勉強するんですか?」

「はい。頭に入れなきゃいけないので」

「今日はお休みになられたらどうですか?」

「でも…私はこれぐらいしないといけないんですよ。普通じゃないから」

「ツキノ様に無理はしてほしくないですが…分かりました。本当に無理だけはしないでくださいね」


こう見えても、私何日か寝なくても大丈夫なんですよ!とは言えなかった。日本では心身ともにボロボロだったからな~こんなのまだまだなんだよね。軽く腕伸ばしをし机へと向かった。


「これが、ここに繋がってくるんだ…そこからこの基礎が使われて…」

「本当にツキノ様の理解力は凄いですね」

「そんなことないですよ。分かりやすいから頭に入ってくるんです」

「それだけではないと思いますけどね」


そう勉強をし続けた日々が何日か過ぎた頃。星宮さんについての情報が入ったらしい私にも聞く権利はあるだろうからと教えてくれた。今、時間が空いているらしいからすぐに向かった。


「毎回、呼んでごめんなさいね」

「いえいえ、私の事ですし」

「ちゃんと閉めてあるかしら」


部屋の中にいるものにレティ様が聞いた。それは緊張が走るほどの声だった。


「アオイ、はっきり言うけれど大丈夫かしら?」

「はい。教えてください」

「まだ聖女様だと言う確信的なものはないわ。けれど、また狙われると言うのは断言できるわ。」

「そうですか…」

「そこで提案があるの。そろそろ経営の知識は入ったんじゃないかしら」

「自信はないですけど…とりあえずは」

「実は、もう場所は決めてあるの王城の近くよ。グレンたち・侍女たちはこれからもアオイについてもらうわ。後、こっちからも数名護衛を付けるわ。また狙われると分かってる今この人数じゃ不安なの許して頂戴ね。それと王族御用達って広めとくわ」


お城に近いのは安心だけど…王族御用達はちょっと不味いんじゃないかなぁ~


「王族御用達はなくてもいいと思うんですけど」

「これから髪はアオイに切ってもらうから事実よ」


そういう問題じゃなくてですね…もう何も言わないとこう。


「私に護衛増やしていいんですか?警備とか」

「増やさなくてもいいけど万が一があるし、グレンがいれば大丈夫だとは思うけど。グレンは元々ルイの護衛だったんだから」


ん?ルイ様の元護衛?それって強いってことだよね。王族を守るのって重要な仕事だよね!だからレティ様もルイ様もグレンさんと仲良かったんだ…なるほど。なんでそんな凄い人が私の護衛なの?


「ツキノ様、思う所があると思いますがここは一旦落ち着いてください」

「ですね。」


深呼吸をして落ち着く。まだ衝撃はあるがさっきよりマシになった。


「必要なものがあったら気軽に言ってちょうだい」


そんなところで今日は解散した。

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