第21話 私の味方
遠い部屋までの廊下をひたすら歩く。何か声が聞こえるが構わず戻るのを一心に…だけど誰かに急に肩を叩かれた。止まって振り返るとルードさんだった。そういえば、髪切る約束守れてない。
「ツキノ様、そんな急いでどうかしましたか?」
「あっ、ルードさんお久しぶりです。急いでなかったんですけど…急いで見えましたか?」
嘘だ、急いでいた。早くあの場から離れたいがために部屋に戻れるようにと…
「はい、なにか焦っているみたいな風に見えたので何かあったのかと」
「何もないですよ?心配させてすみません」
「何もないって嘘ですよね?顔の傷と口が切れて血が出てる。手当てをしましょう」
そう言い当てられ、私の部屋まで一緒についてきてくれ手当てをしてくれた。
「何があったんですか?」
「本当に何もないですよ。すみません少し一人にしてもらえませんか?」
「分かりました。」
無理を言って部屋に一人にしてもらった。その間は部屋の外でクラウスさんとルードさんが話している声が聞こえた。また、逃げてしまった。グレンさんを盾にして逃げてしまった。なんて最低なんだろう。前からの癖でベットがある角に座り、バレないように声を押し殺して泣いた。何分経ったかの時、扉が開く音がした。こんな時に誰が入ってきたのだろう。そう思いながら顔を上げる。
「ツキノ様…!さっきの怪我は?!」
きっと走ってきたのだろう、息を切らして入ってきたのはグレンさんだった。あぁ…こんなに心配してくれるのになんであんなことをしてしまったのだろう。
「大丈夫です、ルードさんに会って手当てしてもらいました。さっきはすみませんでした。あんなこと言って…」
「謝らないでください。顔見せてもらえますか?」
「ちょっと、今酷い顔なので見せられません。」
「大丈夫ですよ。ツキノ様のどんな顔でも好きですから」
そんな言葉に油断した。いつの間にか距離は詰められていて、殴られた場所を見られていた。
「傷が残らないといいですが…」
「大丈夫ですよ、ちょっと怪我しただけですから。」
笑って言って誤魔化した。今にもまた泣きそうな感情を無くしてそう言った。でもグレンさんは鋭かった。隠しきれない少しの部分を見つけてしまう。
「ちょっとじゃないですよ、もっと自分を大切にしてください。私もツキノ様の事を守れなかった。申し訳ございません」
グレンさんから聞いた言葉は優しかった、そのせいでまた涙が込み上げてきた。
「ダメなんですよ…私は、自分を大切になんか、しちゃ…」
酷い姿をまた見せてしまった、そう思うともっと溢れてきた。そんな私の頭を撫でられた。
「なんで、グレンさんは、皆さんは優しくしてくれるんですか…?」
「そんなの出会った時から私たちに優しくしてくれたからですよ。」
そう言ったタイミングでみんなが入ってきた。私は、この世界でいい人に囲まれてるなと改めて実感した。レーナさんとクリスタさんは私に抱き締めてくれた。
「大丈夫ですか?!私たちは何が何でもツキノ様の味方ですからね。どこまでもついていきます!」
「それは心強いです、ありがとうございます。」
「ルードも味方ですよ。な、ルード」
「あぁ、私もツキノ様の味方をいたします。どうやら、聖女様には裏がありそうですしね…」
最後の方よく聞こえなかったけど、魔導師団団長さんが味方なら魔法が使えない私にとっては大きい存在だ。
「ルードさんはお時間大丈夫ですか?私のせいでお仕事とか…」
「大丈夫ですよ。今日と明日は休みなので。」
「なら、明日髪切りましょうか?約束守れてなかったので…」
「よろしいですか?なら、お昼頃こちらに来てもよろしいでしょうか?」
「はい!お待ちしてます。」
約束やっと守れる、ずいぶん待たせてしまった。私の侍女をしてくれてる優秀だからか、濡らしたタオルを持ってきてくれて目を冷やしましょうと声を掛けてくれた。
「それにしてもクラウスさんから話を聞きましたが、正直私は許せないですね。」
「あぁ、でも多分ルイス様が王妃様に言ってくれたと思いますよ。だいぶ、ルイス様も怒っていらっしゃいましたから」
「それは、大変ですね。めったにルイス様は怒らないのに…」
「ツキノ様、多分ですね。この件で王妃様に呼ばれるかもしれません」
「分かりました、皆さんを巻き込んでしまって申し訳ないです。」
「いいのですよ。ツキノ様を殴った奴、前々から色々とやっていたものですからいい機会です。」
王族まで巻き込んでしまった、何かお礼しなきゃいけないよね…ルイス様は私の事庇ってくださったし考えたら凄く申し訳ないことをした思う。
「そこまで、気にしなくても大丈夫ですよ。この件は、少しもツキノ様のせいではないのですから」
「そうですよ!王妃様も味方です!」
私は、本当に幸せ者だ。こんなに強くて優しい人に囲まれてるんだから…
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