第19話 会わせたい人とは
あぁ、いつも来て慣れてるはずなのに今日は特別緊張する。よし、覚悟を決めて。
「ツキノ様がお見えになりました。」
「入れて頂戴。」
私はドキドキしながらも踏み出した。入ったそこにはレティ様を含め四人いた。きっと会わせたい人たちだろう。一人はどこかで見たことがあるような気がする…どこでだろう?
「急に手紙ごめんなさい、今日は来てくれてありがとう。」
「いえいえ、初めてのお手紙がレティ様でとても嬉しかったです。ありがとうございます。」
「そう言ってもらえると私も嬉しいわ。そこにお座りなさい。」
「は、はい。失礼します。それで会わせたい人とは…」
「私の息子、この国の王子に会わせたかったの。」
王子と言われて思い出した。さっき見たことあるような気がしたのは、私が召喚されたときに居たからだった。正直会いたくなかったかも…きっと何かあってもレティ様とグレンさんがいるからきっと大丈夫と自分を安心させようとした。
「母上、なぜ。この者が母上の事を愛称で呼ぶのですか!」
「私がそう呼んで欲しいと言ったのよ。」
「ですが!この者は聖女召喚で召喚された、何もできない役立たずじゃないですか!」
「アル、お黙りなさい。ごめんなさいね。アオイ」
「いえいえ、言っていた通り何もできない役立たずなので居場所を与えてくださってるだけでありがたいんです。」
「本当に優しいわね。それより息子たちの紹介をしなきゃね」
流石、レティ様の息子さんたち…三人ともキラキラしてる美形だ。緊張しすぎて目が合わせれない…
「エルメルト第一王子、アルベルト。言っとくけどお前よりセナの方が何倍も役に立つし可愛いから、早く城から出てけよな。」
「エルメルト第二王子、ルイスです。初めまして母上からアオイさんがいい方だとは聞いています。お会いできて嬉しいです。」
「エルメルト第三王子、リーベルトです。兄が申し訳ございません。母上から色々聞いています。」
名前がカッコいい…第一王子は私の事が嫌いってことがよく伝わったかな、私も挨拶しなきゃ。
「レティ様と仲良くさせて頂いてます。アオイ・ツキノです。私の事はアオイと呼んでもらって構わないです。お会い出来て嬉しいです。」
大丈夫だよね、!心配過ぎて心臓がドクドクいってる。それにしても何故、レティ様は私に会わせたかったのだろう。普通は星宮さん、聖女様の方に会わせたいんだと思うんだけど…その時後ろで待機していたグレンさんが近づいてこういった。
「ツキノ様、最近裏庭でのお茶会で視線を感じると仰っていましたがあれはたぶん。ルイス様です」
「バレてたか、流石グレンだ。でもあの距離なら分かんないと思ったんだけどな。アオイさんの事は遠くから見ていました。不愉快に感じてしまっていたらすみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。王家の方がそう謝らないでください。」
「あと、私の事は気軽にルイと呼んでくださって構いません」
ルイって、愛称なのではレティ様でも頑張ってるんだけど…王子まで愛称呼びは不味いんじゃないかな。大丈夫かな…?
「私が愛称は不味いのでは…?」
「私が呼んで欲しいんです」
「わかりました。ルイ様」
「それにしても、レティ様は何故会わせたかったのでしょうか?」
「あぁ、それわね…アル以外の二人が会いたいって」
アルとはきっと第一王子の愛称だろう。私が名前を呼ぶことはないだろうから気にしなくてもいいか。
「私は嬉しいですが良かったのですか?今お城では、私はあまりいいように思われていないのに…」
「アオイは、気付いてないかもしれないけどお城の一部ではとても好印象なのよ。例えば、侍女とか図書館の司書とか私の息子も。」
「そうでしょうか?私は何もできていないのに…」
「そんなことないわ、アオイの優しさは十分伝わってくるわよ。」
そんな今まであまり言われなかった褒め言葉に少し嬉しかった。緊張して忘れてたけどお菓子渡さなきゃ…今言っても大丈夫かな?
「レティ様、お菓子を作ってきたのですが。食べて頂けますか?」
「まぁ、いいの?美味しいって聞いたから食べてみたかったの。」
「なら良かったです。今日は、マドレーヌと言う焼き菓子を作ってきました。」
「とても美味しそうだわ。その前に毒味してもらわなきゃ食べれないのごめんなさいね。」
「そんな、食べてもらえるだけで嬉しいので…」
レティ様は、私が渡した袋からマドレーヌを一つ出しそばに来た、毒味係に渡した。私は心配そうに毒味係さんの方を見る。マドレーヌを一口食べるととても美味しそうにしてくれた。それを見た、レティ様は
「あなたが美味しそうにすると早く食べたいじゃない。それで大丈夫だったのかしら?」
「は、はい。問題ありません!」
「いただくわね。美味しい!アルたちにもいいかしら?」
「はい、どうぞ!食べてください。実はですね、そのお菓子には意味があって…」
「どんな意味があるのかしら…?」
「私の国では、特別な人と言う意味があって…」
「あら、そんな風に思ってくれてたの?嬉しいわ。ありがとう」
その後…第一王子はすぐ行ってしまい。レティ様とルイ様とリベル様三人で軽くお茶をした。ちなみにあれからリーベルト様からも愛称で呼んで欲しいと言われ、リベル様と呼んでいる。
「もう、暗いわね。引き留めてしまってごめんなさいね。次のお茶会の時を楽しみにしてるわ」
「私も楽しみです!今日はありがとうございました。おやすみなさい」
少し寂しく感じるがいつもより暗い道を歩き、自分の部屋へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます