第13話 お礼の為に
あれから少し歩いて、着いた建物は立派な倉庫だった。ここで材料を選んでキッチンを借りに行く。でも急に借りていいのか?と聞いたら「大丈夫です。向こうがいつでも来ていいと仰ってくれているので」と言われた。それならいいんだけど…レーナさんに促され、中に入ると色々なものが置いてあった。野菜から果物、粉類だけでも沢山種類がある。流石、お城の倉庫と圧倒される。そこから出来るだけ日本にあったものと近いものを選んでいく、選ぶのはそう時間が掛からなかった。粉類などの重いものはグレンさんたちの騎士様に頼んである程度持てる者は私と侍女さんグループで持った。
「グレンさんたち、重いもの持たせてしまって申し訳ないです。」
「いえいえ、鍛錬にもなるので全然大丈夫ですよ!」
そう言って、騎士様たちは軽々持っている。少し多めにクッキー渡そう。
「もうすぐ調理場に着きます。」
あ、オーブンあるかな。忘れてたあれなきゃ作れないし、あることを祈ろう。キッチンは倉庫からそう遠くなかった。運ぶの大変だし新鮮度が落ちてしまうかららしい。いつの間にか着いていたようだ、本当に早かった。レーナさんが先に中に入り、話をしてくると
「ツキノ様、どうぞお入りください。」
許可が下りたみたいなので入ると驚くほど歓迎されていた。
「ようこそ、いらっしゃいました。私はこの調理場を仕切っている料理長のサウルと申します。」
最初に声を掛けてきたのは料理長さんだった。その他の周りの人も私が来たことを喜んでいた。
「急に来てしまってすみません」
「いえいえ、私が歓迎するとお伝えしたので来てもらえて嬉しいです。」
突然押し掛けたって言うのに、なんて優しい人たちなのだろう。そう思うと心が温かくなる、さっそく机の上に材料を並べてるうちに料理長さんたちに用具を用意してもらった。ちなみにさっき心配していたオーブンはあった。作り方、少しあやふやだけどまぁ大丈夫だよね。まず、材料類を入れて混ぜるその間にオーブンを温めておいて、今回ここには型がないから全て丸にしようかな。生地を伸ばして型抜きをする、今日は量が多いから他の人たちにも手伝ってもらった。 オーブンに入れて焼いている間に話をする。
「キッチンを使わせてくださって本当にありがとうございます。」
「私たちこそ、聞いていた通りの方で良かったです。」
毎回思うんだけど、聞いていた通りってどういう事?よく分からないんだけど、レーナさんたちが私の事を話してるってこと?まぁ悪い印象じゃなかったら良いけど…
「聞いていた通りとは?」
「レーナたちから今仕えてる方が優しくていい人だと話してくれたのですよ。だから私も会ってみたいと思っていつでも来ていいと言ったのです。」
レーナさんがそんなこと言ってくれてたなんて、迷惑になってなくてよかった。
「そう言われるほど優しくないですがありがとうございます。」
と話している間に焼けたみたいだ。取り出してみると綺麗な焼き色がついて美味しそうだ。これを司書さんとクレアさん用とグレンさんたち用あとキッチンを使わせてくれたお礼用と分ける。司書さんたちのはラッピングをした。
「これは、キッチンを使わせてくれた。料理長さんたちが良かったら食べてください。グレンさんたちはこっちのをどうぞ。」
「ありがとうございます!せっかくだしお茶を入れて食べましょうか」
お茶を淹れに行ってくれた。味見にひとつ私が先に食べる。うん!材料は間違ってなかったみたい。これを食べ終わったら渡しに行こう。淹れてきてくれたお茶を飲みながらクッキーを食べ、まったりお話をした。
「そろそろ、図書館に向かいましょうか?」
渡したいとは、言ってあったので暗くなる前にと声を掛けてくれた。私は、料理長さんたちにお礼を言って図書館へと向かった。
◇◆◇
ここ何日から歩いてるからなのか、これだけ歩いても足が痛くない。そういう言ってる間にもう図書館だ、今日いるかな?でも司書さんだからいると思うんだけど…
「ツキノ様、またいらっしゃってくださりありがとうございます。今日も何かお探しの本でも?」
「いいえ、今日はこの前のお礼でお菓子を作ってきたので渡したいなと思って、ウィルさんはお菓子とか甘いものは大丈夫でしょうか?あ、クレアさんの分もあるのですが…」
司書さんは驚いていましたが、すぐクレアさんを呼んでくれました。
「クレア、ちょっと来なさい」
そう呼ぶと、クレアさんはこっちに来て私たちを見てお辞儀をした。私も同じようにお辞儀をする。
「ツキノ様が、私とクレアにこの前のお礼でお菓子を貰ったよ。」
「あ、ありがとうございます…」
クレアさんめっちゃ可愛い、餌付けしたくなるけどダメダメそんなこと。
「今日は、これで失礼しますね。渡したかっただけなので…」
それだけ告げ、図書館を出る。今日は、もうやりたいこと終わったかな。聖女様、星宮さんに会わないように真っすぐ部屋に戻ろう。
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