第12話 心の誓い (グレン視点)

私は、ある方の護衛になった。聖女召喚の儀の際、今までにない召喚されたのが一人ではなく二人だったのだ。一人は王様に連れられ部屋を出ていったあと、私は上から残っている方の護衛に任命された。この方にはお城から遠く離れた部屋が与えられ、私はこの方の最初の護衛となった。この方に与えられた部屋は埃っぽい部屋だった。なのにこの方は、こっちを向き微笑みながらこう言ったのだ。


「ここまで案内してくださり、ありがとうございました」


予想外だった、こんな対応をされたのにも関わらず私にお礼を言った。あまりにも私には衝撃でつい固まってしまった。その間に沈黙が続いていた時、私は自分が名乗ってないことを思い出し慌てて名乗る。


「申し遅れました、あなた様の専属護衛になりました。グレン・ダウナーです。どうか気軽にグレンとお呼びください」


そのあと、同じように返してくれた。


「えっと、私は月野葵です。葵が名前で月野が家名です」


この方は、アオイ・ツキノ様というようだ。私はすぐツキノ様に謝罪をした。


「ツキノ様には申し訳ないです。急いでいたからと言って、このような対応になり…」


ツキノ様は、少し悩んで私にあることを聞いてきた。それは聖女についてだった。ツキノ様には私が知っていて言える範囲のことを言って説明をした後、私は髪を触った。最近切っていないから邪魔だなと思っていたら、ツキノ様が何か言っていたので声を掛ける。


「ツキノ様どうかいたしましたか?」

「グレンさん、私の召喚された時持っていた。持ち物ってありますかね?」


と聞かれた時、私はちょうど持ってきていたのでその事をツキノ様に伝えた。


「ツキノ様の持ち物でしたら私が持ってきておりますよ」


そう言って、持ってきた大きな鞄をツキノ様の近くまで持って行くと…急にツキノ様が嬉しそうに私に声を掛けてきた。


「グレンさんは髪邪魔じゃないですか?顔までかかってるし」


とさっき思っていたことを言われた。


「あー切りたいのですが、一回自分で切った時凄い悲惨なことになりましてそれから切るのやめたんです」


そう一回自分で切った時、手元が狂って切りすぎて悲惨なことになったのだ。するとツキノ様は


「それなら、私が切りましょうか。元の世界では髪を切る仕事をしてたんですよ!」

「ツキノ様に切って頂くなんてそんなことできません!」


こんな酷い対応をしてるのにも関わらずそれに切ってもらうなんてと思い、慌てて大丈夫だと言ったが


「いいんですよ!ほら座ってください。カッコいい髪型しちゃいますよ~」


そう言われてしまい、椅子に座らされてしまった。でも準備しているツキノ様は楽しそうにそして嬉しそうにしていたからこれ以上は何も言えなかった。そのあと、見たことのない道具で私の髪をどんどん切っていくだんだん量が減っているからなのか視界が見やすくなっているなと思っていたら


「グレンさん、終わりました。どうでしょうか?」


ツキノ様から、鏡で自分の姿を見せてもらう。そこに映ったのは自分ではないだろうと思うぐらいのカッコいい人がいたのだ。つい、口に出してしまった。


「これが私ですか?!」

「はい、正真正銘グレンさんです。」


こんな腕は、なかなかいないと思った勢いでいくつかお願いをしてしまった。それから少し後、ベットの運び込みをしツキノ様には休んでもらった。



◇◆◇



私は、ツキノ様へ新しい護衛と侍女の紹介をするべく部屋に向かっていた。まだお休みになられているかと思っていたがどうやら起きているようだった。もしかしてあまり寝れなかったのではないかと不安になるが顔色は悪くなくて安心した。それが終わった後は、この国について調べたいからと図書館へお連れする。着いた後も、侍女に紙などを用意してもらい本をひたすら写していた。休憩の時、ツキノ様はあることを聞いてきた。私が魔法を使えるかどうかだった。私たちの話を聞いた後ツキノ様は、顔色が悪くなった。魔法について何か心配なのだろうか?何か、力になれることはないかと思った時に浮かんだのはルードだった。そのことをツキノ様に提案してみる。


「今度、私の知り合いに魔導師がいるのですが、ツキノ様がよければその知り合いに魔力があるか見てもらいませんか?魔法は、魔力さえあれば魔法は使えます、練習は必要ですが…」


それでもツキノ様は何かのせいで迷っているようだった。でもその何かはすぐに分かった。


「それをしても、グレンさんたちは…王様に何も言われないでしょうか…」


ツキノ様は、私たちの事が心配で言えなかったのだ。私は思ってしまった、何故この人が聖女様ではなかったのかと…ツキノ様は続けて言った。


「それで少しでも何か言われてしまう可能性があるのなら、私はそこまでして自分が魔法が使えるのか知りたいと思いません」


私は、こんな優しい人の護衛になれて良かった…そう思いながらレーナと顔を見合わせて微笑んで言った。


「ツキノ様は私たちを心配してくれているのですね、そのことなら大丈夫です」


そう後押しし見てもらうことにした。今日、ルードに聞かなければ。図書館をあとにして別の仕事に行っていた三人と合流し侍女のクリスタに髪のことを聞かれ、つい答えてしまったがツキノ様は平気そうだったのでほっとした。歩いている途中、ツキノ様からある声が聞こえた。


「早くひとりになっても生きれるほどの知識をつけなければ、きっともう日本には戻れないのだから…」


日本とは、ツキノ様がいた元の世界の名前だろう。この人は私たちに心配を掛けないよう、口に出さずに耐えてきたんだなと私まで苦しくなるようだった。そこで私は、美しい景色が広がっている裏庭へ寄り道をしないかと話した。見たいと言ったツキノ様が少しでも気分が晴れるようにと願いながら裏庭へと向かった。裏庭では、ツキノ様は泣いていたがすぐ笑顔をこちらに向けてくれた。部屋に戻った、ツキノ様は眠そうにしていたので少し休ませてから、髪を切っていた。ルードに聞いてきたら問題ないと言われたから、明日早めにここを出ようと侍女たちに話し、また一日が終わった。



◇◆◇



ルード、やらかしたな。聖女様がこっちに向かってくるなんて聞いてなかった。このまま鉢合わせしてしまうとツキノ様があいつらに何か言われてしまうかもしれない、ここを出ようとした時ルードは独り言のように言った。


「いえいえ、グレンから聞いた通りで安心しました。本当にツキノ様が聖女様なら良かったのに…」


とはっきり私には聞こえた。それは私も思ったと共感しているとツキノ様の準備が出来たみたいだ。早足で部屋へと戻るが間に合わなかったか。前から足音が聞こえる、私はツキノ様を庇うように前へ出て睨む。嵐のように過ぎ去ったあいつらは、ツキノ様に向かって傷つくような言葉を吐いていった。その時私は心の中で誓ったのだった。


―――――――絶対、私がこの人を守る…


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