第3話
里美は気が強い。
中高とテニス部で全国大会を出てるほどの選手だった姉は中高ととてつもない陽キャで済州島の学校では不良グループとつるんでいて喧嘩も一般人より強く、高い声にも関わらず言葉使いも雰囲気も全て含めて強い性格をしていた。
小学生の私は、優しそうで溶け込めやすい大人には冗談言ったり、いたずらをしたりしながら、子供らしく甘える事ができた。
恵美姉さんはその一人であった為、よく懐いていてうるさい位にお喋りだったが、里美姉さんは私が大の苦手な部類のタイプだった。
仲良くなりたいお姉ちゃんというよりは、嫌われたくない… 怒られたくない… という感情が芽生える相手だった。
そんなお姉ちゃんとの2年という長い生活を過ごすことになるとは緊張して緊張してたまらなかった。
里美姉さんは恵美姉さんと性格が正反対なだけあって、行動パターンも全く持って反対だった。
専門学校に通いながらすぐにサークルに入って友達も沢山でき、しょっちゅう遊びに出かけてた。母は恵美姉さんとの生活が当たり前だと感じてたせいか、二人はよく口喧嘩をしていた。
母「少しは遊んでばっかいないで美奈の面倒も見なさいよ。(韓国語)」
里美 「私別に子育てする為にこっち来たわけじゃないんだけど。第一、こんだけ遊んでいても成績は、毎回学年1-2位なんだし学費無駄にしてるわけじゃないんだからそこまで言われる筋合いないと思うんだけど。(韓国語)」
母「母さんはあなた達産んで遊んだことなんてないわ。仕事しろって言ってる訳じゃないし学費だって私があなた達を思って通わせているんだから、あなたの11歳も離れた妹なんだから私がいない間ちゃんと保護者の役手伝ってよ。恵美は遊びも行かず毎回美奈の事ちゃんと見てくれたわよ!お姉ちゃんをちょっとは見習って!(韓国語)」
里美「恵(メグ)は、自分の意見を言えない上に喧嘩してまでお母さんを説得したいと思わないから、しょうがなくやっていた訳であって私と一緒にしないで。私は自分がやりたいようにやるし、2年という短い留学生活私も折角なら楽しみたいの。第一全く面倒みないって言ってるわけでもないんだからお母さんは自分の意見押し付けすぎなんだよ。(韓国語)」
母「もういいわ。あんた本当強情だし自分勝手すぎ。勝手にしな。(韓国語)」
という感じで毎回のように喧嘩した。
母が苦労してるのは皆分かってる事実だ。
シングルマザーで3人娘育てるため仕事しかしてこなかったことも理解している。
女手一つでママとパパの両方の役割をこなそうと必死だったせいか、母は昔からよくヒステリックを起こしたり、頭でっかちで自分の意見を押し付けようとしたり、よく「私はあんた達の為にこんなに犠牲にしてるのになんであんたらは理解してくれないの。」と言った具合で子供の私たちに本来旦那がいるのなら、慰めてくれるだろうという繊細な感情まで私たちに求めてくる癖があった。
私は姉さん達とは離れて暮らしていた為、姉さんたちの思春期を経験したことが無く、とてもいい子に育ってたイメージがあったのだろう。
母はヒステリックを起こすたびに、「お母さんこんな辛いのにあんたは身勝手すぎる。どうしてそんな自己中なの。」
ひどい時は、「そんな風に育つんだったら私も死ぬから美奈も一緒に死ね。」など思春期なら誰でも一度は反抗期を経験するはずなのに、自分がシングルマザーだから育て方を間違えた自己嫌悪に落ちる事が度々あった。
その度、自分が間違った育て方をした以上人の迷惑になる子になるだろうと自分が責任持って我が子と一緒に死を選択するという言動を名に振りかまわず怒鳴り散らしていた。
私は、小さい頃から言うこと聞かないときは、母だけ怒られるのではなく母側の家族やお姉ちゃん達全員に責め立てられる事がほとんどだった。
母は人一倍お人好しで責任感ある分、その反動で自分をコントロール仕方を知らない人だ。
そのくせ体が昔から弱かった為、短気な性格ながら頭に血に上った日は倒れるのが日常だった。
そして毎回「あんたが言うこと聞かないから私はしんどいのに… だから倒れたの。
私が倒れて早く死んでほしいの?お姉ちゃん達に比べて美奈は、お母さんと一緒で幸せなのにお姉ちゃん達にも悪いと思わないわけ?」という罵声を浴びる事がほとんどだった。
心の中で、母の言う通り私は自己中で悪い子なんだから捨ててくれないかな?と小さい頃はふと思うときがあった。だけど私は言葉にしたことが無かった。
なぜなら、母はこのような言葉を聞いてまた失神するだろうという気持ちと私が言葉づかいで傷ついた分、言葉で傷つける事がどうしても出来なかった。
だから私は怒られる度、口を閉じるのが癖になった。その姿で余計母を怒らせた。
恵美姉さんならとりあえず泣いて謝って母が聞きたい答えを言ってただろう。
里美姉さんの場合は自分の意見を全部はっきり言ってお互い喧嘩したとしても、母はお姉さん達と離れていた時間に負い目を感じていた為、私ぐらいに暴走することはそう無かった。
私は頑固で、自分が悪いと思ったとき以外は絶対謝りたくない主義だ。だからこそ恵美姉さんのようにもできないし、里美姉さんのように強気で物事を言いながらぶつかってまたヒステリック起こして倒れるまで反抗する勇気も無い。
だから口を閉じるんだ。
私は、家族という絆が一番めんどくさくて、難しくて、離れたい存在になっていった。
* * *
里美姉さんは母と喧嘩しつつも、丁度いい具合に私の面倒と友達との交流を送っていた。
母は里美姉さんと大喧嘩を何度もした後、言葉で勝つことができず、結局半分放棄した状態でもあった。
それにどこかで母は里美姉さんが自分を傷つけるような言葉を言うことを耳にしたくない為、顔色を里美姉さんにはどうしても伺う様子が見えた。
母の一番の心の傷はお姉ちゃん2人を私のように自分が傍で面倒みることができなかった罪悪感がえげつなかったから…。
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