燃える赤
@dsmfoe9
第1話
沈む前の太陽は、異様に燃えていた。
それを見つけたのは、君と夕焼けを見に行った時。
燃える赤に、君はあっけらかんとなる。
「なあ、あれってどうなってんだ? 気のせいじゃないよな」
私は答えられない。君の瞳に、高揚と少しの不安が混じっていく。
2人で町を抜け出して、もう今日だけじゃ帰れないくらいの距離にいて。
意外にも、君を連れ出したのは私の方だ。
君が読書ばかりしていて、とても退屈そうに思えた。
ゴワゴワの頭を掻きむしって、君は私を見上げる。
「そんじゃ、赤く燃える太陽を見つけに行こう。俺ら2人でさ」
「うんっ!」
君の父さん母さんに見つからないよう、こそこそ準備を進めながら、私たち
は希望に胸を躍らせる。
今まで町の外になんて出た事なくて、本当にどうなっちゃうんだろうって、
そっか、君は私と同じ気持ちだったんだね。
横目に君を見ると、君は涙を流している。
「感動してるの?」
「そうだよ。本に書いてたこと、全部嘘じゃなかったんだって思うと。。。」
思わず君をだきしめる。
熱い君の涙が地面に落ちるのが、とてももったいなかった。
「君は、熱いね。あの太陽とおんなじだ」
「なんだよ、それっ」
抱きしめて、笑う。
太陽を見つめ笑う君と、もう見えない町の事を思う私は、
一つの燃える赤になった。
燃える赤 @dsmfoe9
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