ようこそまだ見ぬ異世界へ

セイ

ようこそ未知の世界へ

 未知とは不思議だ。

 何も分からないのは恐怖だ。

 何も知らないのは弱さだ。

 何も知ろうとしないのは愚かさだ。


 だが、未知とは、幸福であり、不幸であり、また希望でもあり、絶望でもある。

 多くの人々の欲望を刺激し、夢を見させ、深淵へと誘う。それが未知だ。

 そして、そんな未知がこの世界にはゴロゴロと転がっている。

 私はそれが知りたい。

 君はどうだ?

 

 さぁ、始めよう まだ見ぬ世界の物語を…


◆◇◆◇◆

 広い広い世界のどこか

 木々はざわめき

 生命がおののき

 大樹が見守るなか


 彼は目覚める


◇◆◇◆◇



 ここはどこだ?


 目が覚めた俺は、起き上がり辺りを見回してみる。

 そうすると、辺りは木が鬱蒼と茂る森だということが分かった。

 だが、そこはどこか神聖な雰囲気を纏っていて、居心地は悪くない……いや、そんなこと考えてる場合じゃないぞ!


 え、どこここ!!


 目が覚めたら、木々が生い茂る森でした。とか最近の海外ドッキリでもしないわ!!


 え、なに、ここどこ、わかんない!俺なんかこんなことされることした!?…あ、してたわ、バリバリしてたわ。


 …ふう、精神は少しだけ落ち着いてきた。あくまでも精神だけなので端から見たら、放心状態ですがなにか?という風貌なのだが、とりあえず冷静になって状況確認をしよう。

 こういうときはとりあえず状況確認をする。

 じっちゃんの教えだ。


 俺の回りには森が広がっている。

 見渡した感じ、あまり人の手が入っていないようだ。

 だが、俺の周りにだけは木々が開けていて、小さい花畑が咲き誇っている。

 そして、俺が寝ていたのは、花畑の中心にある、大樹の根元のようだ。

 地面に花が咲いてるため、寝心地は悪くない。


 …うん。もう一回言おうか。ここどこ?

 俺の近所にはこんなパワースポット的な場所はないし、それどころかこんな大きな森は田舎のじいちゃん家しかみたことない。


 ひとまずなぜ、なぜこのような事態になったのか考えを立ててみる。

 考えられる可能性はいくつかあるが、1つ目は此処が俺の知らない日本のどこか辺境の可能性。

 ぶっちゃけてしまうと、この可能性は結構ある。

 俺、結構派手にやっちゃったからな~色々。

 隔離とかされかねん。

 

 で、2つ目は同じような海外の可能性。まぁこれも1と同じ理由であり得なくはない、可能性は低いが。


 そして3つ目は…俺はふと空を見上げてみる。


 綺麗な青い空、真っ白な雲、色とりどりの七つの月、空を悠々と翔ぶ龍……うん、どこからどう見ても、いつもどおりだね。


 HAHAHAHAHA!

 

さて、現実逃避はこの辺にしておこう。まぁ3つ目の可能性は言わずもがな、ここが異世界である可能性だ。

 多分今まで挙げてきた可能性の中でこれが一番高いと思う。少なくとも俺の知ってる地球には色がそれぞれちがう7つの月があったり、空を龍が翔んでたりしない…と思う。龍はいるかもだが。

 他にも別の惑星説とか未来説とか挙げ出したらきりがないからこれくらいにしておく。


 …正直にいってもいいだろうか。ここが異世界だと仮定して、地球での俺が消えたのだとすれば、それはきっと最善の結果なのだろう。


 俺がいなければ、みんなが不幸にならなくてすむ。


 俺もまた大切なものを失わなくてすむ。


 みんなが俺のことを忘れてしまうのは寂しいが、それがきっと最高の結果だ。


 俺はあそこにいてはいけない人間なのだから。


 人を殺したのだから。

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