テイマーなのに獣人ばかりにモテすぎて困ってます!

しましまにゃんこ

第一章 リリアとロルフの秘密の関係!?

第1話 テイムしなけりゃ始まらない!

 

 ◇◇◇ 


「ふ、ふふふ、さぁ~、こっちにいらっしゃい。怖くない、怖くないわよ~……テイムっ!テイムっ!」


 リリアはこの春冒険者になったばかりのテイマーの女の子。テイマーとはテイムすることで魔物を従え、従魔となった魔物を使って共に戦う職業だ。従属する魔物の強さによって強さが決まるため、強いテイマーになるためには弱い魔物で経験を積み、少しずつ強力な従魔の数を増やしていく必要がある。魔物を従えるのは簡単なことではないが、もふもふが大好きだった彼女は迷わずテイマーの道を選んだ。が、しかし、リリアはいまだ一匹の従魔も従えることが出来ていない。何故ならば……。


「だーかーらー、魔物は瀕死の状態にしてからじゃねーとテイムできねーっていってんだろ?」


 後ろから呆れたような声が聞こえると、歯をむき出し威嚇しながらじりじりと後退していた一角ウサギは慌てて茂みに逃げてしまった。


「あ~~~~っ!また逃げられた~~~っ!バカっ!バカっ!ロルフのバカっ!もうちょっとで仲間になってくれるかも知れなかったのに!」


 しなやかで引き締まった体格に漆黒の髪。月の光のような淡い金の目を持つロルフは、リリアと同じ王都の冒険者ギルドに所属している黒豹の獣人だ。リリアより3才年上の17才だが、すでにBランク冒険者の称号を持つ若手ナンバーワンの実力者でもある。


 驚くほど整った顔をしているが、残念ながら口が悪い。最初は先輩として接していたものの、会うたびにちょっかいをかけられるのですっかりケンカ友達と化していた。


「馬鹿はお前だ。めっちゃ威嚇してたじゃねーか。ぜってー仲間になんかならねーよ。魔物なんざどっちが上か最初に教えてやんねーと従うわけねーだろうが。そもそもお前、攻撃魔法とか武器とかつかえねーじゃん?どうやって仲間にすんの?」


「う、うう、いつか私の心が通じて仲間になってくれる子がいるもん」


 それはいつのことかとロルフは思う。なにせ、冒険者ギルドに所属したものの、従魔のいないリリアに冒険者の仕事はこなせない。当然冒険者ランクは最低ランクのEのまま。通常どんな新人でも、1ヶ月もたてばDランクにはなれるのだ。冒険者として収入のないリリアは、収入のために始めた冒険者ギルドの雑用係のほうがすっかり板についており、いまでは冒険者たちのマスコット的存在となりつつあった。


 しかし、ロルフにはそれが面白くない。


「だからいつもいってんだろ?お前独りじゃ冒険者なんて無理なんだよ。大人しく田舎に帰れ」


「ロルフだって独りじゃんっ!友達いないじゃんっ!ぼっちじゃんっ!」


「はっ!?俺は群れてねーだけだっ!独りでもつえーからなっ!てめえと一緒にすんじゃねーよっ!」


「も、もう、スライムでもいいから。仲間が欲しいよぉー」


 ぐすぐすと泣き出すリリアを呆れたように眺めていたロルフは、背後から感じる嫌な気配にサッと身構える。


「なら俺のパーティーにいれてやろうか?」


 ニヤリと笑いながらやってきたのは、獅子獣人のディラン。見上げるほどの身長に逞しい筋肉を持った大男で、同じ獅子獣人の女性5人とパーティーを組んで活動している冒険者のひとりだ。


 野性的ながらも外見は整っており、男らしいワイルドさがたまらないと夢中になる女性も多い。


「ひとりじゃやってけねーだろ?俺の女になれば俺が守ってやるぜ?」


 そう言いながらもパーティーの女性たちといちゃつくのをやめようとしない。


「えっ?いや、マジで結構です。ディランさんのパーティーとか色んな意味でついていけませんし」


 リリアの言葉にロルフはニヤリと悪そうな顔で笑っている。


「ふふん。おっさんはお呼びじゃないとよ」


「あん?若僧が。調子に乗ってんじゃねーぞ?」


 獣人同士はとにかく喧嘩っ早い。些細なことでもすぐに喧嘩に発展してしまう。


(はぁ、面倒くさい。もうちょっと森の中で探してみよう)


 リリアは睨み合う二人を置いてさっさと森の中の探索を開始するのだった。

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