14.

 僕は苦しいまでに抱きしめられ、されるがままになっていた。気恥ずかしい……

 少女は身体を引き離すと、僕の両肩に手をやり笑顔で話しかけてくる。


「──?──ッ──〜」

「あ……あの……」


 僕は困惑して首を傾げた。


「ありゃ……伝わってない──ていうか、今、日本語喋らなかった!?君!?」


 少女は目を見開いて驚愕している。驚いた

 のは僕も同じ。なんと少女は酷く馴染みのある【日本語】という言語を話し出したのである。


「なんという運命!お姉さん嬉しいよ〜!同じ言葉で語り合える人に出会ったのは久々だ〜!」


 少女は再び僕に抱きつく。赤茶の髪が揺れ、嗅いだことのない不思議な香りが鼻をついた。

 余程興奮しているのか衣服が多少なりとも肌蹴はだけて、なんだか形のいい柔らかいものが当たっている。もうダメだ……恥ずかし過ぎる!


「ちょっと……」


 僕はどうにか上体を起こす。


「え〜"女の子同士"なんだからいいじゃない♪」

「あの……僕はおと……」


 言い終える前にまた強く抱きしめられてしまう。


「もう少しだけ♪」


 少女はなにか盛大な勘違いをしていた。自分でいうのも何だが、確かに僕は女性のような容姿をしている。華奢な体つきで右目近くに結えた髪を下げ、ヘアピンまでしているのだ。でもこれは姉の影響で自分の性が一致しない気がして──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る