第10話答えと結果
俺の出した「答え」はこうだった。
汚染源が他にあった。
一昨日のガラス容器じゃなくて、もっと前にウィルスは水に流れ出していたんだ。
それはじわじわと町の飲み水に、畑の水に溶けていって、最終的には町の人たちの体に入ってしまった。
でも、体にコップ一杯程度入るくらいじゃ発症はしなかった。
一杯、また一杯とごくごく飲めば飲むほど「それ」は体に溜まっていく。
でも、発症する数のウィルスが体内に入るまでは無害だったんだ。
例えば、そう。
花粉症ってそういうやつだよな。
ある量までいかなければ花粉症にならないってさ。
時間が経つにつれてそれまで飲んだ水も増えてきた。
体内に溜まったウィルスの数も多いだろう。
だから、「一定量以上」になる人が出てきた。
あのウィルスの症状は二段階ある。
初期症状と末期症状。
初期症状は風邪っぽいくらいの些細な症状。咳とかな。
末期症状はその咳が酷くなって、血を吐き出す。そして
死に至る。
この二段階の症状も、体内のウィルスの量によって変わる。
一定量以上で初期症状が出る。更にその上のラインの以上の量で末期症状が。
今までは 末期症状レベルの量までいく人はいなかったんだ。血を吐いたなんて話、小さな町じゃ大ニュースなんだぜ?
でも、追い討ちがあった。
一昨日のガラス容器だ。
あれにはきっと、濃い濃度のウィルスが入っていたんだ。
だから、近くにいた父さんはあっという間に末期症状で。
町を水が巡りきるまでにはたくさんの水が追加される。汚染された水もそこそこ薄くなるんだ。だから、その大本の工場の水は一番濃い。その水道の水を三人は飲んだんだ。
当然発症も早い。
今までとは比べ物にならない濃度のウィルスが入った水を飲んだ人たち。
元々ウィルスが体内に入っていたせいで、末期症状になるのもあっという間で、あんなことになってしまった。
それに、俺は気づいたんだ。
夏休みになってこの町に来た俺も、感染しているんだって。
水、飲んでいたからさ。
俺にはワクチンが必要だった。
それに、この町以外の人でも感染して初期症状になっている人が近くの町でいるんだってさ。
専門団体の人たちが来た。
俺は、あの子を起こして一緒にこれからのことを話した。
俺は、父さんが残した切符で帰ることになった。
あの子は、ワクチンを作るために団体の研究所へ連れてかれることになった。
父さんや母さんや、町の人たちだったものは全部焼却しないといけないそうだ。
エボラ出血熱もそうだもんな。
そんなことを言ったら、団体の若い人が驚いて、そんなことよく知ってるね、と言った。
俺は自分の荷物をリュックに背負った。持っていけるだけの遺品と、あの子がくれた思い出の贈り物を両手の鞄に詰め込んで、父さんが住んでいた家の鍵を閉めた。
何か、忘れ物はないか?
???
何か、大切なことがある気がする?
何だろう?
何か、引っ掛かっている。
俺は、元の町の家に着くまで気づけずにいた。
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