朝
@konokata
第1話 夢
これは夢だ。瞬時にそう理解した。
明晰夢というやつだろうか。意識が妙にはっきりしていて、どこか違和感を感じる
そこはどこまでも続く青い、青い空と、そこをゆったり流れていく真っ白な雲。
少し目線を下げれば、頬を撫でる微風に揺れる草原が、これまた果て無く続いていた。
特にすることもないので、少し散歩することにした。
絵にかいたような景色に心が躍っていた。
30分ほど歩いただろうか、少し先に細く流れる小川を見つけた。
ちょうどのども乾いてきていたので、水を飲もうと近づいてヒザをついた。
刹那
一瞬のうちに水中に引き摺り込まれた。
何が起きたのかまるで理解できず、呼吸はおろか目も開けられないまま、
どこかへズルズル引っ張られていく。このまま死んでしまうのか、意識が少しずつ朦朧とする中、そんなことを考えて、ゆっくり闇の中へ沈んでいった....
ピッ...ピッ...
規則的な電子音で目が覚めた。
視界には真っ白な壁、否、天井が広がっていた。
そうだ。自分は信号を無視して突っ込んできた車に轢かれ、ここに運ばれたのだった。
夢で見た景色は、あの世への入り口だったのだろうか。なら、もしあの時、川を渡っていたら、自分は死んでいたのだろうか。
そう思うと今になって寒気がしてきた。
良かった。まだ自分は生きている、確かにここに居る。そう実感する。
安堵のため息が出て、ふと人の気配に気がついた。ベッドに誰かのしかかっている。
自分を心配して来てくれたのだろうか。
申し訳なさと感謝の心が入り混じりつつ、温もりを感じる方を見た。
「アナタモ...クルノ...」
血塗れの彼女に引っ張られ、また意識が沈んでいく...
あぁ、今度こそ死ぬのか...
死神から逃れることはできないと悟り、
僕はゆっくりと目を閉じた。
朝 @konokata
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