心、マッコーリー。

天音なみだ

第1話 ブレイクスルー

吾輩は俳優である。一応。

「一応」とつけるところが御察しのとおりの具合である。上京して2年ほどであるが、画面の隅っこから中心になかなか居座れない。席を譲ったり、譲ってもらったりの繰り返しである。毎日腐っているわけじゃない。清々しいライトを浴びる日もあって、なんとか腐らず、なんとか踏ん張り、なんとか自分を鼓舞して生きている。

ある日のこと、パソコンの調子が悪くて復旧を試みるもなかなかうまくいかず、苦戦していた。すると玄関の人感センサーライトが点いたり消えたりを繰り返しているのが目に入ってきた。初めの頃は「誰かいる!」とビビったものだが、誰も通ってない。3流俳優にかまってるほど、幽霊も暇じゃないらしい。ただ、ばかになったのである。足の爪先が冷える11月のことだった。そのとき、私は真っ赤な靴下を履いていた。なんだか、何もかもがあべこべすぎて、すべてを投げ出したい気持ちになった。

『ブレイクスルーを感じない。』

人はこの気持ちになったとき、どうすればいいのか。Googleで調べたけども、どこにも答えは書いてなかった。

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