第54話 流通都市・バンデハン④
クロポンの挑発?によりハリッサとクロポンが模擬戦をすることになったのだけど、ハリッサは魔剣士のクロポンには勝てないだろうなと予想していた。
僕の中ではクロポンはそんなに強いプレイヤーという印象は無いのだけど、そんな強くない魔剣士のクロポンでも剣士などの近接戦闘職に対して強くしてしまうのが天衣無縫スキルである。
天衣無縫スキルはある意味ジャンケンみたいなもので、当然大きな弱点はあるがハリッサでは対処手段が無いのである。
「それじゃあ、ハリッサちゃん。好きなタイミングで攻撃して良いよ」
「絶対に勝からね!」
「はははっ、まずは俺に攻撃が当たればね」
クロポンは長剣を右手に持ち、切っ先を真っ直ぐハリッサへむけていた。
「行くよ!!」
ハリッサはいつもの様に大剣を片手に持ち、クロポンに向かって超スピードで突進した。
ピキンッ……ドンッ!
僕の動体視力では2人の超スピードはよく分からなかったが、剣を交差した直後ハリッサは吹き飛ばされていた。
「今のは……? 私の攻撃は確実にクロポンに当たっていたはずなのに」
「これが魔剣士の天衣無縫スキルだよ。このスキルを破れない限り、ハリッサちゃんに勝ち目は無いよ?」
「もう一度……やる!」
ハリッサは起き上がり、もう一度クロポンに向かっていくのだが……
ピキンッ……ドンッ!
ハリッサはまた同じ様に吹き飛ばされていた。
「うっ……見えない何かに弾かれる……何で?」
「もう終わりにするかい?」
「まだまだやる!」
それからハリッサは何度もクロポンに向かって、回り込んだり、ジャンプして上から斬り込んだりといろいろなパターンを試してみるが結果は同じだった。
「それなら……」
ボワッ。
ハリッサの赤晶石の大剣が炎に包まれる。
「へぇ、それは師匠の魔剣だったのか。魔剣の気配が無かったから分からなかったよ……流石に森の中で炎を使うのは危険かな」
クロポンはハリッサの炎を見るとすぐに守りから攻めに転じてハリッサの赤晶石の大剣を弾き飛ばす。
バキンッ!
「うう……」
「これで模擬戦は終わりかな。ハリッサちゃんも師匠の護衛をするならもっと強くならないとね。まあ、流通都市バンデハンにいけばハンターの依頼がいっぱいあるだろうから頑張ってね……ん? 師匠、すいません急用が出来てしまったので一緒に街へ行けなくなってしまいました。なので先に街へ行っていて下さい、師匠が街に長期滞在するならまた会えるでしょう。それではっ!」
「えっ? ちょ、クロポン?」
クロポンは急用が出来たと言って、どこかへ消えてしまった。
「クロポンも自由過ぎるでしょ……」
「アカリお姉ちゃん、ごめんなさい、負けちゃった……」
「ああ、今回の模擬戦は負けても仕方ないよ。相手との相性が悪かっただけで対策さえたてれば次はもっと普通に戦えるはずだよ」
「そうなの?」
「うん、たぶんクロポンはハリッサにいろいろなスキルがあることを学んで欲しかったんじゃないかな? さっきの天衣無縫スキルも近接攻撃を無条件で反撃する究極の近接カウンタースキルなんだけど、遠距離攻撃などには全く反応しないって弱点もあるから、ハリッサの最後の攻撃には攻めて来たでしょ?」
「うん」
「あれはクロポンが赤晶石の大剣を魔剣と勘違いしたから、炎属性の遠距離攻撃が来るかもしれないって警戒したからなんだよ」
「そうだったんだ……でも負けは負けだよね……」
「まあ、それはクロポンも言っていた通りで、流通都市バンデハンでハンター依頼をいっぱい受けて強くなれば良いんだよ。僕も街に着いたら新しい素材などを探してハリッサの新しい武器で試したいこともあるから一緒に強くなろうよ」
「うん! もっと強くなる!」
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