第52話 流通都市・バンデラン②

僕たちはクロポンと共に流通都市バンデハンへ馬車で向かっていた。


「いやぁ~、馬車はのせてもらってありがとうございます!」


クロポンは徒歩でバンデハンまで向かっていたらしく、街道を進むより森を突っ切った方が早いんじゃないか?と思い、バンデハンまで真っ直ぐ進んでいて、そこでたまたま盗賊集団に遭遇してしまい、逃がしてくれないらしいからと殲滅したらしい。


「アカリさんの知り合いならば気にしないで下さいよ。アカリさんにはかなり儲けさせてもらってますからね」


「あ~、師匠は商売が下手でしたけど、大丈夫なんですか?」


「アカリさんの商売っ気の無さは昔からなんですね……」


「僕は赤字にはならないように計算して商売してるから、クロポンやマルコスさんが言うほど商売が下手って訳じゃないよ?」


「いえ、アカリさんの鍛冶師としての才能があれば、もっと儲けられる筈なんですよ! 私からした勿体ないといつも思っていますよ!」


「それは俺も思っていましたよ! 俺としては格安で師匠の剣を手にいれられるんで助かってましたけど、師匠ならば本来もっと製作料を取っても良いとは思っていたんですよ」


「いや、大した手間がかかっていないのに大金を貰うわけにはいかないでしょ?」


「アカリさんの言いたいことも分かりますが、手間の問題ではなくて、価値に対して正当な報酬を得るのも正しいと思いますよ」


マルコスさんの言っている事も分かるんだけど、どうもこれ以上貰うともらい過ぎな気がしてしまうんだよね……


「マルコスさん、師匠にこれ以上言っても無駄ですよ」


「それは私も3ヶ月の間に悟りましたよ。それでクロポンさんはバンデハンに着いたら何をする予定なのですか?」


「俺は冒険者ギルドに所属して、ハンターとして依頼をこなしていくつもりですね。やっぱり強くなるには難易度の高い依頼を受けるのが手っ取り早いですからね。師匠とかは商業ギルドに所属するつもりなんですか?」


「いや、僕達も冒険者ギルドで依頼を受けるためにバンデハンに来たんだよ。まあ、他にも目的はあるけどね」


一応、本来の目的は勇者支援をするためにバンデハンへ来たけど、マルコスさんには僕が勇者の鍛冶師だとは秘密なので、マルコスさんのいる場所では勇者支援の話は出来ないでいたので、第2の目的である冒険者ギルドで依頼を受けるという事にしていた。


「師匠も冒険者ギルドに?」


「まあ、僕というかハリッサがハンターとして活躍するつもりなんだよ」


「へぇ、ハリッサちゃんがハンターにね……確かに強そうな雰囲気はあるけど、ちゃんと師匠を守れるのかな?」


「アカリお姉ちゃんはしっかり守るよ!」


「なら、試しに俺と賭をしてみないかい?」


「賭け?」


「そう、やはり師匠を守るなら強い方が相応しいだろう? だから勝った方が師匠の護衛になるって賭けよう。もしハリッサちゃんが勝ったならば師匠が喜ぶレアスキルの魔技宝玉をプレゼントしよう」


「えっ、クロポンは魔技宝玉を持ってるの? しかもレアスキル?」


確かにハリッサの為に魔技宝玉は欲しいと思っていたのだけど……


「はい、フルブーストが内包している魔技宝玉です。師匠なら欲しくないですか?」


「欲しいけど……ちなみにクロポンの職種とレベルは?」


「職種は魔剣士だけど、レベルは秘密です」


「むう、ハリッサ……これは止めた方が良い賭けだね」


「私は負けないよ!?」


「うーん、多分だけど、現状ではハリッサに勝ち味がない気がするんだよね……クロポン、レベル50は超えてるでしょ?」


「さすが師匠、鋭いっすね。確かに俺のレベルは50を越えてますね」


「魔剣士レベル50で取得するスキル、天衣無縫をクロポンが使えるならばハリッサに勝ち目は無いかな……これはハリッサが弱いんじゃなくて相性が悪すぎるって意味だからね」


「……むう。私は誰が相手でも負けたくない……」


「ハリッサちゃんは納得しないみたいだね……よし、特別サービスとしてハリッサちゃんに天衣無縫スキルを見せてあげる、ちなみに賭けは無しでも良いよ」


「やるっ!」


「師匠、それじゃあ馬車を止めてハリッサちゃんと模擬戦をしても良いですか?」


「クロポンの狙い通りになるのは癪だけど、お互いが怪我をしない範囲ならば模擬戦しても良いよ」


突然だけど、ハリッサとクロポンが模擬戦をする事になってしまった……。


「アカリさん、クロポンさんの言う天衣無縫スキルとはそんなに凄いスキルなんですか? 私の記憶では魔剣士は剣士よりも汎用性の欠ける欠陥職種だった筈ですが……」


「魔剣士が欠陥職種? そんな訳ないですよ。魔剣士は全職種の中で上位に位置するほど強いですよ。しかも、天衣無縫スキルはぶっ壊れスキルだと思ってます」


「あ~、師匠。魔剣士って師匠が思っているほど人気もないし、マルコスさんの使言うとおり、使い勝手は悪いんですよ」


「そうなの?」


「やっぱり私の魔剣士のイメージはあっているんですね」


「ただし、とあることをすると魔剣士は最強職種になるんですけど……まあ、一般人には現実的ではない条件だから説明はしないですけどね」


「そんな難しい条件だったけ?」


「……はぁ、師匠って、相変わらず無自覚なんですね」


「何、その無自覚って……」


「そのままの意味ですよ。師匠は凄い事をしているのに、凄い事をしている自覚が無いんですよ」


「僕はそんな凄い事をした?」

 

多分、クロポンはファイナルオンライン内での話をしているのだろうけど、そこまで凄いプレイをした記憶は無いんだよね

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