第22話 辺境の町・ファリスタ②
ガタガタガタッ!!
僕と助けた男性であるクリファスさんは、爆走しているハリッサの後ろを追いかけるように走っていた。
「それにしても凄いですね……」
「はぁ、はぁ……そうですね……ハリッサのパワーとスピードにはびっくりしますよね」
僕たちの前を爆走中のハリッサは、普通に走っているのではなく、僕が赤晶石で造った薄くて軽いけど、最低限の強度確保したリアカーに怪我人の3人を載せて走っていた。
普通に考えたら8歳の子供が大人3人を載せたリアカーを引っ張りながら爆走しているのに僕たちよりも速いのだから、それはびっくりするだろう。
しかも、ハリッサはまだ全力ではなく、クリファスさんの案内を聞くために速度を調整していた。
「ハリッサさんも凄いですが……全面レッドミスリルのリアカーなるものを一瞬で造ってしまうアカリさんが……」
「はぁ……はぁ……、えっ? なんて言いました?」
ちょっと走るのに集中し過ぎてクリファスさんの話を聞き逃してしまった。
「いえ、何でも無いです」
それにしてもクリファスさんも体力あるなぁ……
もう、数時間走りっぱなしなのに大した息切れもしないで会話が出来るだなんて……
僕なんて、もう心臓がはちきれるんじゃないかと思えるほどに苦しいのに……
とは言え、ハリッサがこのリアカーで運べば3人は助かるかもしれませんよ?って提案したのは僕なので、僕が足を引っ張る訳にはいかなかった。
「アカリさん、そろそろ町に着きますので頑張って下さい!」
「あ、ありがとうございます……」
やばい、クリファスさんにまで気を使われ始めたぞ……
こんなことなら、もっとレベルを上げておくんだったかな?
レベルが20になり、そんなに体力などを使うことは無いだろうと、油断していたが思いっきり体力を使う場面があったな。
「あっ……本当だ、あの大きな壁が町の外周壁なんですね……はぁ、はぁ……」
先ほどから森は抜けており、街道のような草木の無い道を走っていたのだけど、正面に高さ5メートルはありそうな頑丈な壁で覆われた町が現れていた。
「はい、あれが私たちの町・ファリスタです」
やっと着いた……もう僕が併走しなくても平気だろう。
「ハリッサ! 僕はここで一旦休憩するから、ハリッサも3人を預けたら町の門前で集合しよう!」
「うん、分かった! じゃあ、私は3人を預けてくるね!」
はぁ……
僕はあまりの苦しさから、その場で仰向けに倒れてしまう。
苦しいけど、誰かを助けるためならば気分は良いかな……あとはあの3人が助かってくれたら良いなと思う。
【聖都グランザリア】
俺はアロンダイトの言われるままにレベル上げをしていた。
「流石は勇者様ですね! 戦い方を分かっていますね!」
「まあな、これでもハイエンドモンスター専用ギルド・マサリカァの幹部だったからね。ゲームとはちょっと勝手が違うけど、慣れてくれば問題無いだろうね。ところでアロンダイトさん、そろそろ俺が倒すべき敵について教えてもらえるかな?」
「もう少し待ってもらえますか? 今、正確な情報収集をしていますので……」
「そうなの? 神の話では敵はハッキリしている感じだったけど……」
やっぱり、俺の予想通りアロンダイトや俺をこの世界に転生させた神のいう事は怪しいなと思う。
そもそもアロンダイトとか伝説の武具シリーズのイベントは俺もいくつかはクリアしているけど、ゲーム内では伝説の武具が覚醒すると世界の危機になるからって理由で、イベントボスを倒していたのだ。
言わばアロンダイトとかは世界の敵という位置付けな筈なのだ……だが、転生したばかりの俺ではどう頑張ってもアロンダイトなど伝説の武具シリーズには勝てないだろうから、言いなりになっている振りをしながらレベルを上げ、適当なタイミングで逃げようかなと考えていた。
「ごめんなさい、我々では神ほどの情報収集能力はありませんの……ですから、それまで勇者様には魔剣ラグナロクを使いこなせるようになってもらいたいと考えています」
「この魔剣ラグナロクは確かに凄く良い武器ですね。しかし、ファイナルオンラインで魔剣ラグナロクなんてあったかな?」
魔剣と言えば、師匠もやっぱりこの世界に転生しているのかな?
まあ、師匠ほどの伝説的なプレイヤーならば神が誘わない筈はないだろうとは思う。
もし転生しているのなら、是非師匠の造る魔剣を使いたいなと思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます