第20話 人助け

僕とハリッサは動物を倒しながら森をひたすら真っ直ぐに進んでいた。


以前、進んでいた場所よりも更に進んだ筈なんだけど、一向に森の景色は変わらなかった。


せめて森だけは抜けたいと思っていたけど、やっぱり森を抜けるのは予想以上に大変だな。


「そろそろご飯にしようか」


「やったぁ!! やっとご飯の時間だぁ!」


「ハリッサは相変わらずオニギリが好きだよね。そろそろオニギリにも飽きてきたんじゃない?」


「えっ? 全然飽きないよ? 一生オニギリでも良いよ!」


「僕は流石に飽きたかな……」


女神からもらった食料は何種類かあったけど、流石に数ヶ月も食べていれば飽きてくる。


僕は未だにオニギリに飽きないハリッサが凄いなと感心してしまう。


僕としてはカレーとかラーメンが食べたいなと思ってしまうのは贅沢なのだろうか?


そういえば、この世界に米ってあるのかな?


もし無いのなら、オニギリは貴重なのかもしれないな……


「あれ?」


「どうしたのハリッサ」


ハリッサが急にオニギリを食べる手を止めて、遠くの方を見だした。


凶暴な動物でも近寄ってきているのかな?


「襲われてるかも」


「襲われてる? どんな感じか分かる?」


「何人かの人が何かに襲われてるかも。何人か倒れてる……」


「それはヤバそうだね。完全装備で助けに行こう」


「うん、分かった!」


僕はアイテムボックスからハリッサ用の武具を取り出して渡す。


デュランダル戦以降、僕はハリッサの動きを阻害しにくい防具を造っており、今は赤晶石で造った全身防具を非常時のみ、装備させるようにした。


ちなみに僕も作業服の上から着れる簡易的な全身防具を付け始める。


「準備出来た! 先に行っても良い?」


「うん、大丈夫だよ。ちゃんと助けはいるかを聞いてから助けるようにね」


「分かった!」


ハリッサはそう頷くと、凄い速度で森の中を走っていった。


僕も多少はレベルが上がっているが、あそこまでの速さについていくのは無理なので、ハリッサを先に行かせ、最悪の事態だけは避けたいと思った。


ハリッサが走っていった方角に向かってみると、金属同士がぶつかり合う音がしていた。


キンッ!

キンッ!


あれ?


襲っているのは動物かモンスターかと思ったけど、もしかして武装している集団だった?


「くそっ、なんだこの化け物はっ!?」

「親分! 逃げまっ、ぐはっ……」


ようやくハリッサに追いついたのだが、もう戦闘はほとんど終わっていた。


ハリッサの持っている2本の剣が、刃の付いてない峰打ち用の剣だったので、多分、手加減しても勝てるレベルの敵だったのだろう。


……これはどういう状況なのだろうか?


ハリッサが助けたっぽい方と倒した方の装備がみんなバラバラなので、いきなり見ただけではハリッサと敵対している2人が敵で、ハリッサの後ろにいる1人が助けられたら人ってことしか分からないぞ……


「ハリッサ、これはどういう感じなのかな?」


「あっ、アカリお姉ちゃん! なんか弱かったよ!」


「なんだとっ、このガキ!! おい、同時に攻撃して、何としても一撃を入れてやる!」

「へ、へい!」


「……そういうことを聞いたのでは無かったんだけど」


2人はハリッサの発言にかなり怒ったらしく、2人同時にハリッサへ攻撃を仕掛けた。


……のだが、ハリッサは両手に持つ刃の無い剣で2人同時に腹を思いっきり叩き、2人を倒してしまう。


「「ぐへっ……」」


「あまり敵を怒らしちゃダメだよ」


「だって、あのデュランダルに比べたらかなり弱かったんだもん」


「まあ、あんな化け物がホイホイ出てこられても困るけど、無事に解決出来たみたいだし、良いか。お疲れ様、ハリッサ」


「うん!」


あとは助けた人たちの救護と事情を聞かないとな。

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