裏話・中編
「えっと、自分ではそれをどれくらい達成できたと思っていますか?」
「うーん、75%くらい?」
「微妙ですね」
「ミコト君のルーツっていうところが何か上手くいかなかった気がする。ちょっと最初に構想を練る段階で不十分だったかな」
少女がグラスをあおりながら、ちらと手元に視線を落とす。
「っていうことは反省点はそこですか」
もう少し後で反省点を訊ねる流れがあるのだが、ここでやってしまおうと独断を下したのだ。機転が利く少女である。
「うん。あと作風のわりにちょっと下ネタが過ぎたことかな」
「お母さん……」
元凶となっているのは自分のお母さんではないが、少女は思わずぼやいた。
「あと他作品のパロディネタをあまり入れられなかったところ」
「反省点が増えていく……。そういえばウマ娘、プレイしてるんですね」
「いいや?」
のっぺらぼうはのっぺりとしたその頭部を横に振った。
「じゃあアニメを?」
「視てないね」
「それでよくネタをぶっ込む気になりましたね! ネームバリューを利用したかっただけですか!?」
「いや、う~ん……」
「なんですか、はっきり言ってください!」
「今後の展開に関わるんだよねー、若干、ほんの少しだけ、ただのネタだけど」
「あー、だったらいいです。すみません、勢いに任せて突っ込ん」
「でもまぁいいか。どうせそのシーンが来る頃にはここでの会話なんてみんな忘れてるだろうし、横道に逸れたネタだから大したネタバレでもないだろう」
「なんかいろいろヒドイ……」
「というわけでほんの少しだけぶっちゃけると、
「へー、そうなんですね」
なんだかどうでも良さそうな相槌だったが、構わずのっぺらぼうは結んだ。
「んで、その元になったネタ的なやり取りをこの先で考えてるってわけ。そこにたどり着くのがいつになるか、皆目見当がつかないけどねぇ」
そんな遠い目をどこか遥か彼方へと向けるのっぺらぼう。いや目など存在しないのでそんな雰囲気を出しただけだった。
「じゃああまり期待せずに楽しみにしておきますね。私はもう出番がないようなので草葉の陰からひっそりと」
「なんかレスポンスに刺があるね!? あと君、それなりに重病人だけど別に死んでないからね!?」
「冗談ですよ。でも他作品ネタもほどほどに。ソッチ方面の読者さんには受けがいいかもしれませんけど、あまり度が過ぎると敬遠されますよ」
「いやー、でもラノベだし、あとひとつくらい入れたかったなー。気付く人は気付くけど知らない人でも何の違和感も抱くことなく読み進められるくらいのさりげなさで、中盤辺りに」
他作品ネタの理想的な挿入方法である。
「まぁ私の作品じゃないですし、お任せしますけれど。既に墓石の下にいる私にはもう関係ないdeath死ね!」
「色々と表現が直接的になった! 君そんなキャラじゃなかったよね!? でもホントごめんね!!」
拗ねたように言う少女にたじたじののっぺらぼうだった。
汗腺はあるのか、その額に珠の汗が浮かぶ。
「ま、まぁ機会があれば……なんとか出番を作……いや、う~ん……」
「歯切れが悪すぎる! いいですよもう! 本当に冗談ですから!」
そう言われたところでのっぺら男は自らの力不足に罪悪感を拭い去れず、せめてとばかりに額の汗をハンカチで
所詮、この男の実力などこの程度なのである。
「っていうか今回、章分けしてないのが気になったんですけど」
話題を変えようとばかりに少女がコーナーを進行した。
「あぁ、うん。本来は文庫本三分の一程度のあっさりした短編のつもりだったからね」
「三分の一? あっさり?」
「三分の二くらいになってるね……。内容も結構濃いし……。でも本一冊分よりは短いわけで、それで章分けしてもなぁって。一つの章のエピソード数が少なくなるし」
「なるほど」
「あとはまぁ、僕は章分けって起承転結か三幕構成の区切り
「ダメじゃないですか……。私的には三幕構成はわかりやすい気がするんですけど」
「それはBS2がかなり詳細にストーリーの流れをチャート化してくれてるからじゃないの? あれを勉強したとき、僕なんかは三幕構成も結局は起承転結じゃない? って思っちゃったね。承と転を一緒にしたのが二幕の部分じゃないの? って。二幕長いし、実際、チャートの内容もそんな気がする。僕がバカなのかなー」
「たぶんそうですね」
「…………」
先程の禍根がまだ残っていると感じたのっぺらぼう。
そっとしておくことにした。
「んで、その二つのストーリー構成と今回の過去編を照らし合わせた場合、何かが足らない……」
「何かって?」
「う~ん、承の部分かなぁ。実質『起→転→結』みたいになってる気がする。あるいは承の部分が凄く短い」
「ふむふむ」
「で、章分けすると三つになっちゃうんだけど、確実に三幕構成ではないと思うし、そんなんで三つに分けちゃうのもなぁって思ったわけ。やっぱり独学じゃ限界があるのか……」
「もう適当に章分けしちゃえばいいんじゃないですか?」
「仮にも文芸賞を目指してた人間の言うことじゃないよ」
「何か言いました?」
「いえ何でもありません」
少女としては黒歴史を掘り返されたことによる牽制だったのだが、何にせよ出番を作ってやれない負い目のほうが
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