第701話 ランダムリスポーンの先は


 ヤタガラスはなんとか撃破には間に合ったー! 間に合ったけど……。


「やっぱり、死ぬのは回避出来ませんでしたね……」


 ぐぬぬ!? 状況的に仕方ないとはいえ、また死んだよ!?


サツキ : サクラちゃん、ドンマイ!

水無月 : ドンマイ!

ミツルギ : まぁヤタガラスと戦闘になったら、こういう状況になるのはしゃーない。

こんにゃく : ヤタガラスは、強制的な集団戦になるからなー。空中戦力も結構な数を連れてくるから……まぁ死にやすいし。

ヤツメウナギ : 確かになー。でもまぁ、今の段階で出てくるヤタガラスはそれに特化し過ぎてるだろうから……本体は弱いか。


「そういえば、今の時点で出てくる幻獣種は尖り過ぎとか言ってましたよね? それ、具体的にどういう意味です?」


 んー? その辺は、よく分からないままなんだよねー。


ミナト : その説明をしてもいいんだけど……先にランダムリスポーンした方がいいんじゃない?


「あ、それもそうですね! 放っておいたら勝手にランダムリスポーンになりますし、話してる間に飛ばされるよりも、先に復活した方が良さそうです!」


 再誕の道標は……1時間に1回しか使えないから、まだ今は使用不可だしね。この平原エリアは広いって話だから、どこに出るかが不安なんだけど……それでも、手段は他にはないのですよ! という事で、ランダムリスポーン!


「……どこに出ましたかねー?」


 周囲は……うん、視界が開けてるし、背の低い草が多い草原っぽい場所! ちょいちょい木が生えてるし、なんかサイとかゾウとかキリンの姿が見えるから、本当に草原って感じだね。

 少し先の方になんか大きな桜の木が満開に咲いてるけど……あれ、どう考えても敵だよね。んー、まぁ無理に近付かなくてもいいかな?


「出た場所は草原みたいな場所ですし、すぐ近くには敵はいなさそうですね? ふぅ、とりあえず一安心です!」


 復活した直後に襲われる心配はなさそう? マップでも反応は拾ってないから――


ミナト : サクラちゃん、まだ安心してちゃダメ! マップは今、『索敵』は機能してないよ!

咲夜 : あー、これは……嫌な予感。

ミツルギ : なるほど、確かに危険な可能性はあるな。

富岳 : サクラちゃん、上に注意な。周囲に大きな影が落ちてるって事は、上に何かデカいのがいるぞ。


「……え? あ、確かに大きな影が……わー!? ドラゴンじゃないですか!?」


 ぎゃー! 待って、待って、待って!? 上を見上げてみたら、思いっきりデカいドラゴンが飛んでるー!? あ、でも気付かれてる訳ではなさそう……?


「……折角なんで、スクショでも撮っておきましょうか」


 襲われる前に、上空を悠々と飛んでいる翼のある西洋系のドラゴンのスクショを撮るぞー! ……うん、撮れた! 暗めの緑色と茶色の混ざったような体色って感じだね?


神奈月 : ……そこでスクショを撮るんかい! いやまぁ、別にいいんだけどさ。

ヤツメウナギ : まぁ別に襲ってきてる訳でもないしなー。いるだけであって、まだ交戦にはなってないし。

金金金 : とりあえず、大急ぎで『看破』とかのいつものを使った方がよくないか? あのドラゴン、エリアボスの可能性もあるだろ。


「あ、それもそうですね! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 という事で、いつものスキル達を再発動! えーと、このドラゴンは……。


「名前、単純に『ドラゴン』なんですね? Lv……11ですか!? え、でもそれでもエリアボスじゃないんです!?」


 待って、待って、待って!? 1つ前のエリアまではLv10刻みだったのに、Lv11でエリアボスにならないって事は……幅はやっぱり広ろがってる!

 他の敵……ゾウとかキリンとか、見事に咲いてる木も見てみたけど……Lv9〜11の間だー!? あ、でもLv7までは上がってるんだし、そこまで無茶ではない気もしてきた?


ミツルギ : ふむふむ、目的の東方向に少し飛ばされた感じか。上のドラゴン、見つけてた個体と同一と考えてもよさそう?

富岳 : おそらく、そうだろうな。てっきりエリアボスの個体かと思ってたが、まぁ単なる普通の敵だったか。

ミナト : そうみたいだねー。ちょっと北の方に寄ってる感じではあるけど、まぁ思ったほど危険な位置ではないかな?

こんにゃく : 安全を取るなら、少し南か西に進んでLv帯を下げるのが無難か?

いなり寿司 : 押し切れない訳じゃない範囲だが、まぁ無理せずにLvを上げるならそれが無難だろうな。


「あはは、完全体は強いですもんねー。このドラゴンとも戦ってみたいですけど……デカいですし! ……全長で5メートルは軽く超えてますよね?」


 パッと見の目測だけど、どう見ても普通の家は遥かに超えてるから、それくらいのサイズはありそう! 私のライオンの2倍どころじゃないサイズはあるし!


ミツルギ : オフライン版のモンエボで、最大級のプレイ可能な種族だからな。

イガイガ : プレイ不可を含めればクジラが最大級だけど、プレイ可ではドラゴンが最大だっけか。

いなり寿司 : 種族としても、最強格だからな。地上戦、空中戦、両方行ける稀有なパターンだ。

神奈月 : その辺、ドラゴンの格を示してるよな! まぁデカい分、デメリットもあるけどさ。

G : モンエボにおいて、大きいという事はそのまま強さに繋がる訳じゃないからな。

真実とは何か : それこそ、真実なのである!


「あー、これだけ大きいと死角も多そうですし、小回りも利かなさそうですもんね。大きければいいってものでもないですか!」


 その辺、私も実体験として知ってるもんね! 小さな敵が相手だと攻撃が当てにくい事もあるし、それでいて相手の攻撃が弱いって事もないもん!


「んー、まぁ今は上空にいて攻撃もし辛い状態ですし……って、遠距離攻撃は大丈夫ですかねー!?」


 看破で弱点を確認して……あー!? スキルにもステータスにも弱点に『器用』がないって事は、これ……危険かも! 上空でホバリングして、離れる様子はないし……。


「というか、ここってもう既に交戦範囲に入ってます!? 今の状況、溜めてませんかねー!?」


 ぎゃー!? 『生命』と『堅牢』と『俊敏』と『知恵』が弱点って、何気に弱点が多いけど、『屈強』が弱点になってないのはどう考えても危険だよ!?


チャガ : やっぱり早い段階で出てくる幻獣種は尖ってるな。完全体でLv11程度だと、偏りはまだ大きいか。

ミナト : まぁ進化条件に絡むとこだから、仕方ない部分ではあるけどねー。サクラちゃん、さっきの『尖ってる』っていうのは、得意不得意に極端な偏りがあるって意味ねー!


「あ、そういう意味なんです!? 確かに、妙に偏り過ぎてる気はしますけど……」


 うーん、どうしよう!? ちょっとLv差があるし……でも、極端に耐久性は低そうだし、速度も遅いなら、逃げに徹したら意外といける? あ、でも周囲にも他の敵が……。


「あっ! 他の敵を巻き込んじゃえばいいですか! よし、あそこに見えている桜の木を盾にしてしまいましょう! 『疾走』!」


 そうと決まれば、即座に移動開始! あの桜は『頑健な桜』なんだし、耐久性はバッチリなはず! 桜自体には私が攻撃を仕掛けず、盾にするだけなら、ドラゴンと戦ってくれるはずなのさー!

 それに、あの桜の木の周囲、他の敵の数も少ないしね! うふふ、良い位置に植っててくれたよね!


サツキ : サクラちゃんが、桜の木を盾にしに動く!

水無月 : サクラちゃん、ファイトー!

ミツルギ : まぁ周囲を巻き込むのは、悪い手段ではないな。

神奈月 : 何気にその桜、『器用』が高いから遠距離攻撃持ちだな。


「わっ!? わわっ!? 桜の花びらが襲ってきますし、そうみたいですね!?」


 今は私の桜は育成を止めちゃってるけど、桜の木って花びらを『葉っぱカッター』みたいに飛ばせるんだ!? でも、見切りの反応頼りで、回避は可能な範囲!

 少しでも使った事があるからこそ、本体の木の近くであればあるほど、その手の攻撃は当てにくくなるのは分かって――


「わっ!? あー!? これ、桜の分体です!?」


 待って、待って、待って! 近付こうとしてるのを阻止するみたいに、目の前にミニ桜が現れてきたんだけど!? ストップ、ストーップ! 


「っ!? 桜の花びらが!?」


 ぎゃー!? さっきより遥かに多い枚数が、ミニ桜から放たれて……わー!? 私の周囲を舞って、切り刻んでくるんだけど!?


ミツルギ : なるほど、この桜は動かない個体か。

G : さぁ、サクラちゃんが桜を盾にするのが先か、それともドラゴンの攻撃を受けるまで桜がサクラちゃんの接近を止め切るのか!?

真実とは何か : 果たして、どちらが真実になるのか!?


「わー!? ドラゴンからの攻撃もあるんでした!?」


 ぐぬぬ! 桜の木は大人しく、私の盾になってくれればいいのに! このミニ桜じゃ盾には小さ過ぎるし……どうにか振り切らないと! むぅ……そもそも、疾走をやめて止まるべきじゃなかったかな?


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