第644話 荒野の水場へ


 ちょっと色々とする事が増えてきてるから、桜の木の育成は一旦止めるという事に決定! 育てたい気持ちはあるんだけど、どうしても中途半端になっちゃうもんねー。


「それじゃ水場に向かって……あ、色々と切れてるので再発動しましょうか! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 話してる間に切れてたけど、これでよーし! ふふーん! この辺のスキルは必須なのですよ!


「胃袋は空っぽになっちゃってますし、どこかで回復させておきたいとこですよねー。まぁまずは水場に向けて出発ですけど!」


 レンコンは使い切っちゃったけど……どこかで、食べるのに時間はかかるけど回復量が多いアイテムも手に入れておきたいかも? 雑談中に、胃袋の回復に回すのもありだし!


G : わっはっは! そういう時は、一般生物のサソリを丸焼きがいいぞ! 普通の肉や魚に比べると、アイテム化の確率は高いしな!

サツキ : やめてー!? 昆虫食は嫌ー!?

イガイガ : 嫌がる人が多そうな部分で、妙に成功確率が他より高いという調整よ……。

ミツルギ : あー、そういやそうなってたっけか。

真実とは何か : それが真実なのである!


「そういう要素があるんです!? あ、そう話してたら、目の前に一般生物のサソリが歩いてますね?」


 ……これをこんがり焼けば、確率で回復アイテムになるんだよね? 姉さんは嫌がってるけど、別に私自身は抵抗はないし……よーし、やっちゃえ!


「ちょっとお試しでやってみましょうか! 『放火』!」


 ふふーん! 折角の機会を逃す理由はないのですよ! 


サツキ : ぎゃー!? サクラちゃんの躊躇の無さが発揮したー!?

いなり寿司 : ……サツキさんの拒否反応が凄まじいな。

ミナト : ……あはは、まぁ苦手な人はとことん苦手な部分だしね。

咲夜 : あ、燃え尽きた。

G : ちっ、アイテム化ならずか……。


「むぅ……確率だと成功しない事もありますか」


 残念、折角これで回復しようと思ったのに……。まぁ駄目だったものは仕方ないし、気分を切り替えていこー!


サツキ : アイテム化しなくて、ありがとうございます!

ヤツメウナギ : 必死だな、サツキさん!?

こんにゃく : まぁサソリの丸焼きはなぁ……。


「あはは、まぁまた機会があれば試してみますよー!」


 荒野ならではの回復アイテムみたいだし、どこかで試してみたいよねー。まぁ積極的に狙っていくつもりまではないけど。


サツキ : 待って、サクラちゃん!? そこは試さなくていいから!?


「さーて、いつまでも脱線してても仕方ないので、水場に向かって進んでいきましょう!」


 という事で、移動開始! えーと、どのくらい進めば見えてくるんだろ?


「あ、そういえば、マップに表示されてる赤い印はかなり散らばりましたね。復活したばっかの頃は、かなり偏ってましたけど」


 パッと見た限りでは、もう塊になっている場所はほぼなさそう? 離れた北の方にいる一団は……最初にランダムリスポーンをした場所にいたサイの群れかな?


ミツルギ : それは縄張りの影響が抜けてきた証拠だぞ。集まったり、離れたりする要因がなければ、群れ以外は敵同士である程度の距離は保つからな。

富岳 : 敵同士が争っている場合という例外もあるが、まぁ基本はそういう配置になる。

チャガ : 拓けていて遮蔽物が少ない場所ほど、距離を保ってもいるからな。荒野はそういう傾向は強めでもあるぞ。


「あ、そうなんですか! まぁいつまでも縄張りの影響を受け続ける訳もないですよね!」


 展開し続けてたら影響も続くんだろうけど、私が死んだ時点で解除になってるもんねー。そりゃ敵も元の状態に戻っていくものですよ!


「敵はチラホラ見えてますけど……今は水場への移動を優先しましょう!」


 サソリとかネズミとかサボテンとか、色々と見えてはいるんだけど、どれも微妙に近くはないしねー。

 それに、少し植物が生えている場所が遠くに見えてきたもん! 森に生えているのと比べると痩せ細っている感じではあるけど、それでも木が生えているのです!


サツキ : 水場が見え始めたし、近付いてきてるねー!

水無月 : あ、ほんとだ! 水はまだ見えないけど、植物は生えてるね!


「……あれらに放火を使ったら、燃え尽きますかねー?」


 ふと思ったけど、あそこで戦うとそういう事になりそうな気がしたよ?


神奈月 : あー、まぁ確かにそれは可能ではあるか……。

こんにゃく : 他のエリアよりも乾燥してるから、水場の近くとはいえ……よく燃えるからな。

咲夜 : あえて、戦場にするって手段もあるぞ! 火への適応進化をしていれば、自分は燃えないしな!

富岳 : 森とかと違って、破壊消火は不可能だしな。まぁその分、燃える範囲は限られるが……。


「おー、やっぱり燃えるんですか!」


 そっか、そっか! そんな気はしたけど、やっぱりそうなるんだね! ……それなら、思いっきり放火した上で敵を誘き寄せるってのもありなのかな?


金金金 : ほくそ笑む狐っ娘アバター。これはあれだな。何か悪い事を思い付いてそうだ。

ミツルギ : さっきの質問内容から考えたら……燃やし尽くす気か?

サツキ : サクラちゃん、自然破壊を目論んでるの!?

水無月 : 思いっきり燃やすの!?


「あはは、それもありかなーって思ってますね! もう今日は何度も死んでますし、再誕の道標も設置してますし、それで思いっきりLvを上げるのもありじゃないですかねー?」


 どっちにしてもエリアボスには挑みに行く予定だし、どこにランダムリスポーンになっても倒せない状態ではないLvくらいにはなってきてるし、大して困らないはず!


ヤツメウナギ : まぁありっちゃありか? 高難易度では、あえて火事にして優位な場所を作るって事もやったりはするしさ。

ミツルギ : 死んでもいいのなら、まぁ作戦としてはあり。どっちにしろ、この先どこまで進んだとしても再誕の道標を使う予定にはしてるんだしな。

咲夜 : 名付けて、『飛んで火に入る夏の虫』作戦!

G : 実際に虫も飛んでくるぞ! 特にイナゴとかな!

サツキ : ぎゃー!? イナゴー!?

神奈月 : あー、あれか。……出てくる可能性はあるな。

ミナト : あはは、あれはねー? 遭遇するかは、運次第かも?


「えーと、イナゴが出てくる可能性があるのは分かりましたけど……何かあるんです?」


 なんか姉さんの反応が変な気がするんだけど……これまで、何度かバッタは相手にしたよね? 今のは昆虫食の話じゃないだろうし、そんなおかしな反応になる理由はないような気がするんだけど……。


イガイガ : イナゴは……まぁある要素があるとだけは言っておこう。

神奈月 : それ以上はネタバレになるしなー。

金金金 : ほほう? イナゴならではの要素があるっぽいが……なるほど、なんとなく予想は出来たぞ。

咲夜 : 金金金さん、絶対に言うなよ! そこは見どころだからな!

サツキ : サクラちゃん、その作戦はやめておかない?

いなり寿司 : ……作戦に関係なく、遭遇する時は遭遇するぞ?

サツキ : それはそうだけど!?

ミナト : まぁサツキさんがどう言っても、なるようにしかならないからね?


「……何があるのか分かりませんけど、とりあえず水場は見えてきましたね! ……思ったより、植物は生い茂ってはいません?」


 真ん中にそれほど広くない湖があって、その周囲に疎らに木が生えていて、背の低い草花が半分くらい覆ってる程度? うーん、まぁここまでの荒野の様子に比べればかなり植物がある方だけど、地味ではあるかも?


ミツルギ : まぁ荒野の水場なんて、こんなもんだ。

ミナト : もっと大きな水場なら、もうちょっと色々生えてはいるんだけどねー。あと、今は夜だから全体的に出現量が抑えめな部分もあるよ。

富岳 : 水場は動物系の種族が結構集まってくる場所だからな。迂闊に近付けば危険だが、その分だけ経験値を稼ぎやすい場所でもあるぞ。


「おー! そういう場所なんですか! まぁこれだけ殺風景な荒野の中での水場ですし、そりゃ集まってきますよねー!」


 うん、水を求めて動いてくるのは生物なら当然なのですよ! ゲームのデータとはいえ、そういう行動パターンは設定されてるんだ!

 まぁ今は夜だから、昼間に活発に動く種族はあんまり出てこないって事なんだろうねー。……荒野にいる夜行性の生物って、サイもそうなのかな? うーん、まぁよく分かんないけど、別にいっか!


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