第620話 着ていく服
ぎゃー!? 服、服ー! さっきまで完全に頭になかったけど、いくらなんでもラフ過ぎるパジャマみたいな部屋着で行くのはなーし! 同性だけなら別にそれでも良いけど、今回はそうじゃないもんね!?
『サクラ』としてならそんなに気にならないけど、私自身の姿のアバターだとそうも言えないよ!?
「……むぅ、順番を間違えた気がする!」
まだ庭どころか、庭へ出てもしっかり見えるように和室の改装をしてる段階だけど、その前にやっておく事があったよ!?
わー!? ともかく、今ある服のデータを片っ端から広げていこう! 姉さんが買ってくれた……というか、買ってきた服に一緒に付いてた、仮想空間用のがそこそこ数はあったはず! ……一度も使った事ないから、何があるかすら覚えてないけど!
「ぐぬぬ……制服って、気楽で便利なんだね……」
学校に行く時は迷う余地なく、選ぶ必要もないんだから優秀な服なのですよ! ……制服で行ったら駄目かな? あ、そもそも仮想空間用の制服のデータとかないよ!? 正確にはあるにはあるけど、学校でしか使えないやつ!
「えーと、えーと!? 確か兄さんがどこかにまとめて置いてくれてたはず!」
あ、その前に作ったお昼の炒飯……うー!? 食べるのは、着ていく服装を決めてから! お腹空いたけど!
兄さん、衣装データ、どこに片付けたのー!? あれー!? 本当にどこにあるの!?
「……この時間なら兄さん、手が空いてないかな?」
分からないなら、直接兄さんに聞いてしまおう! 多分、アルバイト中だと思うけど、お昼休憩はあるだろうし、返事は14時までにはくるはず!
「よーし、その間に炒飯を食べちゃおう!」
自分で探して分からないんだから、整理をしている兄さんに聞くのが確実! どこにあるのかが分かれば、たまーに外出する時に着る服と同じデータがあれば、それに決めちゃえばいいし! だから、兄さんからの返事待ち!
◇ ◇ ◇
兄さんからの返事を待ってる間に炒飯は食べ終えた! ふぅ、市販の素って結構美味しいよねー。ササっと食器やフライパンも片付け終えたし……。
「あ、兄さんから返事がきた! えーと……え? 『全くアクセスしてないデータは、かなり前に削除している』って、えぇ!?」
待って、待って、待って!? 確かに全然着てなかったけど、消されてたー!? あ、だから全然見つからない……って、それは今、思いっきり困るんだけど!?
「あ、『必要なら再ダウンロードは可能だが、一覧は作っていない』……って、そんな!?」
ぎゃー!? 予想外の状態に陥ってるんだけど……あ、前のホームサーバーで保存領域の余裕が皆無になってたからとも書いてるよ!?
ぐぬぬ!? それ、多分私が配信を始めたからだー!? その時に私の衣装データ、全く着てないのは削除されたんだ!?
「なら、今から新しく自分の衣装を作って……流石にそこまでの時間はないよ!?」
どうしよう!? 当てにしてた衣装データは、すぐにはどうにもならなさそうなのは予定外だよ!? 再ダウンロードが出来るように一覧を今度作ってくれるとも書いてるけど、必要なのは今、これからなんだよ!?
「……サクラの着物なら、使える?」
アバターとしての体型は同じだし、使い回しは可能だけど……うん、それはなし! 流石に文化祭の打ち合わせに、着物を着ていくのがおかしな格好だってのは分かるもん!
「服……姉さんに相談して……あ、やっぱりやめとこ」
ここで姉さんに頼るのは何か違う気がする! うぅ……結月ちゃんと服を買いに行こうって話はしてたのに、それに行く前にこういう事態にならなくても良くない!?
「あっ! そっか、今から買いに行けばいいんだ!」
フルダイブをして仮想空間での店舗に行って、服を買ってくればなんとかなる! 一緒にフルダイブするか、アドバイスを求めない限り、周りには誰もいないもんね!
お金なら投げ銭や宣伝での報酬があるし、懐具合は問題なーし! それっぽい服を買ってこよー!
「えーと、フルダイブの仮想空間での店舗がある衣料店は……わっ!? ここ、お高いブランドじゃなかったっけ!? ブランド品はいらないから、もっとお手軽な価格のところ!」
高級ブランドとか、買う気はないもん! そういうのは興味ないし、高校生が使うものでもない気がする!
高級ブランドじゃなくて、その辺に普通に実店舗があるような……あ、あった! ここだー! 我が町にもある、リーズナブルな衣料店の仮想空間でのお店!
「あ、フルダイブしなきゃいけないんだから、自分の部屋まで戻らないと!?」
普通のサイトを携帯端末で見てたんじゃ、ただの通販と変わらないよ!? あ、これ、衣装データはすぐに手に入るのかな? ……待って!? 『衣装データのダウンロードコードは実物の服と一緒の発送になります』って書いてある!?
「わー!? これ、すぐには使えないやつだー!?」
実物と衣装データのセット販売になるから、実物が手元に届いた状態じゃないと駄目っぽいのは……仕方ないんだろうけど! 私には、今すぐ必要なんだよ!?
どこか……衣装データのみで販売してるとこを探さないと!? うぅ……今まで、そんなのを探した事ないから、どこにあるのか分かんない!? 結月ちゃん、ヘルプー! うぅ……今、お店のお手伝い中だから無理だよね……。
「……むぅ、この際、仕方ないのかも!」
服の件で頼むのは正直、躊躇いもあるんだけど……そうも言ってられないもん! もう1時間もないんだし、急がないとあっという間に時間がきちゃう!?
「姉さん、ヘルプー!」
簡単に事情を書いたメッセージを姉さんに送信! 手が空いてれば良いんだけど……って、通話がきたよ!? 今、送ったばっかなのに早くない!? でも、早い反応は助かるかも!
「美咲ちゃん、おしゃれに目覚めた!? あっ、遂に春が来た!? 見栄を張りたいお年頃だもんねー! そっか、美咲ちゃんにもそういう時期が来たかー! お姉ちゃん、ちょっと寂しい気もするけど、応援しちゃうよ!」
「そういう訳じゃないよ!? 説明、簡単だけど書いたよね!?」
いきなり姉さんは何を言ってるの!? 別に誰かからよく見られようと思ってやってる訳じゃ……あれ? でも、私、男の子からの目線を気にしてるのは事実な気もする?
ううん、そういうのじゃないから! 元々、姉さんのとこに遊びに行く時用に服を買うつもりではいたし! それに、パジャマみたいなラフな部屋着で行くのは、単純に恥ずかしいもん!
「ふっふっふ、自分ではそう思ってても、いつの間にか落ちているのが……って、14時に集合ならそんなに時間ないね。少しだけ待っててくれる? ご飯食べ終わったとこだから、ササっと片付けしてくる!」
「あ、うん!」
「聡さん、美咲ちゃんを我が家の仮想空間へご案内ー! そこから、美咲ちゃんの服を用意しに行くから!」
「……え? わっ!?」
あ、姉さんから仮想空間へのフルダイブの招待が来た!? そっか、1度これで合流してから、どこかのお店に行く事になるんだね!
よーし、今は自分の部屋に戻って、姉さんの家のホームサーバーに用意された仮想空間へフルダイブだー!
◇ ◇ ◇
姉さんの家の仮想空間にフルダイブをしたのはいいけども……お店に行くって話じゃなかったの? 聡さんもいるのは別に不思議じゃないけど……え、なんでここにズラッと服が出てきて、姉さんが並べてるの!?
「……美咲ちゃん、不用意な事をしたね。まぁ確かに今の格好は、外に出向くには不向きではあるけど……」
「あはは、そうですよね……。でも、兄さんが今まであった分、消しちゃったって話で……」
「あぁ、そういえば容量がギリギリ過ぎたから、使用頻度の低いデータは削除したと言ってたね。ホームサーバーを買い替えた今なら余裕もあるだろうけど、それが裏目に出た訳かい」
「……そうなります」
むぅ……もっと早くに気付いていたら、どうにかする手段もあった気がする! でも、今更言ってもどうしようもないもん!
「あのー、聡さん? 姉さんが並べてる服って……?」
「『サクラ』の着せ替え用の衣装だね。……葵達が、勝手に用意した……だけども。まぁ正確にはそれだけとも言い難いんだけどもね」
「こんなにあるんです!?」
待って、待って、待って!? 着せ替えを狙っているって話は聞いたけど、既に実物が作られてたの!? 私は許可してないのに、既にこんなに数があるなんておかしくない!?
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