第615話 サクラの呟き その16
今日の晩御飯は、トンカツだった! メンチカツが食べたくなってたけど、ちょっと惜しい……。まぁ美味しかったけどね、トンカツ!
「今日はもう配信で飯テロはしてるし、流石にやめといた方がいいかな?」
一応、食べる前のトンカツの写真は撮ってるけど……あ、でも別に飯テロが狙いじゃないんだし、ここは載せてもいいのかな? うん、やっちゃえ!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
本日の晩御飯はトンカツです!
宣伝したメンチカツも絶品でしたけど、こちらも美味しかった!
トンカツ.jpg
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ふっふっふ! 私の日常のご飯、思いっきり載せていこー! もう夏休みに入ったし、どこかで私の手作りを載せるのもありだよねー! 明日がどうなるかは結月ちゃんからの連絡待ちだけど、明日からお昼を自分で作る可能性もあるし――
「おい、階段の前で突っ立って悩むな。何を悩んでるのか知らんが、通れないだろ」
「あ、兄さん、ごめん!」
わー!? 思いっきり通行の妨げになってたー!? ん? 誰かからメッセージが届いたけど……これ、多分結月ちゃんからだー! すぐに確認……の前に、階段を上がってしまうのさー!
◇ ◇ ◇
ふぅ、とりあえず2階へ到着! さーて、メッセージの内容を確認しに自分の部屋へ――
「そういえば姉さんは何か言ってたか? 昨日の件、聡さんには伝えておいたが……」
「あ、うん! 配信の途中で怒られて、正座させられてたみたい!」
「……おい、待て。まさか、配信の中でその様子を話したのか!?」
「うん、姉さんがねー!」
「まったく、あの姉は何をやっている……。まぁいい。ちょっとその件で話があるから、俺の部屋まで来い」
「え、話? それはいいけど……あ、ちょっとだけ待って! さっきメッセージが届いたんだけど、友達からかも!」
「……美咲、友達がいたのか?」
「その驚き方、酷くない!?」
確かにちょっと前まで友達はいなかったのは事実だけど! 今は結月ちゃんは友達だもん! 他にも料理部の副部長さんや、他の部員さんや、コンピュータ部の人達とも仲良く……あれ?
「おい、急に顔が赤くなったが……大丈夫か?」
「ううん! なんでもない!? 大丈夫だよ!」
わー!? 何で今、頭の中に今日のお昼の光景が浮かんだの!? あれ……名前は佐渡くんだったよね。……わー!? なんかまた、あの時に感じてた気恥ずかしさが戻ってきたー!?
「……本当に大丈夫か?」
「大丈夫! 本当に大丈夫だから! ちょっとメッセージだけ確認させて!」
「まぁそれならいいが……この反応、姉さんでも似たようなのを見た覚えがあるな? あの時は……ん? あれは確か、聡さんとの……ほう?」
なんか兄さんからの視線が気になるんだけど、それを気にしてる場合じゃなーい! えーと、メッセージ、メッセージ! 多分、結月ちゃんからの文化祭の予定についてだろうから……あ、やっぱりそうだった!
えーと、明日は実際に作るわけじゃないけど、色々と打ち合わせをするってなってるね? というか、作り始める前に仕様を決めちゃわないと駄目だから、そっちが先って話みたい!
「……午前中に各自でアイデアを出して、昼から打ち合わせかー。あ、学校で集まらずに、作ったVR空間にフルダイブして話し合いって形にするんだ!」
「ん? あぁ、晩飯の時に話してた文化祭の件か」
「うん、それ!」
そっか、そっか。実際に作り始める段階になったら学校に集まるみたいだけど、今はまだそうでもないみたい? えーと、それ用のグループメッセージの招待も届いてるから……これ、どうすればいいんだろ? 承認を押せばいいのかな?
「わっ! あ、グループメッセージに入った! わー! これ、初めてかも!」
「……本当に友達が出来たんだな」
「いくら兄さんでも、流石に失礼じゃない!?」
さっきも文句を言ったけど、そもそも晩御飯の時に文化祭を手伝うかもって話はしてたんだし、兄さんもその場に……あれ? 話したのって昨日だけど……昨日は兄さん、出先で食べてきてたから……言ってない気がする!?
「まぁそれはいいとしてだ……。プライベートなVR空間で打ち合わせをするのは別にいいんだが……やり方は分かるか?」
「……えっと、多分? 普段してる手順で、フルダイブの場所を変えればいいんだよね?」
「まぁ認証が間に入りはするが、基本は同じだが……いけるか?」
「うん、大丈夫だと思う!」
姉さんが作った和室と、配信用の和室への切り替えはやってるもんね! 打ち合わせに使うのは、姉さんが作った和室みたいなVR空間だろうから、切り替え方法は知ってるのですよ!
「昼間は俺はいないが、何かトラブルがあった時に頼れる相手は――」
「そこまで心配しなくても大丈夫! 聞ける人はいるから!」
「……まぁそれならいいが」
ふっふっふ! いざって時は結月ちゃんに聞くし、結月ちゃんが分からなくても、そういうのに強そうなコンピュータ部の人達がいるもんね! 今回に限っては、兄さんに頼り切りにならないはずなのですよ!
「それで、兄さんの話って何?」
「あぁ、そっちの話があったな。とりあえずここで突っ立ったままなのもあれだし、部屋に入れ」
「はーい!」
廊下に突っ立ったまま、ずっと話し込むのもあれだしねー! という事で、兄さんの部屋にレッツゴー!
後で具体的に結月ちゃんと話すとして、今は兄さんからの話を聞いておかないと! 明日は特に宣伝はしない予定だけど……どういう話なんだろね? また姉さん絡みかな?
◇ ◇ ◇
兄さんの部屋に入って、椅子に座る! 兄さんの椅子、背もたれは大きいし、肘掛けもあったりするし、座り心地はいいんだよねー! 兄さんはベッドに腰掛けてるけど……何か操作してるね? 何か表示しようとしてるのかも?
「さて……俺も早めに切り上げたいから、早速本題に入るぞ」
「うん! どういう話ですか?」
「まぁ昨日の姉さんの暴走の件から分かった事なんだが……聡さんから細かい話を聞いてな。姉さんがプロ仲間と一緒に美咲の『サクラ』の着せ替えを狙ってる件だが――」
「その話なの!? 強硬手段に出てきたの!?」
わー!? 聡さんから聞いてはいた内容だし、実際に何度もそれっぽい光景を目にもしたけど、本格的にその話を持ってこられ――
「待て、話を最後まで聞け!」
「……あ、うん」
怒られた……。あれ? 今ので怒られるって、私、変な事を言った?
「……色々とややこしいから、直球で伝えるぞ。姉さんが思った以上に暴走してて、着せ替えに美咲も乗り気だと他のプロの人達が誤解してたそうだ」
「……え?」
「美咲、自分で姉さん以外に『嫌だ』とか『戸惑ってる』とか、明言してなかったそうだな? 配信の中で衣装替え自体はやりたそうにしてたから、趣味半分ではあっても、手伝おうって気持ちもあったそうだぞ? 昨日の件で、本気で戸惑ってるって把握したみたいでな」
「えぇ!? そんな状態になってたの!?」
待って、待って、待って!? 私の意思を無視してノリノリで着せ替えようとしてたのは、姉さんだけだったの!?
あ、確かに心の中では拒否するような事は思ってても……それをはっきりと口に出してはいなかったような気がする? そもそもプロの人達は声ありコメントはしてきてないから、反応自体をほぼしてないし……。
わー!? それで変な誤解が発生してたー!? もしかして、昨日のファッションデザイナーの人もそうなの!?
「全ては姉さんの暴走が原因だが……お詫びの声が詰め合わせで届いてるぞ。ほれ、これだ」
「……わぁ、ほんとだー」
知ってる名前がズラッと並んで、お詫びと配信の応援の言葉が大量にあるよ!? 『悪ノリしてごめんね』とか、なんか私の方こそ、ごめんなさい! わー!? この状態、私はどうすればー!?
「……まぁ有名な人が多いみたいだから、気後れするのも分かるがな。姉さんの暴走は無視するとしても……これだけの人が気にかけてくれているのは、知っておけ」
「……うん」
私を着せ替え人形にして遊ぼうとか、そういう意図は特になかったみたい。姉さん経由ではあったとはいえ、純粋に『サクラ』を気に入って、その上で着せ替えに興味がありそうだから……っていう好意だったんだ。
うー! 昨日のファッションデザイナーの人とか変に気後れしてそうだから、宣伝って形にしてくれてたのかも?
「とはいえ、姉さんがかなり暴走し過ぎだな」
「……兄さん、私はどうすればいい?」
「今、聡さんが色々と謝って回ってるところだ。実際には金も労力もほぼ動いてはいないから、まぁ変にトラブルになる事もないだろ。美咲が表でどうこうする必要はない……というか、ややこしくなるから変に言及はするなよ?」
「……うん、分かった。でもそれって、姉さんは大丈夫?」
「クリエイターに奇人変人が多いのは、そう珍しい話じゃないからな。姉さんはそういう類いの人として扱われてるから、心配はいらん」
「姉さん、そういう扱いなの!?」
むぅ……言われてみれば、どう考えても姉さんは変人ではあるもんね。消費し切れない程の食べ物を送ってくるとか、奇行な気もするし!
「まぁ美咲が何かを自発的にしたいと言うのであれば……聡さん経由で姉さんに話してみればいい。疑う余地なく変人だが……人脈は凄いからな、姉さんは」
「……うん!」
「ま、話としてはこんなもんだ。昨日の髪飾りの案件は一旦取り下げになってるからな」
「そっか。うん、分かった!」
姉さんが暴走し過ぎなのは間違いないけど、私の意思表示もしっかりと出来てなかったのも問題だったんだね。でも、今から下手に言及するのも駄目なんだ……。
もし、この件で何か私がするのなら……気後れとか言ってないで覚悟を決めて受け入れる時って事なんだろうね。でも、もうそうなったら、完全にプロの人達の名前を出すって事になりそう。そうじゃなきゃ、色々失礼だもん! ……なんか、覚悟のハードルが一気に上がった気がするよ!?
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