第488話 弁当を食べながら
まさか、私に文化祭の手伝いを頼まれるとも、その件で中学の事を話す事になるとも思わなかったけど……思った以上に、自分の中で過去の事に出来てきてるみたい! このままあの件は吹っ切っていこー!
とりあえず、緑茶を飲みつつ……ふぅ、温かいお茶は落ち着くねぇ。……うん、一息ついた! お弁当を食べながら、話の続きをしていこー。
「あ、結月ちゃん、今日は唐揚げなんだ?」
「あはは、昨日美咲ちゃんのを見て食べたくなっちゃってねー」
「どれどれ?」
「あっ、楓!? 勝手につままないでよ!?」
「んー、まだお店の味には届いてないね?」
「勝手に食べて、その言い草はどうなの!?」
あはは、なんだか立花さんと話してる時の結月ちゃんって、ちょっと雰囲気が違うよねー。まぁ仲良くなってまだ日は浅いんだし、知らない一面って色々あって当然なのかも?
「あ、そうそう。私のばあちゃんの家が結月のとこの隣なんだけどさ? この前の連休の時、櫻井さんが結月のとこに来てたのは見たけど、あの時一緒にいたのがお姉さん? というか、お姉さんが花苗さんの友達?」
「……え? えぇ!? あの時、見られてたの!?」
立花さんのおばあちゃんの家が、まさかの結月ちゃんの家のお店の隣だった!? しかも、あの時の光景を見られてたとか予想外にも程があるよ!?
「え、楓、こっちに来てたの!?」
「いやー、ちょっと両親が喧嘩してて居心地悪くて避難してきてたんだけど……定休日なのに外が急に賑やかになれば、そりゃ気になるもんだよ?」
「うぅ……楓にあれを見られてたとか、一生の不覚……」
「あっはっは! まぁその場に他に見知った顔がいたのは驚いたけどね? 店の方に入る前は、すごいぐったりとしてたりさ」
「……あはは」
むしろ、ただその場で見られてただけでよかったのかも? あの時に、立花さんまでいたら……うん、なんかおかしな事になってた気がする! あの時、結月ちゃんが『サクラ』の事を知ってたからなんとかなってたとこはあるけど、そうなる前は我ながら酷い状態だったもん!
「えーと、楓? 会話の内容は、具体的にどのくらい聞こえてた?」
「……ここは知らないふりをしておいた方が、全員の為だと思うけど?」
「わー!? その言い方、外での会話はほぼ全部が筒抜けだー!? 美咲ちゃん、ごめん!」
「……あはは」
えーと、あの時外で話してたのってどういう内容だっけ? 大半はお店の中で話してた気がするけど……あ、結月ちゃんが姉さんへサインを欲しいって伝えたのは外だった気がする!?
あー!? もしかして『立花サナ』が姉さんだって、分かっちゃってるの!? だから、知らないふりをした方がって言ってくれてるんだね。
「まぁその辺の話は、今はいいよ。私としても無理に深く突っ込む気はないしね」
「そうしてくれると助かります!」
「優秀な姉を持つと大変だねぇ。ねぇ、結月?」
「なんだか楓、今日は意地悪くない?」
「そりゃ、除け者にされたらねー?」
「……うん、まぁそれは置いておいて! 美咲ちゃん、文化祭の件の話をしていこう!」
「うん!」
外で話をする時は、周囲に誰がいるかって事は要注意だという事はよーく分かった! それは分かったけど、今はそっちよりも文化祭の話が優先!
「えーと、それでなんだけど……美咲ちゃんに頼むにしても、時間ってどうなのかな? 放課後、時間って大丈夫?」
「……放課後は流石に厳しいかも?」
「やっぱりそうだよねー」
「ん? 家、遠いのかい?」
「中学の頃の同級生が来ないくらいに、遠い進学先を選んだから!」
「なるほど、そりゃ遠そうだね」
家の割と近くに普通に成績的にも通える高校はあったけども、同じ中学の人が多く進学先に選ぶとこだったから避けたもんね。……自分の事ながら、そこまでして避けた先でまでまともに他人との交流が出来て無さ過ぎー!
うん、それを変えようと頑張ってる最中なんだし、決して今からでも遅くはなーい! ……もう高2の夏休みの目前だけども!
「んー、1回、実物を見てもらった方が良いんだろうけど……」
「遠いとはいえ、多少は遅くなっても大丈夫じゃないの? 親が厳しいとか?」
「……あはは、そこは親が厳しいんじゃなくて私の都合なんだよね。ちょっと18時からやる事があって?」
「へぇ?」
私と結月ちゃんを交互に見てきてるけど、流石に配信の事までは分かってないよね!? あ、でも結月ちゃんは毎日見に来てるんだし、もしかしたらどこかでその様子を知ってるのかも!?
「まぁ普段の放課後は無理みたいだね? そうなると……明後日の金曜、終業式が終わった後ならどうだい?」
「あ、その時間なら大丈夫かな?」
別に配信開始の18時までに家に帰れていれば問題ないし、午前中だけで終わる日なら問題ないはず! 姉さんのマンションに遊びに行くのは夏休みに入ってすぐには無理そうだし、夏休みの最初の方ならどうにかなるよね!
「それじゃ、金曜日は私の家でお昼にしちゃおー! 美咲ちゃん、それでどう?」
「あ、食べたい! うん、それでいいよ!」
「あ、ちょっと待った。そもそも放課後が無理なら、作業はどの時間にやるんだい?」
「「あっ!?」」
「……なるほど、2人ともそこは考えていなかったんだね」
ぎゃー!? よく考えたら、作業時間をどうするかを全く考えてなかったー!? えっと、えっと、どう考えても夏休みの時間を使ってやるしかないよねー!? わわっ!? 和室の庭の作成の時間、大丈夫なの!?
うがー! その判断をするにしても、具体的に何をどう作ればいいのかが分かってないから、判断のしようがないよ!? うぅ……断る気はないんだけど、そういう問題があるのはすっかり忘れてた!
「……美咲ちゃん、時間的に無理そうなら、やっぱり断ってくれてもいいんだよ?」
「ううん、やるだけやってみたい! 簡単に作れそうなら、何とか出来るとは思うし……まずは何が必要なのかを確認しないと!」
「そっか。それなら、金曜にそれを確認って形でいい?」
「うん! ……それで時間的に厳しそうなら、流石に無理だけど」
「まぁそうなるよねー!」
という事で、夏休みに入ってすぐの予定は決定! 夏休み中でも電車の定期は有効だから、ここまで来ようと思えば来れるしね! 去年は夏休み中にそんな事は一切しなかったけど、今年はそうはならなさそう?
それに何気に最新版にアップデートしたデザインソフトは、色々と便利になってるんだよねー! 何が便利かって、細かい部分の調整はフルダイブの方がやりやすいけど、携帯端末でのもっさり感のある動作が軽快に変わっているところ!
フルダイブだとどうしても制限時間があるから、携帯端末の方で作れるならそっちの方がいいもん! それに、姉さんから作る時の手の抜き方っていうのも教わった! ……全てに全力を出し切るのは、趣味でやるならいいけど、期限がある場合は駄目って言われたんだよねー。
「そっちの話はそれでいいとして……料理部の方の試食役はどうするんだい?」
「あ、それは普通にやりたい!」
「即答だね? まぁそういう事なら、金曜の昼から合同での打ち合わせにしようか。結月、それでいいかい?」
「調整は任せたよ、楓!」
「はいはいっと。まったく、うちの部長が言い出した事なのに、調整は人にぶん投げてくるんだからね……」
なんか色々と大変そうだね、立花さん。でも、初めは苦手意識があったけど、こうして色々話してみると、本当に色々と気遣いをしてくれてる親切な人だよね。
「あ、そういえばなんでコンピュータ部と合同でって話になったの?」
「「部長同士がバカップル!」」
「……あはは、そういう事なんだ」
結月ちゃんと立花さんの声が思いっきり重なってたけど、思った以上に分かりやすい答えが返ってきたよ。でも、それに乗って一緒にやってるんだし、なんだかんだで楽しんでやってそうだよね。
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