第476話 死亡を繰り返し


 ふふーん、水への適応進化を目指して頑張っていこー! さっきはいきなり陸地に出てびっくりしたけど、また脚が着かない部分までやってきた! 地味に索敵や看破の再使用時間は過ぎたけど……すぐに死ぬんだし、無理に使う必要はないかな?


「さーて、いつでも来てください!」


 今回、ランダムリスポーンで出てきた場所は湖の東側! ちらほらと魚影は見えてるし、さっきみたいに襲ってくるはず! ……って、あれー?


「……あのー、全然敵が攻撃を仕掛けてこないんですけど!?」


 ブラックバスとかコイとか、わっ! 小さいけどクラゲとかもいる! でも、襲ってきそうな距離のはずなのに、全然襲ってこないのはなんでー!?


ミツルギ : あー、この辺の敵はサクラちゃんより微妙に格下になるのか。

富岳 : 位置的に、今のサクラちゃんと比べて格上と格下が分かれてくる範囲だな。

イガイガ : 完全に避けられてる状態だ!

金金金 : あー、看破が機能してないから分かりにくいが、位置で推測は出来るのか。まぁこれまでの傾向を考えたらそうもなるな。


「あー!? そういう事になるんですか!? なら、放電で……って、それも今は使えないんでした……」


 むぅ、放電での無差別攻撃で敵を引き寄せるのは無理だったー! 威嚇じゃ格下の敵を追い払っちゃうだけだし……。


水無月 : これは自分で溺死を狙うしかなさそうだね!

咲夜 : そうなるな! というか、元々そのつもりだったと思うんだけど……違ってた?


「いえ、敵がいるならそっちの方が早いと思っただけで、別に元々はそのつもりでいますよー! それじゃ、えいや!」


 実際に苦しくなる訳じゃないんだけど、自分から溺死をしに行くのって躊躇が少しあっただけ! まぁゲームなんだし、その辺は問題なーし! これまでゲーム内で死んだ回数なんて数えきれない程あるし、この程度はなんて事ないのですよ!

 という事で、湖の中に強引に潜って……ちょっと潜る程度なら出来るけど、そのままどんどん泳いでいこうと思っても全然進まないねー。浮いて水面に戻されていっちゃってるから、潜ろうにも中々潜れない!


「……これ、岩でも抱えてたら沈めますかねー? まぁどうやってライオンで岩を抱えるかって話ですけど……」


 んー、咥えられる範囲の大きな石でも咥えたら、少しは沈めるかなー? まぁ無理に沈んでも、水中で活動出来ないんだから意味ない気もするけど!


ミツルギ : 小動物系なら、まぁ石に掴まって沈むという手段はあるにはある。

ヤツメウナギ : 投擲用に使える石くらいなら採集して持ち運べるからなー。その中で小動物系では扱いにくいサイズの大きめな石を使えば可能だぞ。

G : まぁサクラちゃんのライオンには無理な芸当だけどな!


「あはは、やっぱりそうなりますよねー! あ、窒息になり始めました!」


 小動物系の種族なら可能な手段ではあるんだ! まぁ確かに投擲に使える石って、大きさに結構バラつきはあるもんね。あんまり大きいのは飛ばしにくそうだから、私も使ってない!

 そうやって考えてる間に、凄い勢いでHPが減ってるね。やっぱり窒息での弱り方は凶悪なのですよ!


「死亡還元、また発動してくれませんかねー?」


 低確率だし、さっき発動したばかりだから無理――


<サクラ【巧妙なライオン】が死亡しました>

<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>

<『死亡還元』の効果で、進化ポイントを1獲得しました>


「また発動したんですけど!?」


 まさかの2連続での効果発揮!? わわっ!? 低確率なのに……あ、これまで発動があまりなかったから、その分だけ今発動してるとか!?


ケースケ : まさかの2連続での効果発揮!?

こんにゃく : まぁ低確率とはいえ、確率だからなー。理屈としては2連続での効果発揮はあり得るぞ。

サツキ : ラッキーだね、サクラちゃん!

水無月 : これで死亡カウント、3回目!

富岳 : 残り、27回だな。


「はい! あって困るものでもないですし、むしろありがたいですもんね! それじゃ、この調子でランダムリスポーンをしていきましょう! あと27回、頑張っていきますよー!」


 ふふーん、死ぬのを頑張るっていうのも不思議な気分だけど、それでも回数はしっかりと稼がないと実行出来ない事だもんね! 間違っても途中で陸地で死なないように要注意だけど、やる事自体は簡単! という事で、ランダムリスポーン開始!


「わっ!? 今度はいきなり水中に出ましたね!? ……なんだか暗いです?」


 夜目の効果が出てるとは思えないくらい、かなり暗い場所に出た! あ、なんかどんどん浮かび上がってる気がするし、結構深いとこに出たの?


神奈月 : 湖底が見えてるし、この暗さだとかなり深いとこに出たか。

いなり寿司 : 多分そうだろうな。まぁもう窒息になったし、手っ取り早くていいだろ。

咲夜 : 水面まで浮かび上がる前に、死にそうだよな。

真実とは何か : それが真実である!


「あはは、まぁそれは気楽でいいですし、折角なんで少しの間ですけど湖の底の方を観察してみましょう!」


 正直、暗くてよく分かんないけど……この辺の暗さへの対応ってどうにか出来るのかな? 


水無月 : この暗さって、水への適応進化をすればどうにかなるの? 潜れるようになっても、これだけ暗かったら困るよね?

ミツルギ : その辺は問題ないぞ。今の夜目は陸地用の仕様だが、水への適応進化が発生すれば水中の深いところでも見えるように最適化される。

ミナト : その辺は自動で調整されるから、心配はいらないよー! ただ、夜目を切ればこのくらいの深さで夜だと真っ暗だから要注意!

水無月 : あ、そうなるんだ!


「色々と便利なようになってるんですねー! って、あれ? 今、何か……あー!? あれ、真珠が入ってた貝じゃないですかねー!?」


 待って、待って、待って! 暗くて分かりにくいけど、湖の底にそれっぽいのがいた気がする! わわっ!? どんどん水面に向かって浮かび上がってるし、窒息でHPはどんどん無くなっていってる!?


ミナト : あ、本当だね。間違いなく真珠が入ってるやつ! サクラちゃんが先に見つけるのは珍しいね?

いなり寿司 : 確かに珍しいが……状況が悪過ぎるな。

G : 死に一直線の真っ最中! どう考えても、あれの採集は無理だな。

チャガ : マップで位置を覚えておくか。可能なら後で採りにくればいい。


「うぅ!? 折角見つけたのに!? この状況なのは酷い気が――」


<サクラ【巧妙なライオン】が死亡しました>

<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>


 うがー! 文句くらい最後まで言わせろー! むぅ、普段から全然見つけられてないのが、ミナトさんよりも先に見つけられるなんてとんでもない珍事だったのに……! よりによって、どうやっても採集出来ない状況でなんて思ってなかったよ!

 むしろ、そういう状態だったからこそ、ミナトさんより先に見つけられたような気もする。というか、ミナトさんが見つけてても言ってなかっただけな気もする! ……採れない状況では教えてこないよねー。


「……今のは残念ですけど、気分を切り替えていきましょう! 次はどこに出ますかねー?」


 とにかく、4回目の死亡は無事終了! ……無事ってなんだろ? うん、まぁそこは気にしない!


チャガ : 流石に死亡還元は3連続では発動しなかったな。

こんにゃく : 出たら、それはそれで面白かったんだけどなー。

ヤツメウナギ : そこまで都合よくは効果は出ないか。


「あはは、まぁそれはそうですよ! 2連続で出ただけでも運が良かった……って、脚が着く場所ですか。でも、湖の中ではありますねー!」


 陸が近いけど、まぁまた湖の中に戻っていけばいいや! えーと、ここは位置的にどの辺だろ? 私よりも格上が多い場所なら、間違っても陸の上で殺されないように注意して……。


「……え? あー!? この辺、エリアボスのワニがいたとこじゃないですか!?」


 待って、待って、待って!? マップに赤い印が出まくってるし、この位置は危険過ぎる気がする!?


ミツルギ : げっ!? サクラちゃん、急いで湖の深い場所まで進め!

チャガ : 湖の方に引き摺りこまれるのならいいが、陸地に引っ張り上げられたらマズいぞ!

富岳 : 足が着く場所だと、浅すぎて水中で死亡の判定にならなくなるからな! もっと深いところじゃないと危険だ!

ミナト : あ、ワニは陸の方にいるね! サクラちゃん、大急ぎで! この距離だと、間違いなく攻撃を仕掛けてくる位置!


「わー!? よりによって、なんでこんな場所に出るんですかねー!? 一応、これだけは使っておきます! 『見切り』!」


 背を向けて逃げるからあんまり意味はない気がするけど、それでも気休め程度の効果はあってほしい! ともかく、確実に水中だと判定される位置まで急いで逃げろー!

 水中で死ぬ為に、陸地にいるワニから水中に向かって逃げるってなんか変じゃないですかねー!? うがー! でもそんなのを気にしてる場合じゃなーい! 雷纏いが使えるなら撃破も狙うけど、今はそれも出来ないから逃げに徹するのですよ!

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