第12章 気分、一新です!
第406話 連休最後の月曜日
「美咲ちゃん、朝だー!」
「わっ!?」
え、何!? 何が起きたの!? あ、姉さんが……掛け布団を引っぺがして、起こしてきた?
「姉さん、流石にびっくりするんだけど!?」
「ふふーん、時間は有限だからね! 今日はゆっくりと寝かせてあげたら、もう殆ど時間が無くなっちゃうし!」
「あ、そういえばお昼を食べたら帰るんだっけ……」
「そういう事! ちょっと昨日は思った以上に時間を使っちゃったし、もうちょっと教えておきたいとこだからさー?」
「あはは、それは流石にそうだよね」
うん、昨日の昼からの出来事は姉さんとしても予想外だっただろうし、配信に間に合うギリギリの時間まで結月ちゃんのとこにいるとは思わなかったもんね。まぁそのおかげで色々と気分は変わったから、決して悪い事じゃないけど!
それで……えーと、今は8時過ぎくらい。朝ご飯を食べてから色々と姉さんから教わるとして、3時間ちょっとくらい。流石に土曜の昼に教えてもらった分だけで全てな訳がないもんね。
「……そっか、もう姉さん帰っちゃうんだよね」
「あらら? 美咲ちゃん、寂しいの?」
「うーん、少なくとも普通に寝れるようには戻りそうだよね!」
「お姉ちゃんがまともに寝かせてないみたいな言い方は、何か酷くない!?」
「……その認識、特に間違ってないと思うんだけど?」
「……そういえばそうだね? うん、まぁ気にしないという事で!」
決して悪い事ばかりという訳でもないけど、それでも普段の休日のペースからはズレまくってるのは間違いないもんね。今も、ちょっと眠いと言えば眠いし……。でも、今日は頑張って目を覚ますのですよ!
「さーて、それじゃ朝ご飯にしよっか! 今日もお姉ちゃんのお手製だよー!」
「はーい!」
姉さんも地味に料理を頑張ってるみたいだし、私も色々と前向きに頑張っていこー! ……ただし、姉さんの『サクラ』の着せ替えの目論見には要注意で!
◇ ◇ ◇
今日の朝ご飯は、卵焼き! お父さんとお母さんはまだ寝てたし、兄さんは先に食べたって事で、今いるのは私と姉さんと聡さん! ……若干形状が崩れているのは、まぁ練習中の姉さんが作った物だからご愛敬という事で!
あ、そうだ。昨日の夜の反撃をここでやっちゃおう! ふっふっふ、良い機会が訪れてくれたものですよ!
「姉さん、この卵焼きの写真をSNSの載せてもいい? 自慢の姉の手料理のご紹介で!」
「美咲ちゃん、それは待って!? 明確に私だと分かるのに、その出来栄えを載せるのは本当に待って!」
「えー、でも姉さんは私の食べてるところを撮りまくってたよねー? 友達にも見せるとか言ってたし」
「うっ!? それはそうだけど……聡さん、ヘルプー!」
「……それは自業自得じゃないかい? 昨日言っただろう? 『後で反撃を受けても仕方ない』って? 思った以上に早いタイミングではあるけど……美咲ちゃん、それは僕が許可するよ」
「やったー!」
「聡さん!? 美咲ちゃん、それは本当に待って! お願いだから、待ってー!」
「待ちません!」
「わー!?」
昨日は私だって止めてと言ったのに、止めてくれなかったのは姉さんだもんね! 姉妹といえど、やり返す時はきっちりとやり返すのです! ……うん、崩れ気味の卵焼きの写真が綺麗に撮れた! そして、これをこうだー!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
これから朝ご飯!
本日のメニューは、サツキさんお手製の『卵焼き』!
形は少し悪いけど、味は如何に!?
崩れている卵焼き.jpg
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ふっふっふ、これで投稿完了! あ、昨日のお寿司の件やいつもの配信の通知の投稿にも色々とコメントは来てるね。……軽く見た感じ、まぁ特別返信が必要なほどの内容はないかな?
「あー!? 本当に載せられちゃった……。しかも、しっかりと『サツキ』名義で……」
「もう『サクラ』と『サツキ』は姉妹ってバレバレだし、問題ないよね?」
「まぁ昨日も一昨日も、『サツキ』が配信に出ているから伏せるだけ無意味だね」
「美咲ちゃん、昨日の実況外への配信のお誘いはこれを狙ってたの!?」
「……さぁ?」
昨日のあれは……私なりのお礼だったんだけど、それを直接言うのはなんだか気恥ずかしい! うん、その辺は姉さんには内緒で、私の心の内だけに秘めておこう!
「あぁ、そういえば昨日のその分をさっき見たんだけど……葵、なんであれを出しているんだい?」
「え、あれ?」
「……緑茶の試飲データの事だよ。あれ、まだ美咲ちゃんから了承をもらっていない、例の件の1つだろう?」
「あ、そういえばそうだった!? 普通に飲んじゃった!?」
「……やっぱり無自覚だったね」
「……え? 例の件って……あー!? 試食とかの依頼の話!?」
昨日のあのお茶って、その1つだったの!? あの美味しい緑茶でホッと一息はつけたけど、そういう物だったんだ!?
あ、そういえばあのお煎餅のお店で取り扱いを始めるって言ってたような気もする……? よく考えたら、それってまだ発売が始まってないやつだー!?
「……さて、これはどうしたものだろうね。宣伝としては変な形にはなっているけども、既に1度は美咲ちゃんが宣伝をしてしまっているお店のものだし……」
「えっと、私は別にそのままで問題ないですけど……」
「……宣伝として頼まれている品である以上、そういう訳にもいかないんだよ。いくら友人からの依頼でも……いや、この場合は友人だからこそだね。葵と親しくなれば、美咲ちゃんを通じて無料で宣伝が可能だという流れは作る訳にはいかない」
「……そういうものなんです?」
「口コミと宣伝は違うからね。美咲ちゃんが『サクラ』で自発的に気に入った物を口コミで紹介するなら何の問題もないけども、どんな評価でもいいという条件付きとはいえ、宣伝を『サクラ』に頼む以上は、相応の代価は必要となるよ。……はぁ、今度からは葵にデータを持たせたままにはしない方が良さそうだね」
「聡さん、ごめんなさい!」
むぅ……よく分からないけど、色々と問題はあったっぽい? 昨日のお茶で一息つけたから、私としてはそれでよかったんだけどなー? あ、そうだ。タイミング的に丁度いいから、これは聞いておこうっと!
「姉さん、聡さん、試食データに関して聞こうと思ってた事があるので少し質問をいいですか?」
「どんとこーい!」
「それは構わないけど、どういう質問だい?」
「えっと、そもそも『サクラ』の配信でどのタイミングで宣伝すればいいとか、その辺がよく分からなかったんですけど……」
「それはあれだね! サイコロタイム!」
「……別にそこに限る必要はないけど、まぁ何かしらの形でコーナー化してくれればというところだね。まぁいつの配信の日かという制限はしないから、美咲ちゃんが和室の方へ切り替えた時に気軽にという感じだよ。あぁ、宣伝というのは堂々と宣言してくれていいからね」
「なるほど、そんな感じなんですか!」
そっか、そっか。定番化しているサイコロタイムに、試食データでのおやつタイムも混ざる感じを想定してたんだ。まぁそれくらいならそこまで盛大に時間は取らないし、堂々と宣伝だと言ってもいいのは気楽だけど……。
「それって宣伝の効果はあるんです?」
「試食データ……昨日の場合は試飲データだけど、あのお茶には現実の物みたいにリラックス効果はないからね。というか、そういう効果は出ないように制限がかかっていて純粋な味だけなんだけど……美咲ちゃんはそこは理解しているかい?」
「え、そうなんです!? ……でも、普通にリラックス出来ましたよ?」
「美咲ちゃん……いや『サクラ』は素でそうなってるから、宣伝として効果があるんだよ。純粋に味と雰囲気だけで、安心できるものとしてね? この場合、安心できる味という保証になるのかな」
「……確かに安心できる味でした!」
VR空間では満腹感は得られないようになってるのは知ってたけど、そういうのは知らなかった! でも、確かにいくらでも飲み食い出来ると駄目なものもあるもんね。コーヒーのカフェインとか、飲み過ぎは良くないって聞いたことはあるよ!
「簡単に言えば、美咲ちゃんが美味しそうに食べてたらそれだけで食欲がそそられるって事だね! つい食べたくなっちゃう感じ!」
「……まぁざっくりとした説明をすれば、そういう事だよ。だからこそ、昨日の分で美味しそうに飲んでいたのが問題になるんだけども……」
「あ、そう繋がるんですか!」
いまいち内容よく分かってなかったんだけど、ようやく分かった! 私が『サクラ』で美味しそうに食べたり飲んだりするのが宣伝になるのに、それを意図せずやっちゃったのが問題なんだ!?
これは……どうすればいいんだろ? とりあえず今回は、実際に今日の配信であのお茶を本当にしっかり宣伝しちゃうのが良いのかな?
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