第387話 見失ったヘビ


 この山麓エリアの最大Lvの10まで上がったのはいいけど、ヘビを完全に見失ったのは良くないよ!?


「ヘビはどこに行きましたかねー!? あ、マップで確認!」


 交戦状態になってるんだから、マップには表示されてるはず! そもそも索敵で……って効果が切れてるー!? ううん、でもマップでは赤い表示があるはず!


「……あれ? すぐ近くにいます?」


 マップにはちゃんと赤い印が表示されてるけど、ほぼ私の現在地と重なってる? でも、そんなに近くにヘビはいない……って、このパターンはもしかして!?


「私の真下にいるパターンですか!?」


 真下から奇襲される事は今まで何度もあったし、その可能性はあり得るよね! 大急ぎでライオンの下を覗き込んで……。


「……いませんね? ヘビ、本当にどこに行きました?」


 マップを見ても離れていく気配はないのに、姿が見当たらないよ? むぅ……樫の木を追いかけて木々がある部分に来た時に、どこかに隠れられたの? 近くに岩もあるし、その陰にでも隠れてるとか?


水無月 : んー? どこに行ったんだろ?

金金金 : 森の一歩手前まで移動したみたいだし、隠れられる場所は多いか。

咲夜 : あー、これは……教えない方がいいやつか?

ミツルギ : まぁサクラちゃんが気付いてないなら、下手に教えられないな。


「え、何かあるんです!?」


 うがー! 咲夜さんやミツルギさんは、もしかしてどこに隠れたか見てた感じなのかも!? むぅ……多分聞けば教えてくれそうだけど、ここは自力で頑張る!

 少なくともこの近くにいるのは分かってるんだから、放電でカウンターを狙って……って、再使用時間中だー!?


「……この状況から奇襲されたら堪りませんし、少し離れます!」


 どこかに隠れているのは間違いないし、ここは戦略的撤退だー! 沼と森の間の、特に草が高い訳でもない、ちょいちょい土が剥き出しであった場所に移動して――


「わっ!? 背中に何か……って、上にいたんです!?」


 うぅ……奇襲に警戒して離れようとしたら、その瞬間を狙ってこられた!? 落ちてくる様子は見えなかったけど、この状況で背中に何か落ちてきたならヘビの可能性が高いよね!?

 あ、ヘビのHPは表示されたから、それで確定っぽい! でも、ヘビ自体の姿が全然見えないんだけど!?


「勝手に乗ってくるんじゃないですよ! えい! この! どうやって振り払えば落ちてくれますかねー!?」


 この状況、危険すぎる気がする! なんとかヘビを振り落とさないといけないのに、なんか首に巻き付かれてきたような感じがする!?


富岳 : 完全に死角を狙われて、状況がさっぱり分からんな。

いなり寿司 : 木の上に潜伏してたのは確定かー。暴れまくっても振り落とせないって事は、どこかに巻き付かれたか。

ミナト : サクラちゃんの視界に入ってないから、その辺は経験則で考えるしかないけどねー。胴体に巻き付けるほどのサイズじゃなかったから、首にでも巻き付かれたかも?

咲夜 : ほぼ詰んでるパターンじゃん!?

ミツルギ : 上から落ちてくる可能性は教えなかったけど、まさかこうなるとはなー。

神奈月 : まぁその辺は自分で気付いた方がいい内容だし、これはこれで経験という事で。


「あ、さっき言ってたのって、上へ隠れてる可能性だったんですか!?」


 うぅ……基本的には皆さんは色々教えてくれようとはするけど、たまにこうして全然教えてくれない時もあるよね!? まぁ完全に頼りっぱなしになるのも駄目だから、それ自体は別に良いんだけど……。


「ぎゃー!? 状態異常で『窒息』になってきてるんですけど、このヘビ、私を絞め殺す気ですか!?」


 水の中での窒息よりは減り方は遅いけど、確実に早い速度でHPが減っていってるし、早くこのヘビをなんとかしないと!


「これでどうです!? 『体当たり』!」


 近くにある岩に、首回りが当たるようにぶつかっていくのです! ……ヘビのHPは見えてるけど、今のでは減ってないから当たってないっぽい!


金金金 : 大ピンチで慌てる狐っ娘アバター。そうか、ヘビは絞殺もしてくるのか。

ミナト : 敵が使ってくる場合って、そんなに成功率は高くないんだけどねー。

イガイガ : あんまりこの手の絞殺戦法を使う人も多くはないしなー。

こんにゃく : 植物系にはあんまり有効じゃないから、割に合わないんだよな、その戦法。

咲夜 : そうしてる間に、もう少しで死にそうなサクラちゃん……。


「分かってますけど、どうやって引き離せばいいんですかねー!? とりあえず『自己修復』で!」


 苦し紛れのHP回復だけど、これで少しだけど時間稼ぎ! うぅ、首は前脚じゃ届かないから、攻撃の手段がないよ!? 爪が届かなきゃ……って、爪!? 今まで考えてなかったけど、出来てくれたらありがたいよ!


「これならどうですか!? 『爪刃乱舞』!」


 ライオンだってネコの一種なんだから、後ろ脚で掻くみたいな事は出来るはず! 後ろ脚にだって爪はあるんだし、それで攻撃すれば……!


「あ、いけますね!」


 追い詰められての発想だったけど、上手くいったー! もう後ろ脚の片脚ばっかでの連続攻撃だけど、ひたすら攻撃あるのみ! うりゃりゃりゃりゃりゃー!


サツキ : サクラちゃん、頑張ってー!

いなり寿司 : あー、そういや爪系のスキルって後ろ脚でも使えるんだっけか。

ミツルギ : 地味に扱いが難しいけど、一応なー。使い所も限られてくるし……。

ミナト : え、そう? 割とよく使うけど?

富岳 : まぁ種族次第なとこもあるしな。二足歩行の種族でなら、後ろ回し蹴りの要領で爪を引っかけるような感じで使う事もある。

チャガ : 中には四足歩行の種族でも攻撃に使う人もいるけど、まぁ上級者向けの手段だな。


「そうなんですか!? ふぅ、とりあえず窒息からは抜け出しました! 続けてこれです! 『連爪撃』!」


 巻き付きの強さはかなり弱まったけど、それでもまだ巻き付いたままだもん! まだ危機から抜け出した訳じゃなーい!

 とにかく首から引き離して、距離を取らないと!? うぅ、もう残りHPが3割くらいまで削られてるから、早く引き離さないと死んじゃう!


水無月 : サクラちゃん、頑張って! あっ!?

サツキ : あー!?

咲夜 : ……あー、まぁそうなるよな。

ミナト : あらら、そうなっちゃったか……。


「ぎゃー!? 噛まれて麻痺毒になっちゃいました!?」


 うぅ……麻痺毒は止めてー!? 巻き付きが弱まって抜け出せそうって思ったら、もっと厄介な状況になったよ!?


ミツルギ : やっぱり知恵系の敵は厄介だな……。

こんにゃく : それは間違いない。

ヤツメウナギ : こりゃ流石に厳しいか?

富岳 : ランダムリスポーンになる可能性が高そうだな。まぁ移動距離がかなりあるし、距離の短縮になると思えばいいんじゃないか?


「そうかもしれないですけど、なんかこの負け方は嫌なんですけどー!? って、また巻き付きが強くなってきてます!?」


 そういえばこのヘビの弱点分析の内容って何!? 1対1になってからちゃんと確認しようと思ってたのに、見失ってたからちゃんと確認出来てない!


「わー!? 待って、待って、待って!? このままじゃ死にま――」


<サクラ【巧妙なライオン【雷】】が死亡しました>

<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>


 うがー! どんどん巻き付きが強くなって、また窒息になって死んじゃった……。死んだものは仕方ないけど……やっぱり知恵系統の敵は嫌いなのですよ!


「……どうせ死ぬなら、縄張りを使って強引にでも倒しちゃえばよかったんですかねー?」


 今思いつかないで、戦闘中に思いついておけばどうにかなってた気がする! むぅ……慌てすぎて判断を間違えたー!


ミツルギ : あー、確かにその手段はありだったかもなー。今更言っても遅いけど……。

イガイガ : 死んでから言ってもなー。

サツキ : サクラちゃん、ドンマイ!


「……まぁ死んだものは仕方ないです。あ、あのヘビの弱点がどうなってたかだけ教えてもらっていいですかねー?」


 なんというか思った以上に毒以外の攻撃が強かった気もするから、屈強が弱点には入ってない気がする!


ミナト : えっと、弱点としては『生命』と『堅牢』と『器用』だったね。それなりに屈強と俊敏も高めだよー。

富岳 : 俊敏はスキルの方が弱点になってたが、屈強は両方とも表示されてなかったからな。

ヤツメウナギ : ヘビの巻き付き攻撃自体が、屈強のスキルツリーの攻撃だしな。

チャガ : あの構成は、死角を取られた時点で厳しい状況だった。

真実とは何か : それが真実である!


「状態異常に強くて、近接攻撃も強いヘビって厄介過ぎませんかねー!?」


 簡易表示の弱点分析の内容を聞いたけど、そんな内容だったんだ!? 見失ってしまった時点で、相当不利だったんだね……。うん、もう仕方ないって事で諦めよ! リベンジしに戻るには目的の方向を考えたら遠い場所だしねー。

 さーて、とりあえず今の場所の確認をしていこー! どの辺にランダムリスポーンになったかなー? 東の端に近い場所に出てれば嬉しいんだけどねー。

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