第386話 抜け出した先で


 危うく沼から脱出ができない状態で聡明なヘビが襲い掛かってきて焦ったー! けど、何とか脱出は成功!


「ヘビに気を付けながら、先に樫の木を倒しますね! わわっ! 根での串刺し攻撃ですか!?」


 見切りの効果で大雑把に地面が赤く表示されたと思ったら、そこから根が突き出てきた! 大きく横に飛び退いて回避したけど、沼の位置とヘビの位置にも注意しないと! とりあえずヘビに追いつかれないように距離を取るのです!


サツキ : 2対1の戦闘開始!

金金金 : まずは距離を取るサクラちゃん!

こんにゃく : 堅牢系統の樫の木と、知恵系統のヘビを同時に相手か。ややこしいといえばややこしい組み合わせだな。

富岳 : 樫の木が既に瀕死なのは大きいが、回避方向を間違えればヘビが樫の木を仕留めかねんな。

水無月 : サクラちゃん、頑張れー!


「わー!? そういう可能性もあるんです!? 『放電』『放電』『放電』! むぅ……瀕死なのに硬いですね!」


 木の中でも樫の木は特に硬い感じだし、堅牢系統で進化してるんだから余計にかも! 継続ダメージが硬い敵には有効なのは分かったし、下手にヘビが樫の木を攻撃したら本当にすぐ死にそう!

 って、なんか地面が赤く表示されたけど、今回の見切りの範囲は広くない!? ちょっと待って、範囲が広くて範囲から抜け出せるかどうか――


「わっ!? 避け切れなかった……というか、なんか妙に根の本数が多くないですかねー!?」


 複数の根で、同時に範囲攻撃ってありなの!? うがー! 端っこの方の根に掠った程度でダメージは少なめだけど、ヘビから意識を逸らさないようにしながらこの範囲の回避は厳しいよ!?


「わっ!? 今度はヘビの噛みつきですか!?」


 見切りでギリギリ反応出来たから、なんとか回避! 黄色い毒が滴ってるから、今のは麻痺毒! ……見切りが無かったら、回避し切れてなかった気がする!


いなり寿司 : どうも弱点分析の内容を見る余裕はなさそうな回避状況だな。

G : さっきの根の範囲攻撃は『根の剣山』か。

咲夜 : あー、木の俊敏のスキルツリーにある連撃とは言いにくい連撃攻撃のやつ!

水無月 : サクラちゃんの『双爪撃』と同じような感じ?

イガイガ : 種類としてはそうなるなー。

富岳 : スキルツリーの位置的には獅子咆哮と同じ場所なんだが、一応連撃の分類だからな。地味に溜めがない厄介なタイプだ。

ミツルギ : 正確には溜めは可能だけど、その分だけ広範囲化する性能だな。


「そんな厄介な性質なんです!? そういえばそんな名前のスキルを見た覚えがありますね! わわっ! 今度は連続で根での突き刺し攻撃ですか!?」


 回避、回避、回避ー! うぅ、弱点分析をじっくりと確認したいとこだけど、ヘビへの注意もしなきゃいけないから放電の狙いすらつけられない状況だし、これは厳しいよ!?

 連撃系の攻撃には溜めが無いって話は聞いた気がするけど、スキルによって微妙に性能が変わってくるんだ!? というか、地味に桜の木で使いたいスキルかも!


 って、そんな事を考えてる場合じゃなーい! ヘビからの噛みつき攻撃を回避! 今のは……特に何も滴ってなかった気がする?


「このヘビ、私が樫の木の攻撃を回避した後を狙ってきてませんかねー!?」


ミナト : 実際、そのタイミングを狙ってくるよー。知恵系統は他の敵より攻撃パターンが特殊だからね。進化階位が上がって知恵も上がった分、行動パターンも変化してくるしね。

富岳 : ちなみに難易度を上げれば、回避先を潰す形で他の敵を利用してくるようにもなるぞ。まだ回避した後を狙ってくるのが分かってる分だけ、対処はしやすいな。

こんにゃく : 早めにどっちかだけでも仕留めておきたいとこだが……。

ヤツメウナギ : さて、サクラちゃんはどう対処する?


「知恵が上がったら、それだけ本当に知恵が回るようになるんですね!?」


 厄介にも程があるよ、知恵のステータス! 状態異常が効かないだけでも厄介なのに!


「とりあえず見切りが切れたらアウトっぽいので、先に確実に樫の木を仕留めるのを優先します! 溜めでいきますよー! 『放電』!」


 再使用時間が長くなるからあんまり溜めたくはないんだけど、今は着実に1体仕留めるのに集中なのさー! その上で、回避、回避、回避ー! 沼にまた脚を突っ込まないように、そこにも要注意で!


サツキ : サクラちゃん、避ける、避ける、避けるー!

チャガ : 溜めた放電で、とりあえず樫の木を確実に仕留めるか。

神奈月 : 1体減ればかなり戦いやすくはなるだろうしなー。というか、堅牢系統で進化しつつ、俊敏のスキルツリーも上がってる樫の木か。

ミツルギ : サクラちゃん、こっちで弱点分析の内容を伝えようか?


「えっと、ヘビの方は後で自分で確認するので、樫の木の方をお願い出来ますか!? わっ! わわっ!」


 根での連続攻撃が多いし、地味に私の双爪撃と同じ系統の同時攻撃をしてくる連続攻撃もあるみたいだもんね。木なら生命も多めだし、何が弱点になるのかが問題!

 それにヘビは直接見て位置を確認してるけど、樫の木の本体を見てる余裕はなーい! 地面から根が突き刺さってくるんだもん! 見切りの反応、地面からくるんだもん!


ミツルギ : よしきた! 樫の木の弱点は、『器用』と『知恵』だなー。屈強のステータスは弱点になってないから、その根での攻撃は結構な威力があるぞ。

G : 状況的に有効なのは……毒か。こうなってくると少し惜しいがヘビに噛みつかせて、樫の木を殺させるのもありだな。

富岳 : まぁそれも手段としてはありか。


「なんかそれをするのは嫌なとこですねー。瀕死まで私が削ってるんですし、ヘビには任せておけません! わっ! わわっ!」


 うがー! この樫の木の根での連続した串刺し攻撃、避けにくい! 見切りの範囲が大雑把なのもあるんだろうけど、連続して飛び退かないといけないのが厳しいよ!

 うー、そういう意味では連撃の最後に、ヘビのもう1撃が加わってるだけだからまだ回避はしやすいのかも? でも、ヘビをずっと視界に入れながらなのも厳しい原因!


神楽 : ヘビに樫の木へ毒を使わせて、トドメの部分をサクラちゃんが持っていくのは駄目なの? 継続ダメージなら、その辺は狙えるんじゃない?


「あ、そういう手がありましたか! って、どうやってヘビに樫の木を攻撃させればいいんですかねー!?」


 なんか完全に樫の木とヘビが連携して動いてる形になってるし、ヘビに樫の木を攻撃させる手段が思いつかない! というか、細かく考えてる余裕なし!


ミツルギ : 手段自体はあるにはあるんだが……放電を溜めてる最中だから、実行は無理か。

水無月 : シンプルに樫の木の裏に回って、ヘビの攻撃の盾にするのは?

G : ありっちゃありだが、樫の木が相当弱ってるからな。少し間違えれば、ヘビの攻撃で死ぬ。


「なんかもうこの際、それでも仕方ない気がします! 水無月さんのアイデア、使わせてもらいますね!」


 という事で、回避しながら樫の木の本体へと駆けていくのさー! 少しだけヘビから目を離す事にはなりそうだけど、私を襲ってくるだろうから、その攻撃を樫の木を盾にする感じで……。


「って、なんで離れていくんですかね、この樫の木!?」


 うがー! まさかの距離と詰めさせてくれない状況になったよ!? でも、移動は私のライオンの方が速いし、根で移動を始めたから連続攻撃も止まった!


水無月 : まさかの逃亡!? あ、違うね。一定の距離を保とうとしてる?

こんにゃく : 堅牢系統はその場で耐える事の方が多いんだけど……俊敏も育ってる場合は中距離を保ちやすいんだっけ?

ミツルギ : 確かそのはず。でもまぁ、今回はサクラちゃんの方が速いな。


「その通りですね! 追いつきましたよ、樫の木! ヘビは……わっー!? すぐそこでした!?」


 紫色の毒を滴らせた噛みつき攻撃が見切りの反応に出た! この位置なら、ちゃんと避けれれば樫の木に当たるはず! 沼からは多少離れたし、ここならどの方向に飛び退いても大丈夫だし、横に飛び退いて回避!


「あ、やりましたよ! ヘビが樫の木に噛みつき……って、あっという間に死にかけじゃないですか!?」


 噛みつきそのもののダメージもそれなりに入って、毒になった瞬間に一気にHPが減りだしたよ! これ、すぐにでも攻撃をしないとすぐに死んじゃう!?


「間に合って下さい! 放電、いっけー!」


 樫の木が毒で死ぬ前に、溜めてる途中の放電を放つのですよ! これでなんとか――


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【巧妙なライオン【雷】】が成熟体:Lv10に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを4獲得しました>


「よし、間に合いました! わっ!? おっとっと!」


 飛び退きながら慌てて放電したから、着地で少しバランスを崩しかけちゃった。ふぅ、危ない、危ない! こんなところで転んでる訳にもいかないもんね! さーて、次はヘビを仕留めに……。


「……あれ? ヘビ、どこに行きました?」


 ちょっと待って、ヘビの姿が見当たらないよ!? もしかして、さっきのヘビの噛みつきって、効果が切れるまで離せない『噛みつき』じゃなくてすぐに離せる『強牙』の方!?

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