第356話 凝縮した獅子咆哮


 ふっふっふ、溜めを開始した獅子咆哮にこれから『衝撃凝縮』の効果を発揮させるのですよ! どういう風になるのかなー?


「えっと、とりあえず凝縮率を100%で!」


 一気に最大までやった方が効果自体は分かりやすいはず……って、そんなに凝縮されるの!? 筒みたいな表示が、普通に真っすぐな線になったんだけど!?


「あのー、全然広範囲じゃ無くなってるんですけど!? というか、射程まで短くなってません!?」


 ぎゃー!? マップを見たら、2体の敵のいる場所まで地味に届かなくなってるー!? これ、駄目だよ!? なんか凄い威力が凝縮されてるような気がするけど、獅子咆哮の利点が全部消し飛んでる気がする!


G : サクラちゃん、それは単純に凝縮させ過ぎだ。

ミツルギ : 最大まで凝縮させたら、そうなって当然だぞ。

咲夜 : 可能な限り凝縮させてる訳だしな!

富岳 : 『獅子咆哮』でそれを使う場合は、溜めてる間に距離を詰められた場合くらいだぞ。そういう時には、ピンポイントで効果を発揮する。

チャガ : 自分の丁度いいように調整する為の凝縮率だからな。今の状況に合うように、凝縮率を弄っていけばいい。


「あ、はい! それは確かにそうですよね! ちょっと弄ってみます!」


 凝縮させるんだから、色々と効果範囲が狭くなるのは当然だったー! でも、近付かれた時に調整して使えるのはありがたいかも? んー、まぁ出来るだけ近付かれる状態にはしたくないけど、流れ弾で他の敵には当てたくない時とかにも使えそう!


 それはともかく、今は凝縮率の調整だー! とりあえず100%を少しずつ減らしていって……おー、だんだん射程も線になってた白い表示も太くなっていってる!


「これ、射程が伸びれば伸びるほど、横にも範囲が広がっていくんですね。まぁ元々の獅子咆哮の性能ってそんな感じですけど」


ミツルギ : その辺の微調整をする為のスキルが『衝撃凝縮』だからな。あ、一応いくつか注意点があるけど、その辺は聞いとくか?

ミナト : 注意点ってあったっけ? あんまりこの手の遠距離攻撃は使ってなかったから、ちょっと怪しい?

富岳 : まぁこの辺は使わない人は使わないからな。ミナトさんのプレイスタイルって、今までの傾向的に基本は近接特化型だろ?

ミナト : うん、そうなるよー。まぁ遠距離も出来ない訳じゃないけど、スキル性能の把握は全部が全部は怪しいかも? やってる時には覚えてたんだけどなー。

金金金 : あー、まぁ確かに全スタイルを把握する必要もないのか。ましてや、オンライン版が始まった今は、オフライン版は旧作だし……。

サツキ : 得手不得手は誰にでもあるよ!

咲夜 : ミナトさんの場合、溜めてる間に突っ込んで倒す方が早そうだしなー。


「ミナトさんでも分からない事ってあるんですね! なんだかちょっと意外な気がします!」


 でも、言われてみれば当然の話だよね! 距離によって戦闘方法がまるで違うんだから、そういう事もあるよ!


ミツルギ : あー、ミナトさんの事はとりあえず後回しで、聞くなら早めにしてくれー。1つは、早めに教えておかないと意味がなくなる。


「え、そうなんです!? えっと、えっと、どうしましょう!?」


 そういう何かの時間制限がある内容なら、もっと早めに話題に出して欲しかったくらいなんだけどー!? うぅ……とにかく、その急ぎの注意点だけ聞いちゃおう!


「急ぎの方だけ、聞かせてもらってもいいですかねー!?」


 うん、とりあえずこれで! 話してばっかりも駄目だから、微調整、微調整! とりあえず射程が届くように……えっと、今の距離くらいだと凝縮率40%くらいで射程ギリギリになりそうな感じ? まぁ届くように調整していって、実際に当てられる凝縮率の調整を……。


「え? あれ? 凝縮率の調整が出来なくなりました!? え、なんでです!?」


 ちょっと待って!? まだ微妙に射程が届いてないんだけど、急に調整が出来なくなったのはなんでなの!? あ、溜めが終わってる……?


ミツルギ : ……すまん、遅かったみたいだ。

水無月 : これって、溜めをしている間にしか調整が出来ないとかだったり?

金金金 : 急ぎの注意点って、そういう意味か。

ミツルギ : そうなるな……。

ミナト : あっ、そういえばそんな仕様もあったっけ!

こんにゃく : 慣れたらすぐに調整は出来るようになるから、使い始めの頃に躓く部分だよなー。

真実とは何か : それこそ真実なのである!


「……そういう仕様なんですね。というか、これじゃ当てられない距離になっちゃってるんですけど、どうしたらいいんですかねー!?」


 うがー! この状態で放っても、敵に届かなくてどうしようもないんだけど! 獅哮衝波なら1段階目までの溜めまでなら動けるのに!?


サツキ : この状況から打破する為の手段を募集します!

いなり寿司 : 『縄張り』展開中なら、『畏怖の気迫』で敵の位置調整は出来るんだが……。

G : 今は『縄張り』を使ってないから、効果が出ないから無理だな。そもそもその後に死にかねん。

ミナト : 他のスキルが使える状態じゃないし、身動きも取れない状態でもあるから、正直に言えば自力では無理かも?

イガイガ : 運よく敵の方から近付いてくれる事くらいしかない状況だよなー。


「やっぱりそうですよねー!? うぅ……勿体ないけど、仕方ないです……。無駄撃ちするしかないですね……」


 ミツルギさんからの注意点を聞くかどうかを悩んで、結局時間切れになってたら意味ないよねー! まさしく、この状況こそが注意点だったみたいだし……。

 というか、そもそも敵の姿も見えていないもん! マップ越しで、なんとか位置が分かってるだけだもん!


「って、あれ? 敵の反応が1つ消えました? わわっ!? 残ってる方の敵が、射程内に入ってきましたよ!? 今がチャンスです!」


 具体的には見えてないから分からないけど、敵同士が戦ってる可能性があるって話だったもんね! その決着がついて、勝った方が私の方に近付いてきたっぽい!


金金金 : おっ、ラッキーっぽいな。

サツキ : サクラちゃん、いっけー!


「はい! 獅子咆哮、発射です!」


 溜めてるのもずっと待機してられる訳じゃないし、ここで撃ち放つのです! 見えてない敵はこれで……って、微妙に看破に反応が見えたー! あ、Lv4の聡明なヘビだ! わー、当たる前からHPが半分くらいまで減ってる状態だね!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 まぁ敵の正体を確認出来たけど、その直後には消し飛んだ! うん、なんか今までの獅子咆哮よりも衝撃波が凄かった気がする! 凄かった気はするけど……。


「あのー、敵に当たるのがギリギリ過ぎた気がするんですけど……? というか、もう少し上を向いてたら、射程圏内でも外してました?」


 『衝撃凝縮』なしの獅子咆哮とは違って、上下方向への攻撃範囲も狭まってるよね、これ!? マップの位置関係で狙いを定めてたけど、上下の調整は考えてなかったよ!?


神奈月 : 説明を聞くかどうかの前に、注意点のどっちにも遭遇したなー。

ミツルギ : 今のサクラちゃんの疑問が、もう1つの注意点だな。マップを見ながら手動での狙いは上下の調整が効かないんだよ。

ミナト : そういえばそういうのもあったっけ!

富岳 : 本当に今回はミナトさんが珍しいな。マップ頼りで狙い撃つ場合は『戦意の把握』の自動照準を使った方がいいぞ。そっちで高低の調整はしてくれる。

チャガ : 小技の類だが、自動照準で高さの狙いを調整してから、キャンセルして手動で微調整って事も出来るからな。


「あ、そういう小技もあるんですか! 次からはそうしてみますね!」


 さっきのは色々と反省点はあるけど、それでもどういう注意点があるのかは体感してよーく分かった! 凝縮率の調整は溜めてる間までに終わらせて、高さの調整もしなきゃいけないんだね!

 うーん、凝縮し過ぎるのも場合によっては失敗に繋がる事もあるのは要注意! 運よく敵の方が近付いてきて射程範囲内になったけど、無駄撃ちになるとこだったもん!


ミツルギ : それと基本的にはだが、凝縮率の調整は最大値から下げていくんじゃなくて、最小値から上げていく方がいいぞ。その方が、射程からは外れにくい。

いなり寿司 : 最大値から下げていくのは、ピンポイントで狙いたい敵がいる場合だな。

G : だなー。あ、そうだ。サクラちゃん、一応ライオンのサイズが大きくなってる事も考慮しろよー。口の位置が少し高くなってるから、素での狙いが少し上がってるからな。


「……え? あ、そういえば私のライオン、大きくなってるんでした!?」


 まさかのそんなとこにも注意点があったんだ!? でも『戦意の把握』での自動照準で高さを調整するのなら、その辺は大丈夫かも? うん、大丈夫なはず!

 それにしても、2体倒すつもりが1体になったのは惜しかったかも……。経験値は少なめだったし、進化ポイントも取り損ねたもん! むぅ……いっそこと、縄張りで大暴れしようかなー?

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