第330話 配信事故


 あわわっ!? 姉さんがいる状態なのに、配信開始になっちゃった!? これ、どうしよう!? はっ! すぐに配信を止めて、やり直し――


ミナト : あれ? なんか普段よりも準備が早いような気がしたけど……サクラちゃん、何か失敗した?

ミツルギ : ……なんか金髪の狐っ娘がいるぞ?

金金金 : 貴様、何者だ!?


 ぎゃー!? 間違って配信開始にしちゃったのに、もう3人もやってきたー!? あ、違う! コメントが無いだけで、既に他にも見に来てる人はいるよ!?


「ありゃ? サクラちゃん、これって配信開始になっちゃってる?」

「……配信開始にする準備をしてたら、間違えて開始を押しちゃいました」


 うぅ、盛大にやらかしたー! 変に誤魔化しても仕方ないし、ここはしっかりと事情を説明してから、仕切り直して――


「私が誰かと聞かれたら、サクラちゃんの姉のサツキですとも! ぶっちゃけただの事故だけど、折角だからこのまま姉妹配信をやっていくよー!」

「サツキさん!?」


 待って、待って、待って!? 私は仕切り直すつもりでいるんだけど、姉さんはそのままいるつもりなの!?


金金金 : ドヤ顔の金髪の狐っ娘アバターである! てか、こっちのも出来は良いな。

ミツルギ : まぁ大体想像は出来たけど、やっぱりサツキさんか。

ミナト : あはは、なるほどねー! でもサツキさん、そこからだと配信の画面が見れないんじゃない? 配信事故なら、プレビュー表示の権限もないんじゃ?


「あ、そういえばそうかも? うーん、折角だから配信に居座ろうかと思ったけど、流石に見れないのは困るね……」

「居座るつもりだったのー!?」

「普通にお願いしたら、断られそうだし? それともサクラちゃんは……お姉ちゃんがいるのは嫌なの?」

「……そういう訳じゃないけど」


 うぅ、もの凄いやりにくい! この状況になった原因が私のミスだから、余計に出ていけとは言い辛い! まだ17時50分にはなってないから、姉さん自体が何か悪い事をした訳じゃないし……。


いなり寿司 : なんか早く始まってると思ったら……なんだ、この状況。というか、どこかで見覚えがあるな、この金髪の狐っ娘。

水無月 : こんにちはー! なんか狐っ娘が増えてるねー!

ミツルギ : 金髪の狐っ娘は、サツキさんだとよ。

水無月 : そうなんだ!? 狐っ娘の姉妹!


「サクラちゃんの姉、サツキとは私の事だー! さーて、サクラちゃんを困らせるのは本意じゃないから、一旦撤退だー! それではさらば!」

「え、サツキさん!?」


 あ、そこまで言ったら姉さんの姿が消えていった。フルダイブをやめて、普通に部屋に戻ったのかも? って、外部からの呼びかけがあるし、このタイミングがどう考えても姉さんだー!

 えっと、私だけに聞こえるようにして応答は出来るのかな? 流石に配信にこの声を流す訳にはいかないし……あ、普通に外部とのやり取りでは私の声も、相手の声も入る事はないみたい! うん、それなら問題なしだから応答で!


「美咲ちゃん、今日も配信をファイト! リビングで寛ぎながら見てるからねー!」

「はーい! 姉さん、ミスしちゃってごめんね?」

「あれくらい、いいの、いいの! リアルの姿にしてなかったしねー!」

「本当にごめんなさい!」


 よく考えたら、あれが金髪の狐っ娘の姿じゃなかったら危なかったー! ん? 危なかった……? あれ? そういえばなんで姉さんは、こっちの和室にフルダイブする時にわざわざアバターをリアルとは違う姿のものに変えたんだろ?

 もしかして、居座ってそのまま配信開始になるのを狙ってたとか……? うーん、あり得そう! あり得そうだけど……やらかしたのは私だから、そうだとしても文句が言える状況じゃないよ!?


「それじゃ頑張ってねー!」

「……はーい!」


 もうそこは気にしないでスルーしちゃおう! 過ぎた事を気にしなくてもいいのです! 結果的には、スムーズに姉さんはここの配信に居座る事もなかったし!


いなり寿司 : あぁ、見覚えがあると思ったら、あれか! いつだったか忘れたけど、サツキさんがSNSで載せてたアバターか!

ミナト : え、そうなの?

サツキ : うん、そうなるよー!

ミツルギ : 消えたと思ったら、切り替えてきたのか。なるほど、さっきサクラちゃんが無言になってたのは、外部との会話でなんか話してたんだな。

富岳 : なんだか早めに始まってると思ったが、何かあったのか?

水無月 : サツキさんが配信用の和室に登場!

富岳 : ……なるほど。


「なんか私のミスで、バタバタと慌ただしくてすみません! えっと、流石に今回のは仕切り直した方がいいですよね?」


 今のはどう考えても放送事故だし、それをアーカイブに残すのは……私自身はいいけど、流石に姉さんに悪いもんね! 今の配信は一度終了して、アーカイブは残さずに、改めて配信をし直せば――


サツキ : サクラちゃん、このまま継続してくれていいよー! 私は全然気にもしないから!

いなり寿司 : ……まぁもっと気にすべきとこが、既に色々残ってる訳だしなぁ。

ミナト : あはは、そこは確かにねー! サツキさんが気にしなくて、サクラちゃんもそれで良ければ、そのままでも良いんじゃない?

金金金 : 可能だったら普通にその場に居座るつもりだったみたいだし、問題ないんじゃね?


「……それもそうですね。それじゃこのまま進めていきましょうか!」


 別に私自身は気にしないし、金金金さんの言うように姉さんはそのままここの和室の中にいようとはしてたもんね。姉さん自身もああ言ってるし、そこまで気にする必要もないのかも?


富岳 : ん? 可能だったらって何の話だ?

サツキ : え、配信中の和室の中では、サクラちゃんの配信が見れないって話! 

富岳 : 新しいホームサーバーに買い替えって話だったし、今の最新型ならその程度は外部アプリの呼び出しでどうとでもなるだろ? 古い機種なら、流石に動作が不安定になりかねんが……。

サツキ : そうなの!? ミナトさん、どういう事!?

ミナト : あー、そういえば新しいホームサーバーになったんだし、そういう事も出来たのかも?


 あれ? なんだかこれはミナトさんらしくない反応だよ? 視聴者さんの中でもその辺は詳しい人ってイメージなんだけど……もしかして、ミナトさんはわざと出来ないって言ったの!?


ミツルギ : なんかミナトさんらしくないな。

サツキ : そんな気はする! はっ!? さてはミナトさん、わざとだね!?

ミナト : あははー、それは気のせいだよー? 私だって間違える事くらいあるからねー?

サツキ : ……怪しいなぁー?

いなり寿司 : 放送事故だったんだし、そこは気にしなくてもいいんじゃね? あんまり疑いまくってると、サツキさんが元々サクラちゃんの意思を無視して居座る気だったって事になるぞ?

サツキ : そんなつもりはなかったからー!? うぅ、変な印象を植え付けないでー!?

真実とは何か : 果たして真実は如何に!? サクラちゃん、こんばんは!


「……あはは、まぁその話題はそれくらいにしておきましょう! 真実さんこんばんはー! というか、慌ただしくて挨拶出来てなかったですけど、皆さんも改めましてこんばんは!」


 なんかミナトさんの方も、姉さんの方も、これ以上深掘りしない方が良いと私の直感が告げている! 開始時刻の18時までもう少しあるけど、話題は他のが良いよね!


咲夜 : おーっす、こんばんは! なんか普段より少し早かったみたいだけど、何かあった?

イガイガ : こんばんは! あれじゃね? 新しいサーバーでの初配信だから、少し前から感覚を確かめてみてたとか?

咲夜 : あー、移行した時に不具合が出る可能性もないとは言えないもんなー。


「あ、その辺は全然考えてませんでした!? ちょっとその辺のチェックをしておきますね!」


 わー! 言われてみれば、その辺はちゃんと確認しておくべきだったよー! うぅ、全然思いつきもしなかった内容だったー!

 えっと、和室はざっと見た限りでは異常なし! 和室の外は……うん、ちゃんと竹林は表示されてる! サイコロや笊の確認もしに、箪笥の方もチェックだー!


イガイガ : あれ? そういう事ではなかったのか?

咲夜 : どうもそうっぽい?

いなり寿司 : まぁちょっとした事故があっただけだな。

ミナト : 既に片付いたけど、そういう事だねー。

サツキ : 何があったかは、アーカイブにて!

いなり寿司 : サツキさんがそれを言うのか!?

富岳 : ……まぁ別にいいんじゃねぇか? ある意味では今回の件で唯一、問題なしという保証を出来る人だしな。

咲夜 : 何があったんだ!?

イガイガ : 謎過ぎる!?


「もうそこは気にしない方向でお願いします! どうしても気になる方は、アーカイブに保存した後で! あ、ちゃんとサイコロも笊も出てきますね! 特に問題はなさそうです!」


 軽く確認しただけだけど、新しいホームサーバーに変わった事で異常は特に発生してない感じだね。今のところ、ほんの僅かだけど動きがスムーズになった感じもする!

 新しいホームサーバーになって気付いたけど、配信に切り替えた時にアバターの動きに微妙な引っ掛かりがあったっぽいねー。そして今はそれが無くなってる! 今の今まで気付いてなかったけど!


ヤツメウナギ : こんばんは! お、今は新環境のチェック中か。

ミツルギ : サクラちゃん、新しい環境はどんな感じだ?


「えーと、少しだけなんかスムーズになった感じですねー! 後は特にこれといった変化はないですかね?」


 体感的な違うはほぼ無いって聞いてたけど、意外と体感はあったよね! でも、明確に良くなった実感があるのは嬉しいもん!


ミツルギ : 体感出来るくらいのスムーズさか。これまで、かなりギリギリで動かしてたのか?

ミナト : 体感出来るのなら、本当にそうかも? サクラちゃんの家庭でどんな使い方をしてるか分からないけど、余裕が出来たのは良かったかもね。

富岳 : まぁ元々配信用の機能は後から作られたものだし、VR機器だけでなくホームサーバーにもそれなりの余裕は要求されるからな。状況次第ではギリギリでもおかしくはないか。


「おぉ、そうなんですか!」


 そっか、昨日まで使ってたホームサーバーではギリギリだったんだ! 兄さんも色々言ってたし、だからこそ買い替えになったんだね。兄さんの説明の内容はほぼ理解出来てないけど、明確に良くなったのなら良い事なのですよ!

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