第297話 天候を味方に


 いまいち、目の前で起こった事がよく分からない? Lv30で上限になってるネズミに、失敗したはずの雷が落ちて死んだんだよね? でも、私まで雷に打たれてたけど……?


「えっと、何がどうなって格上のネズミが倒せたんですか? 私に雷が落ちてきたのはなんでです?」


金金金 : 不思議そうに首を傾げる狐っ娘アバター。てか、マジで今のはなんだ?

いなり寿司 : そういや、今みたいな事も出来たっけか。

ミツルギ : 狙えるチャンス自体がほぼ無いから、完全に失念してたな……。

サツキ : え、どういう事ー?

咲夜 : さっぱり分からん!

こんにゃく : 同じく! 今の、何が起きた!?

ヤツメウナギ : 雷の操作……じゃないよな。それはオンライン版の話だし……。


 あれー!? いなり寿司さんやミツルギさんは一応分かってるみたいだけど、他の人達もよく分かってないっぽい!? オンライン版の雷の操作って何!?


富岳 : 自分では一度も実際にやった事がないから、一応攻略サイトを確認してきた。雷への適応進化をした状態で、雷雨の中で放電を使えば、その場所に雷が落ちてくるので間違いないな。

ミナト : えっと、確か他の手段でも似たようなことは出来たはずだけど……その場合は自分が落雷に耐えられなくて死ぬ自滅の手段だったかな?

ミツルギ : あー、同じく確認をしてきた! 雷への適応進化をしていて、更に雷雨に遭遇して、その上で初めて成立する手段だ! 要は避雷針!

G : あー、確か避雷針って放電して雷を引き寄せてるって仕組みだったか。放電が避雷針の役割を果たしてるんだな。

チャガ : モンエボで発生する雷は、ほぼ確殺の攻撃だからな。格上だろうが、お構いなしか。


「え、避雷針ってそういうものなんです!? というか、地味に凶悪な手段ですね!」


 わー、そういう事なんだ! という事は、今の私は雷を意図的に引き寄せられる最強状態!? ふっふっふ、これは大チャンスじゃないですかねー!?


「天気は私の味方のようですね! 折角の格上の敵が近くに沢山いるんですし、これは使わない手はないです!」


 こうなると私のすべき事は決まってくる! 狙うは、もちろん格上の敵の乱獲! ここでそんなレアチャンスを逃してなるものかー!


「徹底的に倒しまくろうじゃないですか! 『威嚇』!」


 ふっふっふ、これで敵の方から来てもらおうじゃないですか! そして、そこへ雷で確殺していくのですよ!


ミツルギ : サクラちゃん、それは危険だ!

ミナト : 遠距離攻撃の敵がいるのを忘れちゃ駄目だよ!

咲夜 : 折角のチャンスでやらかしてるー!?

G : まぁサクラちゃんらしいけども。


「……あっ!? 完全に忘れてましたー!?」


 ぎゃー!? 私はなんでそんな重要な事を忘れているの!? いや、でもまだ大丈夫! 遠距離攻撃が飛んでくる前に、倒せるだけ倒しちゃえばいいだけの話!


「って、そうしてる間にヘビが突っ込んできましたね! 『爪撃』『放電』!」


 機敏なヘビだけど、爪撃で少しだけ噛みつき攻撃を逸らしてから雷を呼ぶのです! わわっ! 本当にまた落雷が来た!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が未成体:Lv27に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを3獲得しました>


 落雷でヘビは即死! ふっふっふ、この自然の力は凄まじいのですよ! 進化ポイントがあんまり手に入ってないけど、面白いくらいの凄いLvの上がり方!


「わっ! 葉っぱが飛んできました!?」


 うがー! 躱し切れずに飛んできた葉っぱで斬られたけど、攻撃してきた草花はこっちの方向! こういう状況になった以上、私のHPが削り切られる前に敵をひたすら倒すのみ!


「そこです! あ、巧みなヨモギですか! わっ、わわっ!?」


 うぅ、今度は葉っぱを連続して飛ばしてきた!? 回避しつつ、近付いていって……って、背後から衝撃!? うぅ、HPがどんどん減っていくよー!


「あっ、今度は堅固なウサギですか!? でも、良いとこに来ましたね! 『放電』!」


 体当たりをしてきたウサギを前脚で押さえつけて、再び雷を呼ぶ! ふっふっふ、くったばれー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


 むぅ、流石に今のはLvが上がらなかった。Lv差が少なくなってきたから、経験値がかなり多い状態から普通になった感じがする!

 わっ!? 違う方向からまた葉っぱで斬られてHPがもう半分を切った!? うーん、この状況なら……よし、こうしよう!


「えいや! そしてこうです! 『雷纏い』!」


 その辺の地面に適当に果物をバラまいて、その上で雷纏いを発動! 後ろからの不意打ちはこれで……って、あれ? 次々と飛んできてた葉っぱの攻撃が止まった?


「あっ!? 地面の水を伝って、麻痺になってるっぽいです!?」


 ふっふっふ、これは大いに誤算だけど、良い誤算! とりあえずバラまいた果物を拾い食べながら、さっき姿を確認したヨモギから!


水無月 : なんか凄い事になってるよ!?

名無しのカカシ : とんでもねぇな、これ……。

サツキ : どんどんやっちゃえ、サクラちゃん!

富岳 : 完全に天候がサクラちゃんの味方だな。

ミナト : あはは、この状況は私も遭遇した事がないかなー?

いなり寿司 : 雷雨自体がレアだしなー。


「皆さん的にも相当珍しい状況なんですね! もう1発いきますよー! 『放電』!」


 麻痺して動けなくなっているヨモギへと落雷を誘導! うふふ、この一方的な展開、もの凄く楽しい! 格上にやっているというのが尚更に!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「ヨモギも撃破完了です! 次! って、わっ!?」


 まだ動いて攻撃してきた敵……って事は才智のトリカブトだー! わわっ!? 毒になってるよ!? あれ、ちょっと待って!? 『微毒』じゃなくて『毒』!? ぎゃー!? HPの減りが今までの毒より早いー!?


ミツルギ : 出てきたな、『麻痺毒』の更に上位の毒の『毒』。

富岳 : 『毒』は『微毒』の継続ダメージ量の強化版だ! 性質は変わらんが、威力は相当上がってるぞ。

ミナト : ドクダミかハチミツで解毒が出来るから、大急ぎで解毒だよ!


「あ、はい、分かりました! でも、先に仕留めておいた方が良いですよね! 『放電』!」


 このトリカブト、遠距離から葉っぱを飛ばすんじゃなくて、根で歩いてき葉っぱで斬りつけてきたもんね! 解毒してもすぐに他の毒を使われたら意味がないから、先に仕留める!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が未成体:Lv28に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを3獲得しました>


「撃破成功です! わわっ! 死にそうなんで、ここはハチミツで!」


 大慌てでハチミツを取り出して、解毒と一緒にHPも回復! ふぅ、これでとりあえずの危機は回避した! それでもHPはまだ回復した方がいいし、正確な敵の位置を把握しながらバラまいた果物を食べ――


「ぐふっ!?」


 ちょっと待って!? 雨が何かに遮られた感じになったと思ったら、何かに斬られたんだけど!? ぎゃー!? 出血効果になってる上に、瀕死状態!?

 攻撃してきたのはLv30の才智のイタチ……? でも、今のってどういう攻撃? いや、そこは気にしなくていい! 急いで果物を食べて――


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が死亡しました>

<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>


 うがー! 今度は別の方向から衝撃があったんだけど! むぅ、イタチへと反撃しようとしたらその前に死んだ……。まぁ結構な経験値と進化ポイントが稼げたし、充分だよね!


水無月 : え、なんでサクラちゃん、死んだの!? さっきのイタチの攻撃って何!?


「あ、それは私も気になります! あのイタチ、麻痺が効かなかったのは才智だからなのは分かるんですけど、攻撃はどういうものなんです?」


 あ、10秒経ったから、いつも通りのランダムリスポーンになったね。結局、サイコロで進む方向を決めたのは無駄になっちゃったなー。ランダムリスポーン先は雨が降ってないから、北の方に出ちゃった?


ミツルギ : あれは多分イタチでしか使えない『かまいたち』だな。スキルツリーとしてはサクラちゃんの『獅哮衝波』と同じ位置にあるやつだ。

ミナト : 風を斬撃にして飛ばしてくるタイプの攻撃だねー! 才智で進化して、出血効果と風の遠距離斬撃をメインにしてる感じのイタチになるかな。


「そんなイタチもいるんですね!?」


 まさか風の斬撃が飛んでくるとは思わなかったよ! でも、確か突風を吹っ飛ばしてきたり、風の刃を飛ばしてくるタカとかもいたし、風を攻撃手段にする敵も結構いるのかも!


「まぁ死んだのは残念ですけど、結構な経験値になったので良しとしましょう!」


 まだ雷雲があるのは見えてるし、そっちに戻ってLv30まで上げてしまうのもいいかも? うん、そうしようっと! 次は威嚇を使わなければ、もっと経験値と進化ポイントが稼げるはずだよね!

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