第284話 出てきた敵は


 何かが上を横切ったのが、水面に落ちた影で分かった! とりあえず上を見上げて……あれ?


「……特に何もいないですね?」


 何かが通り過ぎたのは間違いないはずだけど、ただ通り過ぎただけ? あ、地味に看破が切れちゃってるね。これは再発動しとこ。


サツキ : サクラちゃん、いるから! タカがいるからー!

ミツルギ : 近くの木の枝に止まって狙ってきてるぞ!

富岳 : ちっ、看破が切れてるのか! 再発動、急げ!


「え、木の枝にいるんです!? 『看破』! あ、普通にいまし……って、Lv22のエリアボスじゃないですか!?」


 ここでエリアボスのタカが出てくるの!? しかも、強烈なタカだよ!? 枝に止まって大人しくしてるのって……もの凄く嫌な予感がするんですけどー!?


「先手必勝です! 『放電』『放電』……って、あー!?」


 待って、待って、待って! 今の私って湖に脚が浸かってる状態だったよ!? 放電が湖に流れて、タカに向けて飛ばせられない!


咲夜 : サクラちゃん、急いで湖から出ろー!

ミナト : 溜め攻撃を準備してるから、要警戒だよ!


「あ、はい! 分かりました!」


 急げ、急げ、急げー! 咆哮で萎縮を狙うにしても、放電が湖に流れていかない場所に移動してから! そうじゃないと、戦う上でやりにくいもん!


金金金 : なるほど、Lv21じゃなくて、Lv22なのか。地味に法則がズレるんだな。

いなり寿司 : 正確に言えば、進化階位によってバラバラだから、元々そんな法則は無いんだけどな。

イガイガ : 全進化階位で同じようにLv帯が決まっていくなんて、そんな決まりはどこにも出てないし?

G : この辺、1種族目で勘違いしやすいとこではあるからなー。


「見たら分かるって言ってたのってそういう意味なんですね!? とにかくもう少しで陸に到着です!」


 ここのエリアボスがLv21だなんてのは私の勝手な思い込みだったって、実物を見て意味は理解したよ! でも、まだ出てくるのは早くない!? ここ、割と中央に近いくらいのはずなんだけど!

 うがー! その辺を考えるのは後! 今は背を向けて走っちゃったから、即座にタカが止まってた枝に向き直る! ……って、飛び立ったー!?


「ぎゃー!? こっちに突っ込んできてるじゃないですか!? 『咆哮』! あ、なんとか萎縮は入ったみたいですね!」


 危ない、危ない! 結構近くまで突っ込んできたかと思ったら、鋭い爪で襲い掛かろうとしてきたよ! なんとか咆哮で萎縮を入れて、湖に落下してくれてセーフ! 


水無月 : おぉ、お見事! 今のってどういう性能のスキルー?

金金金 : 全身での突撃系かと思ったけど、途中で爪を剥き出しにしてたしな?

ミツルギ : 今のは『タカの鋭爪』っていう、屈強の第6段階のスキルだな。一気に距離と詰めて、爪で一気に抉っていくぞ。

咲夜 : 小動物系なら、そのまま捕まってヤバいやつ!

富岳 : 今のは咆哮で潰して正解だ。ライオンなら流石に持ち上げられる事はないが、それでも屈強系統での溜め攻撃は威力がヤバい。


「そうですよね!? ともかく、今は攻撃あるのみです! 『放電』『放電』『放電』!」


 パッと思いついた手段が咆哮だったけど、その判断は正解だったみたい! ナイスだよ、私の瞬時の判断力! そして、今は絶好の攻撃チャンス! さっき無駄に発動しちゃった放電な気はしたけど、地味に一般生物の一掃が出来てて威力分散にはなってないっぽいもんね!


G : あー、攻撃より先にタカを水中から出した方が良くね?

いなり寿司 : 確かにそうかもなー。


「え、なんでです? 『放電』『放電』『放電』!」


 絶好の攻撃チャンスなのに、ここで攻撃の手を緩める理由はないよね? それこそまともに狙いを付けなくても、いくらでも攻撃し放題の今の状況を……。


G : あ、あの事が完全に抜け落ちてるのか。

ヤツメウナギ : タカが落ちてる場所! 位置を考えろー!

名無しのカカシ : その位置はよくなさ過ぎる!


「落ちてる場所って……あー!? 湧き水の湧き始めの位置には回復効果があるんでした!?」


 ぎゃー!? 完全に真横って訳じゃないけど、湧き水の位置には相当近いよ! 弱らせても全快されたんじゃ意味ないし、これはすぐにでも湖の中から引っ張り出さないと!


「わわっ!? 萎縮が切れ……飲ませてたまりますか! 『雷纏い』!」


 萎縮が切れたタカが明確に湧き水の方を見たから、私の切り札を使うのさー! 湖の水と伝わって、麻痺が入った! 入ったけど……!


「うぅ、少し遅かったです……! でも、また削るのみですね! 『放電』『放電』『放電』!」


 うがー! 麻痺にはなったけど、放電で1割くらい削れてたHPは寸前に全快されちゃった。敵が、それもエリアボスが、回復の湧き水を飲むんじゃなーい!

 ともかく、放電でHPをどんどん削りながら再び湖の中へと突入! 出てきたばっかななのに、すぐに戻る事になるとは思わなかったよ!


G : 間に合わなかったか……。

ミツルギ : まぁ雷纏いで麻痺を入れられたのなら、充分だろうけどな。根本的に空飛ぶ相手には入れにくい類の状態異常だし。

ミナト : 今のはとりあえずは結果オーライかなー?

サツキ : サクラちゃん、ここから猛攻をいっけー!


「はーい! 失敗した分、これから取り返します! 『放電』『放電』『放電』!」


 雷纏いの効果は1分! その間に出来る限り、このタカを弱らせるのです! この移動しながらの放電連発はやっぱりいいよね!

 その間になんとかタカの前まで到着! 噛みついてすぐに持ち出したいとこだけど、その前にこうだー!


「一気に行きますよ! 『振り回し』『爪撃』――」


<『爪撃Lv3』が『爪撃Lv4』に上がりました>


「あ、爪撃がLv4に上がりましたね! でも、それは後です! 『連爪』!」


<『連爪Lv3』が『連爪Lv4』に上がりました>


「って、こっちもですか!?」


 噛みつきだとどうしても時間がかかるから、とりあえずこの手のスキルで連続攻撃! うん、ちょっとスキルLvが上がったのでタイミングがズレたけど、うりゃりゃりゃりゃりゃー!


「あ、出血効果が入ってくれましたね!」


 ふっふっふ、これで麻痺が切れても、このタカは激しく動くだけでも弱っていくのですよ! ここまででHPは4割くらいしか削れてないけど、エリアボスが相手なら結構削れてる方だよね!


金金金 : おー、このタイミングで2つもスキルLvが上がるとは!

神奈月 : 昨日の伐採で結構使ってたから、それで熟練度が結構溜まってたか?

こんにゃく : その可能性はありそうだな。


「あ、そういう事なんです!? 次はこれで! 『強牙』『体当たり』!」


 とにかく湖の外へというより、湧き水から距離を離すのみ! うん、陸地には届かなかったけど、それなりに吹っ飛んでくれた!


「次々いきますよー! 『放電』『放電』『放電』!」


 雷纏いの効果時間はあと少しだけど、その前に噛みつきまではやってしまいたいよね! そこまでやったら、麻痺が切れて上空に逃げられても放電で狙い撃てるはず!


サツキ : サクラちゃん、どんどんいっけー!

金金金 : 何度見ても強いな、雷纏い。

いなり寿司 : えげつないんだよな、この麻痺。まぁ今のうちに削れるだけ削っとけー!

水無月 : サクラちゃん、頑張れー!


「はい、頑張りますよー! 『放電』『放電』『放電』! 辿り着いたので『噛みつき』です!」


<『捕食還元』の効果で、進化ポイントを1獲得しました>


 ガブっとタカに噛みついて……おぉ、捕食還元の効果が出たよ! あ、そのタイミングで雷纏いの効果が切れた! でも、最後の最後で麻痺の上書きは出来たはず!

 噛みついてる間に、湖の中から今度こそ離脱なのですよ! それで、次! 急げ、急げー! 麻痺が切れるまで、そんなに時間はないよ!


「えっと、えっと!? どこかに岩はありませんかねー!?」


 噛みつきの効果が続いてる間に、追撃をやっておきたいから叩きつける岩ー! うがー! 岩自体は見つかるけど、位置的にちょっと遠い! ぐぬぬ、こうなったら仕方ないね。その辺の木で代用しよう!


「これでどうですか! えいや! えいや!」


イガイガ : 出たな、噛みつきながらの叩きつけ攻撃。

ヤツメウナギ : 今回はその辺の木を代用かー。うん、木がへし折れてるな。

咲夜 : 衝撃に木が耐えられてないー!?

ミナト : あ、麻痺が切れたね。


「削れたのは半分までですか!? わわっ!? くちばしで刺さないでくれません……って、更に連続で刺すのは止めてくれませんかねー!?」


 痛い、痛いから! 1撃目と2撃目以降のダメージの量が違うから、これは私がやってる爪撃と連爪での連続攻撃に似てる気がする! って、今のでもう3割も削られたー!?

 噛みつきがまだ続いててるんだけど、これは危険なやつ! 早く、早く……よし、もう解放したからこれで大丈夫! って、全然大丈夫じゃなかったー!?


「ちょっと待ってください!? 首筋に爪を立てないでー!? 『放電』『放電』『放電』!」


 ぎゃー!? 解放した瞬間に、次の攻撃がきてるんですけど!? うぅ、空に飛んで逃げると思ってたのに、そのまま爪で首を掴んでくるとか想定外だよ! これ、早く何とかしないと危険だー!? でも、どう振り払えばいいの、これ!?

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