第264話 森での乱戦


 キツネさんを含めた、敵5体に向けて疾走での体当たり開始! どんどん走り回って、雷纏いの効果中はどんどん麻痺させていくのさー!


「えい! やっぱり走りやすいですね! えいや!」


 ふっふっふ、もう自然破壊は大規模にやっちゃってるから、方向転換のために木を蹴り倒すのも気にしない! 地面が滑らないって素晴らしい!


いなり寿司 : これ、沢を進んでた時みたいに爪を立てて走ってる?

ミツルギ : あー、確かに折れ切ってない木の幹の抉れ方を見たらそんな感じもする。

富岳 : 地面が土の部分なら、スパイクみたいになって安定しやすいからな。


「え、そんな動きになってました?」


 特に意識はしてなかったけど……あ、言われてみればそんな感じになってるかも? そっか、無意識にやってたみたいだけど、沢でのあの動き方って疾走だとこんな感じに安定するんだ!

 あれ? でもそう言われると、どういう風にやってたのかがよく分からなくなってきた? えっと、沢でやってたみたいに爪を立ててる状態で走ってるんだよね。


咲夜 : まさかの無自覚!?

こんにゃく : あー、あるある。

ヤツメウナギ : エリアが変わったばかりだと、動かし方が微妙に感覚的に残ってたりするんだよな。

水無月 : そうなんだねー!?


「あ、そういう感じ――ぐふっ」


 ぎゃー!? 調子に乗ってたら、疾走の効果時間が切れて、勢い余って盛大に転んだー!? うぅ、これだけ急加速を使いまくったらそりゃそうなるよ! でも、今の転び方ってそれだけじゃないような? なんか走り方が変になってた気がする。


ミツルギ : そして、その辺を自覚したら逆によく分からなくなって転ぶのも良くある話。

G : 完全に感覚だけでやってると、違いに気付いた時に混乱するんだよなー。

イガイガ : あー、よくある、よくある!


「それなら、むしろ言わないでいてくれた方が良かったんじゃないですかねー!?」


 うがー! 変に走り方が分からなくなったのって、言われたのが原因だよね! 確かに無意識にやってたのを意識的にやろうとして、なんか変な感じになったけども!


「『爪撃』『連爪』!」


 とりあえず起き上がって、近くで麻痺しているオオカミに連続攻撃! うりゃりゃりゃりゃー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「オオカミ1体撃破です! 次、もう1体のオオカミ! 『振り回し』からの『噛みつき』!」


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「2体目、撃破です! もう雷纏いの効果も僅かですね!」


 でも、その間に2体は倒せた! 獅哮衝波の再使用時間も過ぎてるし、この感じならキツネさんとの遠距離の撃ち合いでもいけるかも!


チャガ : まずは2体撃破だな。さっきの話だが、その辺を自覚的に定着させられるかどうかが重要なんだよ。感覚的なのは、時間と共に薄れていくから。

真実とは何か : それこそ真実なのである!


「あ、なるほど! むぅ、雷纏いが切れましたね。先にイノシシを仕留めちゃいましょう!」


 キツネさんは両方残り3割くらいまで削れてて、堅固なイノシシはまだ残り4割くらいだけど、まぁそこはそういうものだから仕方ない! 火の球を回避する際にイノシシから変に突撃されても面倒だから、そっちを優先的に排除!


「今なら当てられますね! 『投擲』!」


 まだキツネさんもイノシシも麻痺してるから、狙いやすい今のうちにこれで攻撃! 小石を取り出して、イノシシの頭に向かって弾き飛ばす! いっけー!


「あ、やりました! 朦朧になりましたね!」


 それに思った以上のダメージ! ふっふっふ、私の器用のステータスは高いんだから、遠距離攻撃の投擲の威力は抜群なのですよ!


サツキ : 投擲の威力、かなり上がってるねー!

いなり寿司 : なんだかんだで器用がかなり高くなってるしなー。

神奈月 : ライオンじゃ活かしにくいステータスのはずなんだけどな。

チャガ : まぁその辺は育て方次第の部分ではあるぞ。


「育て方次第ですよねー! わっ! キツネさん達、麻痺が解けましたね……。わっ!

 わわっ!? 『放電』『放電』『放電』!」


 次から次へと、火の球が飛んでくるよー!? これ、連撃での遠距離のスキルも持ってそうな感じ! でも、今は先にイノシシを倒してしまうのさー! この火の球の連撃を回避しながらイノシシの体当たりに意識を割くのは大変な気がする!


「『放電』『放電』『放電』! 硬いですね、このイノシシ!」


 堅固なんだから当然なんだけど、中々削り切れない! って、あれ? イノシシに攻撃しながら回避してたら、火の球の数が減ってきた? これって、何か嫌な予感?


「ぎゃー!? Lv16のキツネさんの口から、火が溢れ出てるんですけどー!? 『咆哮』!」


 あからさまに溜め攻撃っぽいのはキャンセル成功で、Lv16のキツネさんは萎縮になった! ここまでの戦闘の感じでは、狐火にもいくつか種類があるっぽいね! そして、いつものように咆哮は大活躍!


「とりあえずイノシシはこれでトドメです! 『体当たり』!」


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「イノシシはこれで撃破完了です! それじゃこれ、いきますよー! 『獅哮衝波』!」


 Lv15のキツネさんの火の球攻撃を回避しつつ、溜めを開始! うふふ、動きながら溜められるって良いよねー! 今回の乱戦は良い感じで戦えてる! 周囲がキツネさんの火の球で火事になっていってるのが気になるけど、そこは私のせいじゃないもんね!


金金金 : サクラちゃん、回避も地味に上手くなってない?

ミツルギ : 滑るのに注意を払っていたのが無くなった分だけ、余裕が出来たんだろうな。

イガイガ : あと、周囲の木々を破壊する躊躇が無くなったか。

咲夜 : それはあるかもなー!

こんにゃく : まぁ散々破壊した後だし、この程度は気にしなくもなるか。

富岳 : なんだかんだで湿原エリアと渓流エリアを通ってきたのが、かなり活きてるぞ。


「その辺をなんとか定着させれたら良いって話ですよねー! そこは私としても、実現させていきたいところです! わわっ!」


 燃えた木が目の前に倒れてきて焦ったー! でも、なんとか回避は成功! 確かに足元へ滑らないように意識が行ってたのが無くなった分だけ、周囲の様子が良く見えてる気がする!

 この状態を維持し続けられたら、明確に上達したという事! 目指すべきはそこだよね!


水無月 : というか、火事になってるけど大丈夫なのー!?

ミナト : 燃え移ったら『火傷』の状態異常になるから要注意ねー! 毒や出血と同じ感じの継続ダメージだから!

富岳 : もし火傷になったら、ワサビを使うと良いぞ。あれの『鎮痛』効果は火傷にも効果がある。


「あ、はい! わかりましたー!」


 そっか、あのワサビの『鎮痛』効果は継続ダメージの軽減の効果だから、火傷にも効くんだね! 持ってて良かった、ワサビかも! まぁ火傷を受けないのが一番いいけども!


「わっ! 萎縮になってたキツネさんが思ったより早く復活しましたね!? でも、こっちも準備は終わりましたよ!」


 獅哮衝波の1段階目までの溜めは完了! 脚が止まって動けなくなったけど、そこは問題なし! ふっふっふ、キツネさん達はこれで終わり!


「獅哮衝波、発射です!」


 上手くいくかは分からなかったけど、思った以上に位置に移動出来たもんね! 狙うは纏めての撃破! ……キツネさんを倒す回数は出来るだけ少ない方が良いもん。ともかく、いっけー!


ミツルギ : お、位置取りが上手い!

ミナト : どっちのキツネも、射線上だね!

咲夜 : まとめて吹っ飛ばせー!


 私のライオンの口から放たれた衝撃波が、2体のキツネさんに直撃していく。手前の萎縮になってたキツネさんに当たっただけじゃ止まらなくて、奥にいるキツネさんのとこまでも攻撃は届いていくんだ! わぁ、1段階目でもかなりの威力!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が未成体:Lv18に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを3獲得しました>


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「今回の乱戦、終了です! 獅哮衝波の1段階目、結構使い勝手は良いですね!」


 キツネさんが2体も出てきた時はどうしようかと思ったけど、なんとか落ち込まずに倒せた! ここで全然倒せないようなら、本当に苦手生物フィルタに入れるしかないもんね。でも、倒せた。……倒せたんだから、その糧はしっかりと私の物にするよ。うん、そうしないとね。


サツキ : サクラちゃん、無理はしないようにねー?

金金金 : 狐っ娘アバターが微妙に辛そうなのがなぁ……。

ミナト : キツネとは無理に戦わなくてもいいんだよ?

富岳 : 辛そうにしてるのを見たい訳でもないからな。


「あ、そんな表情をしてました……?」


 倒してるのはキツネさんだけじゃないし、結局のところはデータだもん! その辺は頭では理解してるけど、やっぱり気持ちの問題は難しいねー。

 うーん、無理せずキツネさんは避ける方向でも良い? キツネさんと戦うのはエリアボスに限定するのでも問題はないかも? 下手に表情に出て、視聴者さんを心配させるよりはその方がいいかもしれないね。

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