第258話 配信前の雑談


 今日の配信、これより開始! コメントが増えて、チェックするだけでも結構時間がかかるようになっちゃったなー。これはもう全部反応が返せないのは仕方ないかも……。うーん、でもそれはそれで罪悪感……。


咲夜 : おし、一番乗り!

イガイガ : いーや、俺が一番だ!

サツキ : サクラちゃんがいきなり悩まし気!? どうしたの!?

ミツルギ : こんばんは。いきなりどうした?

富岳 : なんだ? 何か悩み事か?

ミナト : サクラちゃん、何かトラブルでもあった?


 わっ!? 開始早々に、なんか皆さんに心配かけちゃってる!? うーん、ミナトさんは、無理に反応は返さなくていいって言ってたけど、ここは素直に心境を言っちゃった方が良いかも?


「なんというか、SNSでの反応を返し切れないのが気になっちゃいまして……」


サツキ : あ、なるほどね! サクラちゃん、それは適度にスルーでいいよー! 全部律義に返してたらいくら時間あっても足りなくなるからね!

ミツルギ : あー、急激にコメントが増えたもんな。それで戸惑ってた感じか。

こんにゃく : その辺はお構いなくー!

ヤツメウナギ : おし、今日は配信開始に間に合った! その辺は義務じゃないんだし、適当でいいぞ?

咲夜 :  というか、普通に既に漏れもあるような? 別に気にしてはないけど。


「え、あれ!? 返信出来てないやつ、ありました!?」


 あれー? 全部返したつもり……あっ、誰か他の人と会話してたりするのは割り込むみたいで反応出来てなかったかも? そういえば、見ただけで後で返事しようと思ってそのままになってるのもあった気がしてきた!?


ミナト : サクラちゃん、対応し切れなくなる部分も出てくるから本当に無理して返さなくても大丈夫だからね?

イガイガ : そうだぞー! というか、音声無しのコメントは全然拾えてないんだし、その辺は今更だ!

富岳 : 確かにそれはそうだな。音声無しのコメントと同じだと思えばいい。


「あ、なるほど、そういう考え方ですか!」


 配信中の音声無しのコメントは対応し切れないからスルーしちゃってるけど、対応し切れないって内容自体は本質的には変わらないんだ。そう言われるとなんか、スッと納得できた気がする。そっか、そういう事なんだね。


「なんか自分なりに納得できた気がします!」


サツキ : うん、それでよし! あと、アイスはドンマイ!

水無月 : こんばんはー! あのアイスは悲しいね……。

咲夜 : あぁ、確かに悲しいやつ……。

チャガ : ん? アイスって何の話だ?

ミナト : サクラちゃんがSNSで上げてたアイスの写真の話だね。完全に溶けちゃったアイス……。

チャガ : あぁ、確かにそれは悲惨だな。


「うぅ、そうなんですよね……。ついうっかり、そのまま放置しちゃって……」


 経緯は流石に話さないけど! 冷房がまだ効いてない部屋のうっかり放置して、そのままシャワーを浴びてたからなんて説明し辛い! 冷房を入れるとこから兄さんと被って、オフにしててとか尚更言えない!


サツキ : という事で、サクラちゃんにこれを進呈!


「え、なんですか? わっ!?」


 あ、姉さんからメッセージが送られてきてる? というか、もう姉妹だってバレてるから堂々と配信中にメッセージを送ってきたね!? まぁまだ18時は来てないし、待機中の時間だから良いけども。


ミナト : サツキさん、何を送ったの?

サツキ : うふふ、それはサクラちゃんが開いてからのお楽しみ! サクラちゃん、開けてみてー!


「あ、はーい!」


 なんか姉さん楽しそうだねー。とりあえず個人宛のメッセージ自体は配信には映らないはずだけど、念の為カメラの位置には要注意! 姉さんの宛先の登録は本名だし、私の本名も映ってるから、そこは流石に配信には写したらダメな情報! うん、大丈夫そうだから開いてみよう!


「えっと、何かの試食データ……あ、アイスですね! しかもバニラアイスです!」


 わー! まともにアイスを食べ損なった今日は、これは地味に嬉しい! わーい、早速食べちゃおう! データを開いて、出てきた簡素なカップに入ったアイスを……って、食べる為のスプーンがないよ!?


「あの、スプーンってありませんかねー?」


サツキ : あー!? なんで一緒に付いてないの!?

咲夜 : データの不備?

富岳 : いや、その辺は自前で用意出来るから普通は付いてないぞ。

ミナト : スプーンなら、VR空間のデフォルトで用意されてるはずだよー!

ミツルギ : 最初にサイコロを出したとこにないか?


「あ、そういえば色々ありましたっけ! ちょっと探してみますねー!」


 姉さんお手製の我が家のホームサーバー内の和室にはその手のものは常備されてたから気にしてなかったけど、今の配信用の和室は部屋と家具しか用意してないもんね。でも、標準装備されてる物は色々とある! というか、今使ってるサイコロもそれだったよ!


「……サイコロも自分で作ります?」


 今の今まで気にしてなかったけど、そこだけ自分で作ってないと思ったら気になってきた! でも、サイコロかー。自作するとしても、なんか変わり映えしなさそう。出目の部分をどうにかデザインをする? あ、スケルトンなサイコロとか……そういうの普通にあるよねー。


ミツルギ : いや、流石にサイコロはデフォルトので良いだろ!?

咲夜 : サイコロまで自作する必要はないんじゃ?

ヤツメウナギ : まぁデフォルトのが出目は見やすいしな。変に手を加えても、良くなる余地がない気がする。


「うーん、確かにそうですよね。サイコロは自作するのは止めときます」


 私もそこは思ったところだから、変にこだわらなくてもいいや! サイコロはシンプルなデザインが分かりやすいし、作ったとしてもどこかでありそうな物になりそうだからね!

 サイコロについてはそれで良いとして、今はスプーン! えーと……あった! 小さめのスプーンを選択して、VR空間に呼び出して……うん、これで良し!


「それじゃいただきまーす!」


 パクっとスプーンで掬ったバニラアイスを味わう! んー! 美味しい、これ! わわっ! なんか濃厚でクリーミーで、舌触りもいい! うぅ、そして何よりもアイスを食べる実感がある! 今日はアイスを溶かしてしまった分だけ、なんか余計に美味しく感じる気がする!


金金金 : やってきたら、もの凄い笑顔の狐っ娘アバターの姿だった。

いなり寿司 : おっす。サクラちゃん、何か食べてんの?

ミナト : サツキさんがサクラちゃんに送ったアイスの試食データだねー。

いなり寿司 : あー、なるほど。

金金金 : なんか凄い幸せそうな狐っ娘アバターである。

水無月 : でも、試食データの割に商品ロゴが入ってないね? これって、どこのお店?

サツキ : あ、普通のお店じゃなくて、牧場の売店で出したいってやつー。まだ試作段階なんだけど、友達に試食を頼まれて美味しかったんだよねー! サクラちゃん、どう? 凄く残念そうにしてたから、追加で1個試食データを発行してもらったんだけど。


「あ、そうなんですね! 凄い美味しいって伝えておいてください! サツキさんもありがとうございます!」


 そっか、牧場で販売するアイスの試作品なんだね。このアイス、本当に美味しいから普通にリアルでも食べたい! わざわざ姉さんが頼んで発行してもらった試食データなんだー!


ミツルギ : 美味そうに食ってると、こっちまで食べたくなってくるな。

水無月 : そうだよねー! サツキさん、これってどこの牧場!?

ヤツメウナギ : 通販可能かも知りたいとこだな。

サツキ : えっと、それは……痛!? え、まだ言っちゃ駄目!? あ、そっか。まだ完成してないから……。

いなり寿司 : あー、未完成品では流石に公表出来ないか。

富岳 : というか、それを教えてたらこの待機時間がサツキさんの宣伝時間になりそうだぞ。

金金金 : 美味そうに食うもんな、サクラちゃん。


「え、そうですかねー? 私としては普通に食べてるだけなんですけど。あ、別に宣伝自体は構いませんよ?」


 こうして美味しいものの試食データが食べられるなら、むしろ私としては大歓迎! まぁ姉さんの個人的な友達でも、そんなに試食データを扱う人が多い事はないだろうから、そんなに何度もはないだろうけどねー!

 残ってるアイスはあと1口分。後で姉さんにどこの牧場か聞いてみようっと。多分、個人的に聞く分には教えてもらえるはず!


「ご馳走様でした! とても美味しいアイスをありがとうございます! さーて、丁度18時になりましたし、今日のモンエボの配信プレイを開始していきますね!」


 少し凹んでた気分も完全復活! なんとか渓流エリアの南端までは道を切り拓けてるから、その先のエリアに進むとこから始めていこー!

 あ、そういえばコンビニで撮った、無駄な技術の結晶みたいな張り紙の写真はどうしよう? うーん、まぁ重要なものでもないし別にいっか!



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