第240話 サクラへの期待


 とりあえず渓流エリアで、初めてまともに敵を倒したー! まともにというか、倒したの自体が初めてな気もする? 敵自体には遭遇してるのに……うん、気にしないでいこう!


「さーて、それじゃサクッと第7段階の解放をしましょうか!」


 本命は第8段階の『獅哮衝波』だけど、その前段階は解放出来るだけの進化ポイントは溜まったもんね! 器用のスキルツリーだし、ここで『器用+10』は純粋に強化になるのです! という事で、スキルツリーを表示!


「それにしても……『衝撃波生成』や『獅子咆哮』じゃない方のルートだと、第5段階と第6段階でどっちも『器用+10』なのが微妙な気持ちになりますね」


 必要な進化ポイント数がかなり違うのに、得られるステータスの強化幅が同じってのはなんだかなぁ……。


ミツルギ : まぁそこは仕方ない。スキル重視で行くか、ステータス重視で行くかの違いだし。

咲夜 : でも、器用は特にそれは思うけどなー。スキルを使わない遠距離攻撃って、ほぼ無いようなもんだし。

富岳 : 他のステータスはそうでもないが、器用はな……。


「え、スキル以外での遠距離攻撃って無いんです!? そういえば使った覚えがないですね!?」


 全然気にしてなかったけど、そもそもスキル無しで遠距離攻撃ってどうやるの!? え、実は器用のステータス重視での通常攻撃の育成って微妙なの?


チャガ : 一応スキルを使わずに物を投げる事は出来るが、これは狙いが完全に手動だからな。

こんにゃく : 出来るけど、あんまりメリットがないやつー!

ミナト : んー? 敵を吹っ飛ばした時、他の敵に当てた場合は器用が影響してるんだけど、その辺はあんまり把握されてない?


「え、そんなのあるんです!?」


 要するに体当たりとかで吹っ飛ばした先に他の敵がいて当たれば、それは遠距離攻撃扱いになるって事だよね! ……確かに距離は離れてるんだろうけど、何かが違う気がする。


咲夜 : それ、初耳なんだけど!?

ミツルギ : まぁマイナーな戦法だし、知らなくても当然と言えば当然。

こんにゃく : そんなのあったのか……。

名無しのカカシ : マジで知らなかった。


「知らない人が結構いる手段なんですね!? ちょっと内容を教えてもらってもいいですかねー?」


 知らない人の方が多い感じのマイナーな戦い方なら、別に聞いても問題なーし! 多分、かなり癖が強いからこそ知られてないんだろうしね!


富岳 : サクラちゃんから聞いてきてるし、これは教えても問題はないか。まぁ単純と言えば単純なんだよ。スキルの投擲を使わずにひたすら投げるだけ。

金金金 : すっげぇシンプルだな!?

神奈月 : 何かメリットあるのか、それ?

チャガ : メリットと言えば、一切の再使用時間が発生しない事と、システム上の弾の制約を受けない事。ぶっちゃけ、当たり判定さえあればなんでも投げられるんだよ。

咲夜 : はい?

いなり寿司 : なんでも投げられる……?

ミナト : そだよー! 持ち上げられるものならなんでも。屈強のステータスは必要になるけど、投擲の弾には指定できないサイズのそこら辺の岩とか、植わってる木ととかも投げれるの。

サツキ : 無茶苦茶だね!?


「本当に無茶苦茶ですね!? え、でも湿原エリアでヤナギの木が木を放り投げてませんでした?」


 あれ? その辺がよく分からないよ? あのヤナギの木は投擲持ちとか言ってなかったっけ? あれは違うのかな?


ミツルギ : あぁ、それは投擲系のスキルの仕様の問題。まぁ当たり前ではあるんだけど、種族のサイズによって投擲で投げられる物のサイズに上限があるんだよ。木は最大級のサイズだ。

ミナト : そのサイズ制限を無視できるのが、さっき説明した手段だねー!


「なるほど、そういう事ですか!」


 ふっふっふ、なるほど! 説明してる意味が分かってきたよ! スキルの仕様の制限を掻い潜る事が出来る裏技的な手段なんだね! そういうの裏技的な手段って割と好き!


金金金 : それ、使えても使いどころって少なくね?

神奈月 : 木を掘り出す労力は、普通に戦闘に回せばいいだけのような……。

ミツルギ : そうだぞ。だからマイナーなんだよ。

富岳 : 根本的に木を掘り出して弾に使えるような場所なんて、そう無いからな。森じゃ、他の木が邪魔で木なんか投げれるか。

ミナト : やるとしたら、全部の木を斬り倒して射線を確保して、木をせめて1メートルくらいまで斬っといて、その上でかなー。でも流石に色々と面倒だから、おススメはしないよー。

咲夜 : まさかのミナトさんまでおススメしない手段だと!?

こんにゃく : ガチで面倒なだけなやつだ!

ミツルギ : やるとしたら、最終進化後だな。

名無しのカカシ : あぁ、なるほど、そこまで行ってからか。


「とりあえず今の私には無理そうな話ですねー! 最終進化……あと何段階あるんですかねー? あ、今のは質問じゃないです!」


 危ない、危ない! 今のはすぐに気付かなかったら、ネタバレOKの質問になるところだった! そこはまだ私が知るべき段階の事じゃない、かなりのネタバレ案件だからね!


石突 : そういやこのゲームって、どうなりゃクリアなんだ?

いなり寿司 : ん? 厳密なクリアの基準はないぞ。根本的にクリアすべきストーリーがないしな。

水無月 : そうなの!?

ミツルギ : まぁやり込もうと思えば、いくらでもやり込めるしなー。全難易度クリアとか、全種族の最終進化まで到達とか、全マップ完全踏破とか、図鑑の完成とか、ただ単に飽きるまでとか、目安にするとこはあるが。

石突 : あー、なるほど。その手のゲームか。

ケースケ : やり込み系のゲームなんだな。


「そんな感じですよねー! 色々と種族がいるみたいなんで、ライオンと木以外も色々やりたいところです!」


 でも意外と1種族目のライオンでも結構時間かかってるからねー。多分、1種族目だからこそ時間がかかってるって気はするけど……って、なんか脱線し過ぎてる気がする!?


「ちょっと脱線してる気がするので、流れを戻しますね! とにかくこれを解放です!」


 本来の目的であるスキルツリーの解放をやっていこー! うん、気になる事の内容は分かったけど、有意義だったかといえば正直微妙! どこかで役に立たないかな、さっきの情報。


<『器用』第7段階:ステータス強化『器用+10』を解放しました>


 よーし、これで『獅哮衝波』の解放までの前提は終わり! 進化ポイントは残り2だから、第8段階の解放に必要量の25までは23溜めればいいのさー! これくらいなら今日の配信中にはいけるかな?


「さてと、それじゃ更なる進化ポイントを求めて移動再開です! 『看破』!」


 油断するといつの間にか切れている看破を再発動して、滑りにくい場所を選びながら進んでいくのさー! なんだかんだで脱線してた間に放電や咆哮の再使用時間も過ぎてたのはありがたいね!


「移動中は移動に専念して、休憩場所が近くなったらそっちに敵を誘導する方向でいきましょうかねー! 渓流エリアはその方が良い気がします」


 下手に悪い足場で戦って、足を滑らせて川に落ちたら意味ないもんね! 強制的に川下りになって、移動のし直しは嫌! 川下りは自分の意思でやるから楽しいのですよ!


咲夜 : 落ちまくっていくサクラちゃんを見るのも楽しそうではあるよな?

ミツルギ : ……まぁ否定はしない。

神奈月 : 確かにそれは見てみたい気はする……。

イガイガ : 同じく。

G : 気持ちは分かる。

金金金 : 全然進めなくて涙目になる狐っ娘アバター……それはいいな。

真実とは何か : 涙目になるのが真実とは限らない! 怒っているかもしれんぞ。

金金金 : あぁ、それはそれでいいな。

富岳 : こいつらは……。

チャガ : 相変わらずというか、なんというか……。

サツキ : 何も分かってないね! サクラちゃんはそういう本当に詰まった時は怒ったり涙目になるんじゃなくて、無表情になるんだよ!

ミナト : サツキさん、そのツッコミもどうなの?


「本当に何を言ってるんですかね、サツキさん!? というか、地味に皆さんも私が落ちるのを楽しみにするって失礼じゃないですかねー!?」


 うがー! そうならないように慎重に進もうとしてるのに、そういう期待のされ方って何かが違う! それってお笑い芸人とかその手の人達への期待の仕方じゃない!?


「こうなったら意地でも落ちないように進んでいきますからねー!」


 絶対に落ちてやるもんかー! あ、そうだ。その為にもこれを使って自動防御ってのもありだよね! よーし、そうしようっと!


「奇襲防止でこれを使っておきます! 『放電』!」


 ふふーん、これで攻撃されても自動で勝手に反応してくれるもんね! とりあえずこの状態で滑りやすい場所を避けながら進んでいくのです! 落ちる事への期待には応えないからね!

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