第206話 破壊の跡を


 樫の木を盾にして、2体いるうちのメダカの1体は倒し終えた! 窒息で死んだから、途中からは何もしてないけど、そういう状態を作ったのは私がだから私の勝ち! それはそうとして……。


「何がどうなったらこうなるんですかねー?」


 樫の木に隠れながら様子を見てみるけど、見事なまでに木々が折れて視界が塞がれて悪くなってるね。うん、なんか飛んでくる水は見えるけど、川自体が見えないや!


金金金 : 見通し、悪!?

ミツルギ : あー、メダカが高威力のスキルを使ったか?

いなり寿司 : この惨状的にはその可能性は高そう。

咲夜 : これ、第7段階の『水連弾』じゃね?

ミナト : 第6段階の『水撃』ならこうはならないからねー。


「それって、こんな惨状を引き起こすんです!?」


 水を飛ばしてくるスキルでも何種類かありそうな感じだけど、とんでもないよ、このメダカ!? そんな小さな体で、森を破壊し過ぎだよ!?


富岳 : 一応樫の木の方が連撃系のスキルを使った可能性もあるにはあるぞ。

神奈月 : あー、別に堅固だからって他のスキルツリーのスキルを持ってないとも限らないもんな。

サツキ : サクラちゃんが良い例だもんねー!


「あ、そういう可能性もあるんですね! その辺は実際の戦闘を見てなければ何とも言えないところですか……」


 そっか、そっか。樫の木だって、モンブランの森ではドングリを飛ばしまくってたりもしてたもんね。樫の木とメダカがお互いに遠距離攻撃をしまくった結果がこの惨状なのかもしれない!


「ところで、メダカの姿が見えないんですけど、これはどうしたらいいんですかねー?」


 さっきまでの凄い音は収まってるけど、まだちょいちょい散発的に水は飛んできてる。狙いが定められてないみたいで、変な方向に飛んでいってるけど。


ミツルギ : あー、この状況なら獅子咆哮で邪魔な倒れてる木を吹っ飛ばすか?

イガイガ : こうも視界が悪いと、動くにしても動けないしなー。

G : ありっちゃ、ありか。

こんにゃく : 一掃するのは良いとは思うけど、他にいる敵も巻き込まないか、それ?


「確かにその可能性はありそうですよねー!」


 獅子咆哮でぶっ飛ばすのはありだけど、余計な被害が出るのは避けたいところ。看破で見た限りでは……うん、機敏なトカゲとか精彩な蝶とか何体かいるのは見えてるし、確実に巻き込みそう。

 というか、メダカと既に戦闘になってる敵がいたりしない? なんだか樫の木の方まで水が全然届いてないというより、他の所を攻撃してるような気がしてきたよ?


「ここはあれです! 雷纏いの出番ですね! 一気に仕留めてしまいましょう!」


 巻き込むなら巻き込むのでもいいや! どっちにしても進化ポイントは稼いでいかなきゃいけないし、範囲攻撃をするのであればそんなのは承知の上! 才智の敵でも絶対に倒せない訳じゃない!


金金金 : おぉ、やる気だ!

サツキ : サクラちゃん、ファイトー!

富岳 : どの程度の数を巻き込むかによるが、まぁありだろうな。

咲夜 : さて、生き残れるかどうか……。


「咲夜さん、シレっと死亡フラグを立てるのは止めてもらってもいいですかねー!?」


 その可能性はわざと考えないようにしてたのに台無しだー! もうランダムリスポーンも上等ですよ! ほぼ弱ってない樫の木を盾に、出来るだけ多くの敵を倒して、可能な限り進化ポイントと経験値を手に入れるまで!


咲夜 : ……なんかすまん。

ミツルギ : 今ので死亡フラグが折れてればいいんだけどな。

名無しのカカシ : 死亡フラグを立ててるのはサクラちゃん自身のような気もするけど……。

イガイガ : そこは気にしない方向で!

水無月 : なんかよく分かんないけど、サクラちゃん、ファイト!


「はい、頑張っていきますよー! それでは『獅子咆哮』!」


<『獅子咆哮Lv1』が『獅子咆哮Lv2』に上がりました>


「おぉ!? 獅子咆哮のLvが上がりましたよ! 良いタイミングですね!」


 死亡フラグじゃなくて、咆哮のLvアップフラグだった!? うん、それはただの偶然だー! でも、このタイミングで強化は本当に嬉しいね!


金金金 : 獅子咆哮のLvが上がったらどういう変化がある?

ミツルギ : 威力が上がるのは当然として、どのLvでも共通なのは射程の延長だな。それ以上詳しい事は……サクラちゃん、聞くか?


「んー、状況が状況なので教えて欲しいです!」


 溜めが早くなるとかならすぐに実感出来るんだろうけど、どうもそういう強化ではないみたい? でも、この言い方は何か他の強化があるって事だよね!


ミツルギ : 了解っと。Lv2になった時での変化は、溜めの間に受けるダメージの軽減だ。

富岳 : まぁそこまで劇的に減る訳じゃないけどな。精々ダメージ量の1割の軽減ってとこか。


「おぉ、ダメージ量が減るんですか! 1割でもかなり違う気がします!」


 身構えで半減って考えたら、1割の軽減でも相当良い気がする! 欲を言えばノーダメージになれば嬉しいけど、流石にLv2でそんなのはある訳ないもんね! 動けない間のダメージ量がちょっとでも減るなら少しだけど使い勝手が良くなったかも?

 でも今回は、隠れている樫の木の幹から顔だけ出して獅子咆哮の溜めが終わるのを待ってるし、この樫の木からは全然攻撃されないんだから、あんまり意味はない気がする。


「さて、溜めの完了はもう少しですねー! 樫の木を頼りにして、頑張りましょう!」

 

 これからの1戦では、樫の木はは私の勝利の要! 無事に最後まで生き残った時には、全力で倒して経験値と進化ポイントを貰うけども!


ミツルギ : 生き残ったら、最後はこの樫の木が餌食になるんだろうな……。

イガイガ : 今までもそうだったからなー。

名無しのカカシ : そうなのか? いやまぁ、弱ってるだろうから進化ポイント的にはありなんだろうけど。

富岳 : 今のところ、盾になった木はしっかりと仕留められてるぞ。

いなり寿司 : だなー。大体そういう時は、その木がサムネイルになってるから。

名無しのカカシ : ……なるほど。


「その時のMVPだと思ったのをサムネイルにしてるだけですよー! さーて、準備完了です! 獅子咆哮、発射!」


 どの敵を狙ってという訳でもないけども、とりあえず折れて邪魔な木々をまとめて吹っ飛ばす! そこからは……まぁメダカを最優先しつつ、巻き込んだ敵を一掃していこー!


「……わぁ、軽々と折れた木が吹っ飛んでますねー」


 うん、私が発動したスキルなんだけど、これはびっくり。……あはは、あのイノシシの猪突猛進での自然破壊よりとんでもないかも? 川は見えるようになったけど、折れてた木で効果範囲だったのは川の対岸側まで吹っ飛ばしちゃった。


水無月 : わー!? 凄い!?

ミツルギ : サクラちゃん、思った以上に敵を巻き込んだみたいだから要注意だ!

ミナト : えーと、機敏なトカゲ、精彩な蝶、精彩なトンボ、堅固なカエル、強烈なヤマメ【地】……あ、適応進化の個体が混じってるね。Lv3~Lv6の範囲みたい。


「ちょっと待ってください!? 敵に適応進化の個体っているんです!?」


 それ、完全に初耳なんですけどー!? って、なんかヒレで歩いてる感じの魚がいたー!? わっ!? わわっ!? そんな進化の個体もいるの!?


「って、呑気にしてる場合じゃないですね!? 『雷纏い』! 『体当たり』からの『振り回し』!」


 すぐ近くにいた堅固なカエルに体当たりをして、精細なトンボは前脚で叩き落す! よし、どっちも麻痺になってくれたし、全体的に結構なダメージが入ってる!

 精彩の蝶とトンボがHP7割ちょっとで、他のは6割を切るくらい! あ、機敏なトカゲが突っ込んできたけど、勝手に自分から麻痺してくれた!


いなり寿司 : あー、とうとう出てきたか。

こんにゃく : あれ? 地味に初登場?

ミツルギ : 地味にというか、今日が初登場で当たり前なんだけどな。イージーだぞ、これ。

こんにゃく : あ、そういやそうか!

水無月 ; それってどういう意味ー?

富岳 : イージーでは未成体から初めて適応進化の個体が出てくるようになる。まぁ今日、未成体へと進化したとこだから、初登場になるのは当然な流れだな。


「あ、そういう事だったんですか! というか、魚がヒレで地面を歩かないでください! 『爪撃』『連爪』!」


 予想外に適応進化の個体が出てくるなんて事になったけど、魚が地面を歩いてくるなー! なんでこう、歩くはずのないものが歩いてきたりするの!? あ、でも動き自体は鈍いかも!


ミナト : サクラちゃん、今のヤマメみたいに極端に陸地も平気って訳じゃないけど、実際に陸を歩く魚っているんだよ? トビハゼとかムツゴロウとかね。水中を歩く魚なら他にもいるしねー。

富岳 : 陸地に来るのならキノボリウオというのも確かいたか。そのヤマメみたいにまでは動かんらしいが。

ミツルギ : ハイギョってのもいるよな。乾期に土の中に埋まってるやつ。


「リアルにそんな魚もいるんですか!? えいや!」


 とりあえず適当に前脚を叩きつけて、突っ込んできてた堅固なカエルも麻痺にした! ゲームだけの変な敵かと思ったら、リアルの方で変な魚がいる情報が出てきたよ!? うぅ、油断ならないね、リアルも!


「……あれ? そういえばメダカは……って、なんか地面に打ちあがってます!?」


 え、あれ? 何がどうしてそうなってるの!? 窒息で瀕死状態になってるけど、これって早く仕留めないと駄目だよ!?


「間に合ってください! 『放電』!」


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


 よし、なんとかメダカのトドメは取れたから進化ポイントは無事に手に入った! さーて、雷纏いの時間には限りがあるんだから今は大暴れしていくぞー!


「まずは攻撃が痛そうなヤマメから倒します! 『噛みつき』!」


 動きが鈍いからといって油断したら痛いのが屈強系統の進化先だもんね! 更に適応進化の個体なら何か他に特別なスキルを持ってても不思議じゃないから、最優先で仕留めるのさー!

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