第202話 解放された湿原のマップ


 なんとかイノシシに減らされたHPは全快になった! それにしてもこの周囲ってイノシシになぎ倒された木が多いよね。まぁ、あれだけ暴れてたし、私のせいじゃないし、ゲームの中だから気にしない!

 それよりも私が気になるのは、ただHPを回復するだけだったはずなのに、危うく死にかける寸前になったこと! 危うくまたランダムリスポーンになるとこだったよ!


「……なんでレンコンで死にかけなきゃいけないんですかねー?」


ミナト : あはは、まぁその気持ちは分かるけどねー。一定以上の大きさの食べ物や、リアルで喉に詰めやすい食べ物については、安易に飲み込まないように設定しなければいけないってVR機器の制限が決められてたりするんだよー。

ミツルギ : この辺、食べ物をゲーム内で実装する場合の制限だからなー。まぁモンエボだから、極端に変な感じがしてるだけだぞ。

サツキ : どこかのゲームで餅の早食いをしてた人をリアルで同じ事をして窒息死しかけた騒動があったもんねー! 面倒なことをしてくれたってぼやいてた……っていうのを聞いたことがある気がする!

富岳 : 強引なログイン制限を外す件で回収騒動があったのと同じ頃だったか。変な事をする奴が出るから、変なとこで制限が増えやがる。

こんにゃく : そういやそんな事もあったなー。


「あ、言われていたらそんな事件もありましたっけ! なんというか、開発の人達も大変なんですね」


 なんかVR機器でゲームが出始めた頃に、そんなニュースをしてた気がする! その頃って、多分私はまだ小学生? うーん、餅の早食いなんて危険なのはすぐに分かりそうだけど、そういう事があると迷惑な話だよねー。

 というか、姉さんのコメントって変な間があったけど、直接関係者からぼやいたのを聞いたっぽいよね!? 多分、今の変な間は旦那さんに小突かれたと見た! 確かゲーム関係のデザインも何件かやってたもん! 姉さんの方から、仕事で関わった物は送ってくるもんねー。うん、あれらはどれも面白かった!


「まぁそういう事情なら、私も気を付けます!」


 リアルでレンコンの丸かじりをする機会とかないけど、まぁ確かにあの食べ方をリアルでやると危険そうだもんね。でもレンコンに限らず、口の中に食べ物を詰め込み過ぎるのは良くないから、そこは普通に注意しようっと。


「さて、それでは改めてヤナギの木を倒しに行きましょう!」


 なんだかんだでさっきのイノシシ戦でマップは解放出来てるし、ヤナギの木を見つけるのは簡単なのですよ! ふっふっふ、という事でマップを確認していこー!


いなり寿司 : お、ヤナギの木を倒しに行くか!

サツキ : サクラちゃん、ファイト!

咲夜 : 逃げるパターンだって分かってるから、楽勝だな!

神奈月 : またそういう不穏なフラグを立てる……。

G : 今度は何が起こるのか……。

イガイガ : また逃げられるのか、それとも……。


「なんだか咲夜さんがというより、周りの皆さんがフラグを補強していってませんかねー!?」


 むぅ、皆さん揃って私が真っ当に敵を倒すのが不満なのかな? それとも別の何かを期待してるの? 少なくともまた逃げられるって展開だけは避けたいから、そこは全力で阻止しますとも!


咲夜 : そうだ、そうだ! サクラちゃん、言ってやれー!

ミナト : でも、咲夜さん自身がフラグをへし折ってくれとか言ってなかった?

富岳 : 言ってたな。

咲夜 : そこでそういう返しが来る!?


「あ、そういえば言ってましたね。やっぱり元凶は咲夜さんなんです?」


 うーん、咲夜さん本人が言っちゃってるなら、そうなってくるのかな? まぁそれならそれで、お望み通り変なフラグはへし折っていくまでですよ!


「それはそうと、ヤナギの木はどこですかねー?」


 脱線してても仕方ないし、サクッとマップを見てヤナギの木の居場所を確認! えっと、根本的に私の現在地はどの辺り?


「あ、マップの中央を超えて、南西付近なんですね。おー、この感じだと南側に川の上流がある感じですか!」


 思ってたより結構奥の方まで来てたっぽい! 南西というよりは、南南西辺り? マップの端までよりは中央の方にまだ近いくらいだねー。

 スッポンに噛まれたり、レンコンを掘ってたりした辺りは北東の方になるんだねー。南と西に行けば足場がしっかりしてて、北や東に行けば行くほど足場が悪くなってる感じ?


金金金 : ほほう、結構進んでるんだな。

咲夜 : あー、まだマップ端まではそこそこ距離はあったか。

ミツルギ : 出てくる敵のLv的に、大体こんなもんだろ。

いなり寿司 : だなー。もっと奥の方がLvは高いし。

咲夜 : そういやそうだった……。

水無月 : そうなんだ?


「ここまでの経験則的には、入ってきた位置から遠い場所ほど敵のLvは高いですもんねー!」


 うんうん、今自分で言って思ったけど、そういう明確な特徴はあったよ! そしてエリアボスがいるのは、大体一番Lvが高くなってくる付近! 丘陵エリアは広くて、そういう法則は当てはまってなかった気がするけど、そこまで極端には間違ってないはず!


ミツルギ : まぁ普通の敵のLvは大体そうなる。

イガイガ : 丘陵エリアみたいに妙にエリア自体もLv帯も広くて、それが当てはまらない場所もあるけどなー。

サツキ : あ、そういえばサクラちゃん! 今思ったけど、丘陵エリアの名前は変えないのー?


「あ、そういえばそれはすっかり忘れてました!?」


 うーん、正直な事を言ってしまえば、お菓子系の名前にしていくとは決めたけど、それでも地味に面倒では……あ、丘陵エリアに関してはあれがあった! うん、昨日の配信でやってた場所なんだし、これこそ最適!


「それじゃサクッと丘陵エリアの名前を変更しちゃいますねー!」


<『名も無き丘陵』から『お煎餅の丘』へと変更しました>


 モンエボのゲームとしての内容とは全く関係ないけど、配信の内容としてはこれだよねー!


G : あ、何となく予想は出来たけど、やっぱりそれか!

こんにゃく : えーと、今までのエリア名ってどうなってんの?

名無しのカカシ : そこは気になるな……。

真実とは何か : 『名も無き草原』は『プリン草原』、『名も無き河川域』は『カラメル河川域』、『名も無き高台の森』は『モンブランの森』となったのが真実である!

こんにゃく : まさかのお菓子シリーズだと!?

いなり寿司 : 名前が食べ物の人がそれにツッコミを入れるのはどうなんだ?

ミナト : よりによって、いなり寿司さんがそれを言う?

名無しのカカシ : 確かに……。


「まぁまぁ、その辺は良いじゃないですか! それよりも丘陵エリアの名前も決まりましたし、肝心のヤナギの木ですよ!」


 なんだか脱線しまくってるけど、やるべき事はあの逃げたヤナギの木の撃破! えーと、改めてマップを見て、私の現在地の近くにある赤い印を探せー! すぐ近くに……ん?


「……あれ? ちょっと近過ぎるような気がするのは気のせいですかねー? これ、位置的に私の真後ろ辺りに……」


 なんだか嫌な予感がしつつも、後ろを振り返ってみる! えーと、あれ? 真後ろにある木はヤナギの木じゃないね? ふぅ、ヤナギの木の目の前でレンコンを食べてたって事にはならなかったみたい!

 え、でもそれじゃこの近くにいる赤い敵の反応はなーに? あのイノシシみたいに知らないうちに巻き込んじゃった敵でもいた? それにヤナギの木はどこにいるの? 実は植わってるんじゃなくて、遠くに逃げちゃったりしてる?


ミツルギ : あー、なるほど。

ミナト : あらら、何か近くにいると思ってたけど、そういう状態だったんだ。サクラちゃんがそっちを向いてなかったから気付かなかったね。

咲夜 : うわー、マジか。

G : 機敏で良かったってとこか。


「え、皆さんどうしたんです?」


 んー? 皆さんは何を見てそんな反応を……って、ちょっと待って。今、ちょっと目の前の木の奥に嫌なものが見えた気がする! ちょっと風が吹いて、ユラッて見覚えがあるものが見えたよね!?


「これ、手前の木が邪魔でまともに見えてないだけですかねー!? 『看破』!」


 いつの間にか効果が切れてた看破を再発動して、真後ろにある普通の木を回り込んでその先を確認! あー、やっぱりだ!


「イノシシと戦ってる間に、すぐ近くまでやってきてたって事になるんですかねー!?」


 回り込んだ木の先には、Lv5の機敏なヤナギの姿があった。それもHPが少し減ってる状態だし、マップの赤い印の位置とも一致する! うがー! まさかこんなすぐ近くにいたとか思わなかったよ!


ミツルギ : 多分、最初の『猪突猛進』でなぎ倒しまくってた時に近くまで来てたんだろうな。

ミナト : あはは、まぁあの戦闘で巻き込んでなかっただけ、運が良かったかもね?

富岳 : あの時に巻き込んでたら、もっと遠くに逃げられてた可能性はあるからな。


「確かにそれもそうですね!?」


 あのイノシシと戦いながら、このヤナギの木の相手も出来た気はしないもん! でもいた場所が近過ぎてびっくりしたけど、探しに行く手間が省けたよ!


「ここまで近くにいても攻撃してこないなら、初手はこれでいきましょう! 『獅子咆哮』!」


 ふっふっふ、近くに巻き込みそうな敵はいるにはいるけど、そこは考えがある! なんだか地味にHPを回復されてる気がするけど、初手から一気に削るのです!

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