第185話 水場に落ちて


 うがー! 新エリアの湿地に来て早々に、水の中に突っ込んじゃった! でも別に水が汚い訳でもないから、これはこれでありかなー? あ、でも疾走の効果が切れてないから、水場を荒らしながら走るしかない!?


「わっ!? わわっ!? これ、水の中はまともに走れないですよ!?」


 しっかりと固まってる足場じゃないから、脚が沈んでいくよ!? 走れないー!? かといって、疾走の効果で脚を止める事も出来ないよ!?


ミツルギ : 湿地なんだから、足場が悪いのは当たり前だよな。

いなり寿司 : まぁそうなるよな。

咲夜 : というか、水の中で暴れてて大丈夫か?

イガイガ : サクラちゃんなら大丈夫だろ。

こんにゃく : 大丈夫じゃなくね!?

名無しのカカシ : どういう基準の大丈夫!?


「わー!? 敵が集まってきましたよ!?」


 さっき見つけた『才智なハス』とか『巧みなカエル』とか『強烈なサンショウウオ』が来た!? えぇ!? 疾走の状態だと全然まともに動けないんだけど、どうすればいいの!? 全部未成体Lv1だから、スキルさえ使えたらどうにかなるはず!


イガイガ : え、死に慣れてるし?

こんにゃく : そういう理由!?

名無しのカカシ : そういう理由かー。


「大丈夫ってそういう理由ですか!?」


 うがー! 確かに何度も死にまくってるから問題ないけど、新エリアに来て早々に死亡は丘陵エリアに行った時もやっちゃったから避けたいよ!?


「わっ!? カエルが口から水を飛ばしてきたんですけど!?」


 ぎゃー!? 当たってダメージがー!? そういう遠距離攻撃、見覚えがある! こんな感じの魚が使ってたけど、水場にいる敵が使う攻撃なの!? 疾走の効果、早く切れてー!


「とにかく急加速で一気に効果時間を削ります! って、なんか足がどんどん沈んでいくんですけど!?」


 うがー! これ、急加速は全然効果がないどころか、逆効果ー! うぅ、泥沼にはまった気分! はっ!? ここって湿地帯なんだから、言葉通りの状態な気がする!? というか、次々と水を飛ばしてくるカエルの攻撃が痛い!


ミツルギ : 完全にライオンの脚が埋まってるなー。

富岳 : サクラちゃん、どちらかというと減速で削った方がいいぞ。

ミナト : ……あはは、見事にはまっちゃったねー。

サツキ : サクラちゃん、なんとか抜け出して!


「そうしたいんですけど、とりあえず疾走の効果が切れてくれないとどうしようもないです!?」


 ぎゃー!? 今度はサンショウウオが尻尾を叩きつけてきた!? ハスの葉も飛んできてる……って、毒っぽい黄色いの液体が滴ってる!? これ、避けようがないよ!?


「……麻痺毒になったんですけど!? あ、でもおかげで疾走の効果は切れました!」


 効果は切れたけど、麻痺毒になってるから動けない!? うがー! 3体の敵の攻撃が痛い! 次々と攻撃されて、もうHPが3割くらいまで弱ってるよ! このままじゃ死ぬ!


咲夜 : こりゃ、死亡確定?

イガイガ : お、フラグ発動?

神奈月 : 逆に生存フラグかもな。

サツキ : ここからでもなんとかなるよ!

いなり寿司 : さて、咲夜さんのフラグは今回どう出るか。

咲夜 : それって生き残っても死んでも俺が原因になってない!?

ミナト : あはは、まぁそうなるよねー!

水無月 : とにかく頑張ってー!


 なんかコメント欄で咲夜さんが色々言われてるけど、そこを気にする余裕はなーい! 早く! 麻痺毒の回復を早く! 回復したら、麻痺毒には麻痺で対抗だー!


「あ、麻痺毒が切れました! これで対抗です! 『雷纏い』!」


 一度も水中で使った事が無いけど……わー!? 電気が水に伝っていくよ! おぉ、サンショウウオとカエルが麻痺して水面に浮かんできた! うふふ、これは凄い効果だね!


水無月 : わっ! 電気が凄い!

ケースケ : おぉ、敵が一網打尽! あれ、そうでもない?

名無しのカカシ : あー、ハスは無理か。


「……むぅ、ハスには麻痺は効いてないですね。『才智』って確か、知恵での進化先でしたよねー?」


 私のライオンでも出てたから、これについては間違いないはず! 麻痺毒も使ってきてたんだし、あのハスが厄介なのは間違いないよね! 今更どうにもならないけど、敵としては戦うのは避けたかった!


ミツルギ : おう、そうだぞー!

富岳 : さっきの攻撃的に、特に厄介なタイプの奴だな。

ミナト : まず麻痺は効かないと思った方がいいから、その辺は要注意!

こんにゃく : もうこれ、詰んでない?

いなり寿司 : だろうなー。


「詰んでても、一方的に負ける気はないですよ! これでいきます! 『放電』!」


 わっ! 放電を始めた瞬間、水に伝わって狙いを付けるどころじゃなかった! これ、水中じゃ溜める事は出来ないって考えた方が良さそう?


「って、また敵が増えて……麻痺してますね」


 あれー? 周囲が麻痺して水面に浮かんでる敵だらけになったよ? えーと、カエルとかトカゲとかアメンボとかで6体くらい増えた? なんか絶好の攻撃チャンスな気もするけど……私自身も埋まってて動けないからどうしよう!?


「とりあえず今のうちに回復です!」


 麻痺してくれないハスがいる以上、ここで無防備に埋まってるだけって訳にもいかないもんね! ふぅ、浅くて口まで水の中に入ってなくて良かったよ! という事で、HP全快になるまで果物を食べる! 空中に出して、ガブリとね!


イガイガ : お、全快させたって事は負ける気はないっぽい。

サツキ : サクラちゃん、いっけー!

金金金 : 可能な限りやっちまえー!


「はい、そのつもりです! とりあえずハスは邪魔なのでこれで! 『咆哮』! って、これも効かないんでしたー!?」


 わー!? 咆哮でハスを動けなくさせてって思ってたけど、そういえばこれにも耐性があるんだった!? うぅ、でもあのハスの攻撃頻度は高くなさそうだし、どうせ私は動き回れないし、毒は受けたら受けたで放置で良いや!


「ともかく、ひたすら攻撃です! 『放電』!」


 雷纏いの効果中に限れば、水の中での麻痺効果はとんでもない効果範囲になるっぽい! 敵が集まり過ぎてる感じはするけど、放電なら威力は分散するけどその全てに攻撃が届く!


「うーん、分散し過ぎて威力が出ないですね。でもこれを繰り返すしかないですね! 『放電』!」


 もう完全に脚が埋まっちゃってて、身動きが取れないもんね! 多分、獅子咆哮なら使えるけど、雷纏いの効果中に使っても仕方ないのです!

 ぎゃー!? またハスが葉っぱを飛ばして……今度は紫色の毒だー!? これ、微毒かな? うん、動き回らなければ毒の効果は薄めだから、今の状況なら大丈夫! ふっふっふ、今の私は動きたくても動けないもん!


ミツルギ : これ、ハスがいなけりゃ良かった気がするなー。

富岳 : それは仕方ないだろう。そんなに都合が良いだけの事もないからな。

神奈月 : それはそうだよなー。

ミナト : せめて、脚が埋まってなければどうにかなったんだけどね。


「うぅ、忌まわしいハスですね! でも、とにかく攻撃あるのみです! 『放電』!」


 器用で進化して巧みなライオンになったからか、放電の威力自体が上がってる気はする! でも、分散し過ぎて威力が十全に発揮出来てない気もする!? 9体の敵相手にそれぞれ2割くらいしか削れてない! あ、でも中には4割くらい削れてる俊敏なカエルとかもいる?


神奈月 : あっ!

いなり寿司 : あー、雷纏いが切れたか。

イガイガ : やっぱり咲夜さんのフラグだなー。

咲夜 : 俺のせいじゃなくね!?

ミナト : あらら、これはもう厳しいねー。


 うぅ、もう1分が経っちゃって、雷纏いの効果が切れた!? 今はまだ麻痺が効いてるけど、麻痺が解けたら……もう無理じゃない? いや、まだだよ! 死ぬのは回避できない気がするけど、1体も倒せないのだけはごめんだー!


「せめて1体くらい倒したいですからもう博打です! 『獅子咆哮』!」


 苦し紛れだけど、今の私に使える最後の一手! これでなんとか何体か……せめて1体くらいは倒したい! 4割削れてるカエルとかなら、死ぬまでに発動が間に合えば倒せるはず!


こんにゃく : お、獅子咆哮を持ってるのか!

名無しのカカシ : あー、器用で進化ってその経路!

いなり寿司 : そういう経路だな。さて、溜めが間に合うか……。

ミツルギ : そこが勝負の分かれ目だな。

富岳 : ミナトさんなら、ここからどう切り抜ける?

ミナト : この状態から? うーん、脚がここまではまっちゃったら抜け出すのが大変だからねー。あえて何もせずに殺されるかなー。


「え、ミナトさんでもこの状況は諦めるんです!?」


 というか、今の状態って抜け出すのが大変なんだ!? うーん、そういう意味なら死ぬのは正解ではあるのかな? ハスからの攻撃でHPも6割くらいまで減ってるし、麻痺も解けた敵も増えてきたし、早く溜めが終わってー!


「ぎゃー!? 一気に襲い掛かってこないでください!? 溜めが終わる前に死にますって!? あ、溜めが終わったので獅子咆哮発射です!」


 急げ、急げ、急げー! もう殺される目前まで攻撃を受けてるから、しっかりと狙いを付けてる暇がない! 雑な狙いだけど、そのままいっけー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


 あ、なんとか1体は倒せたっぽいけど、焦って発動したから巻き込めた範囲が狭――


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が死亡しました>

<死亡した為、ランダムリスポーンとなります>


 うん、見事に死んだ! あはは、1体倒しても残り8体いたら無理だよねー! でも、結果的にはこれで良かったっぽいよね! あのミナトさんが諦めるって言ってた状況だもん!


「さてと、ハマった沼から脱出成功です!」


金金金 : この見事なまでのドヤ顔の狐っ娘アバターである。

水無月 : さっきまで焦ってたように見えたんだけど!?

こんにゃく : なにその作戦通りって顔!?

いなり寿司 : 割と平常運転だぞ?

ケースケ : 死ぬのって問題ないのか?

ミツルギ : ゲーム的に死ぬのは問題ないなー。

ケースケ : あ、そうなのか。


「さーて、それじゃ湿地エリアの探索を続けていきましょう! 目指せ、マップ解放です!」


 さっきのはハマった状態から抜け出すのに必要な死だったって事だから、それでよし! なんとか1体は倒せたし、獅子咆哮の威力自体も上がってた気はするしね!

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