第135話 邪魔をされたから


 うがー! 森を南へと突っ切っていたら、樫の木に邪魔されたー! この樫の木は絶対にぶっ倒すのさ!


「あ、朦朧が解けました!」


 よし、これであの樫の木をぶっ倒せるよー! って、わー!? 今度は葉っぱが飛んできた!? 回避……じゃなくてこれでいこう!


「『放電』で迎撃です! おぉ、完全にではないですけど、それなりに威力は削げますね!」


 放電が当たって明確に攻撃の速度が鈍った葉っぱを、ライオンの爪で叩き落とす! ふっふっふ、葉っぱの遠距離攻撃なんて今の私には効かない!


イガイガ : おー、溜め無しじゃ相殺し切れないけど、威力を削ぐには十分か。

いなり寿司 : 飛んでくる葉っぱに当てるのって、地味に難しかった気もするけど……。

富岳 : その辺は正確な距離感や立体把握能力、後は当てるイメージが必要だからな。苦手意識があるとそれがイメージに反映されて逆に当てられなくなるぞ。

G : 口で言うのは簡単だけど、実際はそう簡単ではないやつ。

いなり寿司 : そうなんだよなー。

咲夜 : あー、サクラちゃんは距離感とかそういうのは得意そう。

ミナト : 狐っ娘のアバターや和室のデータを作れるんだし、その辺の感覚は強いだろうねー!

サツキ : うふふ、私の自慢のサクラちゃんですから!


「えへへ、皆さん、褒めても何も出ませんよー!」


 いまいち実感はないんだけど、放電での攻撃はなんだか結構褒められるよねー! というか、何気に色々作ったりしてたのが操作に地味に影響してたんだ? うふふ、今日は姉さんに引っ掻き回されたけど、ここで自慢のって言ってもらえるのはなんだか嬉しいなー!

 って、ドングリを飛ばして私が喜んでるのを邪魔しないで! この樫の木、本当に邪魔ばっかしてくるね! とりあえず、他の木を盾にして防御!


ミナト : ところで、サクラちゃん。このまま樫の木を倒す感じ?


「そのつもりです! なんか思いっきり邪魔されたので、イラっとしました!」


 地味に転ばされたり巻きつかれたりドングリをぶつけられたりでHPも結構減っちゃったし……って、あれ? この盾にした木って意外と丈夫? 体当たりであっさり折れたりしてた……あ、マップを見たら盾にした木も敵だー!?


「盾も敵ですよ、これ!?」


 しかも、こっちも樫の木だー!? なんかさっきから樫の木の遭遇率が高くなーい? うん、まぁそれ自体は別に良いんだけど。


「……なんか木同士で戦い始めましたね」


 この状況は想定してなかったよー! でも、これはある意味チャンスだね! ふっふっふ、互いにドングリを撃ち合って削り合うと良いのです! 絶好の漁夫の利のチャンス!


咲夜 : いつかの松の木の再来か……。

いなり寿司 : 威嚇され、盾にされ、代わりに戦わされる樫の木よ……。

神奈月 : まぁ戦い方の1つなのは間違いないけどなー。

ミナト : あ、そうそう。サクラちゃんに良いアドバイス。敵が使って地面に落ちてるドングリ、消える前に回収したら手に入るよー! 戦闘中だと中々手に入れにくいんだけど、そういう意味でも絶好のチャンスだね!

富岳 : あぁ、そうか。投擲専用だが、手に入るんだったな。

ミツルギ : 回復にも使えるやつは普通に採集だなー。

イガイガ : そういや森で樫の木同士を戦わせてドングリで投擲の弾の乱獲ってあったっけ。中々条件が揃わなくて、意外と実行が難しいやつ。


「あ、そうなんですか! それなら確保していきます!」


 投擲専用のドングリとかあるんだね! 確かにそこら辺に散らばってるし……あ、1個消えた! なるほど、こうやって消えてしまう前なら回収が出来るんだ!

 ふっふっふ、それならばこの機会は逃すのは勿体ない! という事で、流れ弾を避けるように態勢を低くしながら、落ちてるドングリに触れて回収! そこそこ小石も使ってるからここで投擲の弾が手に入るのは嬉しいかも!


<『ドングリ(投擲用)』を1個獲得しました>


 おぉ、本当に投擲用って書いてある! 投擲が使えなければ完全に無用の長物だけど、私には有用なアイテムなのですよ!


「ちなみにこれって小石とはどっちが強いんです?」


 同じ投擲用の弾だとしても、その辺の違いは気になるよね! こっちの方が威力が高いとかあったりするのかな?


ミナト : んー、正直今のはあんまり変わらないねー。

ミツルギ : ただの森での補充手段ってだけだしなー。ただ……あ、これはネタバレになりそうだ。

富岳 : 内容的には思い当たるが、それだとネタバレだな。


「あー、ネタバレ案件ですか」


 うーん、でも内容的に気になる部分ではあるよね。ここはネタバレありでも聞いておくのもありかな?

 頭の上では樫の木同士がドングリを撃ち合ってるし、ドングリを回収しながらどっちも弱っていくのを待つもんね。なんだか妙に気になるし、その間に聞いてしまおう!


「今回はネタバレでも良いので教えてもらって良いですか?」


 うふふ、良い感じにドングリが続々と拾えてるよ! 樫の木は……うーん、私の邪魔をしてきた樫の木の方が優勢みたいだね。どっちも仕留めて進化ポイントにしたいから、その辺のHPの様子は気にしておこう!


咲夜 : サクラちゃんから、ネタバレ許可が出ました!

ミツルギ : それじゃ教えますか。毒を使う樫の木が毒を乗せて撃ちだしたドングリなら、毒ありのドングリになるんだよ。

富岳 : この辺はドングリに限らずだな。毒ありの実を飛ばしてくるのは、大体同じ方法で毒ありの投擲の弾を手に入れられる。

ミナト : その手段で手に入れるのは結構希少だから、その辺は要注意ねー!

チャガ : 自分に当たったヤツは無効になるから、回避したものしか拾えないのも要注意か。


「そんな便利そうな投擲の弾の手に入れ方があるんですね!? でも、最低でも毒持ちの遠距離攻撃持ちを相手にしなきゃいけないんですか……」


 うーん、投擲の弾としては欲しいけども、手に入れるまでの戦闘が地味に大変そう。毒を使ってくるのと、この樫の木みたいに撃った後に少しの間残るのが最低条件みたい? しかもそれを戦闘中に回収するのは大変そうだよね。


「なんというか、狙って手に入れるのは難しそうですし、希少って理由も納得です」


ミナト : うん、だから無理に狙って取りに行く必要まではないよー。偶然手に入ればラッキーくらいにね?

いなり寿司 : 毒の実は普通に採集でも手に入るからなー。

チャガ : ドングリの方が丈夫ではあるから、投擲の射程距離は伸びるがな。


「あ、そういう特徴も……わっ!? あー、びっくりしました!」


 ふぅ、目の前から急に木の根が伸びてきたよ! 標的は私じゃなくて、樫の木同士での戦いみたいだけどね。あ、そういえばいつの間にか威嚇の効果が切れてる? あれ、いつの間に効果が切れたんだろ?


「……威嚇の効果って、いつの間に切れたんですかねー?」


ミツルギ : あ、威嚇なら朦朧で解除になるぞ?

いなり寿司 : 萎縮しながらでも威嚇は出来るのに、朦朧しながらでは威嚇は出来ないとツッコミを入れられる事が多いやつ。

金金金 : 確かにそれはツッコミたくなる。

咲夜 : まぁ萎縮でも朦朧でも、新たには発動出来んけどな!


「そういう風になってるんですね! もしかして自分から頭をぶつけて朦朧にすれば、自分で威嚇を解除できます?」


 理屈としてはそういう事になるはず! ……疾走の解除方法と似ているような気もするねー。


ミナト : それは出来るよー!

神奈月 : ダメージ覚悟でやる必要はあるけどなー!


「おぉ、やっぱり出来るんですね!」


 ふむふむ、地味に自分で解除する手段があるのって重要だよねー! まぁダメージ覚悟でやるしかないみたいだし、そもそも威嚇を使ってる際に止めたくなる状況って格上を集めまくって死にそうな状況な気はするから意味ない気もするけど!


「って、どっちの樫の木もいつの間にか結構弱ってきてますね?」


 エリアボスの樫の木よりも弱るのが随分と早い気がする。あ、そもそもドングリを飛ばし合ってたからどっちも堅牢じゃなくて器用での進化かな? それに普通の敵だから、エリアボスよりも単純に弱いのかも!


「それじゃそろそろ仕留める準備に入ります! 『放電』!」


 結構な数のドングリは回収出来たし、仕留めるべく放電の溜めを開始! 獅子咆哮だと位置的に両方同時は狙いにくいんだよね。両方の根を同時に攻撃するなら放電の方が良い気がするから、こっちにするのさー!


サツキ : サクラちゃんの漁夫の利作戦、開始!

イガイガ : 今回のサムネイルはこれか?

咲夜 : サムネイルは、利用された敵の遺影シリーズ?

ミツルギ : まぁ倒す敵をサムネイルにするなら、何を倒しても遺影にはなるけども……。


「あ、それも良いですね! スクショも撮っておきましょう!」


 という事で、スクショを撮るぞー! ……うん、撮れた! 私のこれから使う投擲の弾を提供してくれた樫の木達にお礼……先に私の脚を引っ張ってきた樫の木の方にはお礼なんか必要ないよ! お礼を言うのは盾になって、代わりに戦ってくれて、ドングリをくれたLvが低い方の樫の木のみ!


「色々とありがとう、盾になってくれた樫の木! そして、脚を引っ張った樫の木はくたばってください! 放電開始!」


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


 丁度、どっちの樫の木も根が出てる状態で放電の溜めが終わってたから、周囲に集まってた蛾を避けて放電での攻撃! うふふ、経験値は少なかったけど進化ポイントと投擲用のドングリをありがとう!


金金金 : 理由はどうあれ、末路はどっちでも同じっていう。

ミツルギ : そこは気にしない方向で。

イガイガ : だなー。

ミナト : それじゃ改めて南の方に移動だね!

サツキ : サクラちゃん、駆け巡れー!


「はーい! 改めて南に向かって出発です!」


 予定外に脱線しちゃったけど、ここから目的地に向かって移動再開だー!

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