第122話 地形の使い方


 2体の蛾の片方は倒した! それじゃ、もう1体を倒していくぞー!


「って、私のHPが半分以上減ってます!?」


 うぅ、思ったよりも蛾にHPを削られてたー! でも、2体同時に相手してるんだからある程度は仕方ない! 少しでも良いから果物でHPの回復を――


「わっ!? わわっ!? 動きが早いんですよ、こっちの蛾!?」


 うがー! 果物を食べようかと思ったけど、突っ込んできたからそれどころじゃなーい! 普通に後ろに飛び退いたら木に当たるから、それも注意しながら連続して回避ー!


「むぅ……回避ばっかりで全然反撃が出来ないです……。しかも回避し切れてないのが多いです」


 ちゃんと避けたつもりでも、蛾の方が素早いみたいで避けきれてない事も多い! しかも連撃だから1撃目を躱しても2撃目が当たったりしてくる! ぐぬぬ、種族の体格差がここまで厄介だとは!

 放電も咆哮もまだ再使用時間が過ぎてないし、闇雲に攻撃してもこの蛾に攻撃が当たるとも思えない。手段自体は持ってるけど、今は使えない手段ばっか!


ミツルギ : こりゃ、咆哮か放電の再使用時間が過ぎるまで回避に専念が良さそうだな。

咲夜 : 森の中での回避の練習には良いんじゃね?

イガイガ : まぁまだ不慣れっぽいしなー。

G : 木を避けるんじゃなくて、木を上手く使えー!

サツキ : そうだよー! サクラちゃん、もうやり方は知ってるはずだよー!

ミナト : んー、まぁそうなるかな。それ以上は自力で頑張ってみて!


「え、木を上手く使う……ですか? え、もう知ってる……?」


 それってどういう事? 木を避けるんじゃなくて上手く使えば打破出来る? ミナトさんからのお墨付きがあるから、このアドバイスは正確なはず。Gさんや姉さんが言ってるからミナトさんにしか出来ない超上級者の手段でもなさそう。


「わっ!? あ、今回は単発なんですね!」


 ふー、必ず連撃を使ってくる訳じゃないみたいだね。うーん、さっきの識別での衝撃波みたいに、途中で攻撃の邪魔を出来れば反撃もしやすく……ん? あ、そういう事だー!

 そっか、そっか! さっきのアドバイスももう知っているって意味も分かった! あれだよ! 松の木に隠れた時のあれ! ありがとう、あの時の松の木! 完全に躱す必要はなくて、その辺の木を盾にしちゃえばいいんだ!


 えっと、そう分かれば背後に木がある位置に移動して……この場合なら、後ろに飛び退くより、上にジャンプの方が良さそう? うん、そうしよう! 後は、蛾の攻撃のタイミングに合わせて……。


「今です! おぉ、やりました!」


 蛾が私に向かって突撃してきたのを木の枝に跳び乗る様にジャンプして回避ー! 蛾は私が跳び乗った木の幹に激突したよ! ふっふっふ、成功だー! やったー!


G : おし、ナイス!

ミナト : うん、それで大丈夫! 森は木で見通しが悪いけど、そこが守りの手段にも変わるからね!

富岳 : うまく立ち回れば、それで無傷でも凌げるからな。

イガイガ : それ、難しいから!?

いなり寿司 : まぁ、一般生物の木を盾にする場合の注意点もあるけど……。


「え、注意点って……ぎゃー!? 木が倒れてるー!?」


 私が乗ってた枝じゃなくて、幹からバキバキと音がして傾いてるよ!? え、なんで!? 私のライオンの重さで枝は折るかもしれないけど、木そのものを倒すほどの……あ、そっか。


「これ、さっきの蛾が当たったからですかー!? とりあえず退避です!」


 このまま一緒に木と倒れる訳にはいかないから、倒れる方向とは違う位置で動けるスペースに向かってジャンプ! ふー、とりあえずこれで私は大丈夫!


 うん、よく考えたらこうなるよね。木の方のプレイをしてて、幼生体の木でも他の木が切り倒せたんだもん! 成長体の蛾の斬撃攻撃で木を切り倒せない訳がない! ……怖いね、この蛾!?


いなり寿司 : 今のが注意点。どうしても一般生物の木を盾にしても、耐久性の部分に問題はあるからなー。

咲夜 : まぁそれでも攻撃は凌げるから、問題はない!

ミツルギ : 俗称として自然破壊防御と言われる手段だ。


「自然破壊防御って、酷い俗称ですね!? でも、確かにそんな気はします!」


 実際、そんな性質の防御方法だもんね! あ、倒れてきている木の下から蛾が出てきたけど、なんかフラフラしてるよ! これ、朦朧になってるっぽい!


「なんか大チャンスみたいです!」


 ふっふっふ、このチャンスを逃す訳にはいかないよね! 倒れた木は……あれ? 横の木にぶつかって、途中で倒れるのが止まったっぽい。

 それはともかく今はフラフラと倒れている蛾へと向かうべき! ……倒れかけの木が邪魔ー! 中途半端に倒れて、進路を塞ぐなー!


「邪魔ですよ、この木! 『体当たり』!」


 という事で、体当たりでぶっ飛ばーす! もう折れちゃってるし、更に完全に折っちゃっても別にいいよね! よし、蛾への攻撃するためのスペースは出来た。


咲夜 : サクラちゃん、相変わらず躊躇がない!

金金金 : そういやオフライン版って、こういう自然破壊の再生ってどうなんの?

チャガ : 時間経過で回復はするぞ。昼と夜が1回ずつ過ぎれば大体元通りだ。……破壊の規模が大きければもう少しかかるが。

G : その間の倒木は、虫の宝庫になる! 大体、倒れてから1時間後くらいから!

神奈月 : え、そんな要素あったの!?

イガイガ : ……地味に知らなかった。

ミツルギ : ……マジであるのか?

富岳 : あー、あるにはあるが、基本的に避けるのが多いやつだな。

ミナト : 苦手な人は苦手だから、盛大に避けられるやつなんだよねー。


「へぇ、そんなのがあるんですね! 1時間後にここに来てみるのもいいかもしれないですけど、とりあえず今は蛾が先です! 『連爪』!」


 なんかいい情報を聞いた気はするけど、今はともかくこの蛾を倒すのみ! 爪での3連撃を食らえー! おぉ、当たる、当たるー! 動きを封じるのは大事だね! そして、再使用時間も過ぎたこれで最後!


「これでトドメです! 『噛みつき』!」


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【器用なライオン【雷】】が成長体:Lv13に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを2獲得しました>


「おぉ、Lvも上がりましたね! ふっふっふ、順調に育ってきてますよ! それじゃ少しだけHPを回復させてからエリアボスの探索、再開ですね!」


 とりあえず採集した果物を2個くらい食べて20%くらいは回復させとこう! 回復アイテムは使うためにある物! 出し惜しみは無しなのです! 後はこのままペースで他の敵も倒して、エリアボスを見つけに行くのさー!


「ふふーん! 疾走はなしで、普通に走っていきますねー!」


 その為にも……あれ? 何か悩んでた気もするけど、なんだっけ? ……なんとなく忘れたままの方が良い気がするから、ここは――


咲夜 : これで進化ポイントは40だし、看破を取るには足りるようにはなったか。

金金金 : 忘れてたっぽいのに、何故それを掘り返した!?

咲夜 : はっ!? しまった!?

サツキ : 何やってるの、咲夜さん!?

咲夜 : サツキさんにだけは言われたくねぇ!

イガイガ : それは確かに。

G : そこには同意しかない。

ミツルギ : だよなー!

サツキ : その反応は酷い!?


「あ、そういえば看破の話があったんでした!?」


 というか、姉さんだけは本当に咲夜さんに文句を言う資格はないと思う! ……うーん、今の私に結論を投げた過去の私を恨むぞー! えぇ、ほんとどうしよう?


「……なんかここはもう諦めた方が良い気がしてきたので、ネタバレでも良いので看破の特徴を教えてください。それを聞いて有用そうなら解放してこの話題は終わらせます」


 うん、もうこれが一番無難な対応な気がする。少なくとも持っていて損するタイプのスキルではなさそうだし、もうこれで良いや!


「というか、自分でスキルツリーの説明を見れば良いですよね、この場合!?」


 なんか全部聞く気でいたけど、根本的にそこは見てなかったー! 


いなり寿司 : まぁそりゃもっともで。

イガイガ : むしろ、何故それを今までしなかったのか。

ミツルギ : 見たら見たで、悩むとこではあるだろうけどな。

神奈月 : そりゃまぁ進化ポイントを溜め直しにはなるし……。

ミナト : 看破は便利だけど、便利過ぎるとこもあるからねー。

富岳 : 便利過ぎるからこそ、サクラちゃんが自発的に見つけて欲しかったとこだがな。


 ちょっと待って、看破ってそんなに言うほど便利なの!? うん、まずは自分でそこを確認だー! 知恵のスキルツリーを開いて、『看破』の内容を表示!


『看破』:アクティブスキル

 視界内にいる相手の識別情報を、交戦状態に入ることなく把握する事が出来る。



「あ、交戦状態にならずに識別が出来るスキルなんですか!」


 え、この性能は想定外だったんだけど、交戦状態にならないって良いよね! これなら確認するだけ確認して、戦闘せずに避ける事が出来るよ!

 でも、これだけじゃそこまで進化ポイントを使う程じゃないよね? 他に何かあるのかな?

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