第3章 頑張って育てます!

第73話 模様替えの下準備


 うー、よく寝たー! もうお昼が近いけど休みの日は最高だね! とりあえず、朝ごはん、朝ごはんー!

 あれ、今日はお父さんもお母さんもいないのー? 多分兄さんは自室でゲームをしてるか、バイトに行ってるかのどっちかのはず。というか、アルバイト先に就職が決まってるもんね、兄さん。


 兄さんが具体的に何やってるか聞いた事はあるけど、内容はよく分かんないんだよねー。業務用のVR機器を触る事があるとは言ってた気もするけど、羨ましいー!

 私も業務用のあれ、欲しいのです! 結婚して家を出ていった姉さんが持ってたのを少し触らせてもらった事があるけど、こう……なんか色々と凄いのは分かった! どう凄いのかはよく分からなかったけど!


「姉さん、元気にしてるかなー?」


 姉さんとは10歳くらい歳が離れてるし、結構遠くに引っ越しちゃったからねー。うーん、私もその内この家を出て自立する日がくるのかなー。いまいちまだその実感は湧かないかも。


「ま、いいや! とりあえず朝ごはんー!」


 後で久々にちょっと姉さんに連絡をしてみるとして、今はともかく朝ごはんー! お昼も近いけど、今日は……お母さんが作る日だよね?

 あ、お母さんからメッセージが来てた! えっと、なるほど、食材の買い出しに行ってるんだね! メッセージは1時間前くらいだから、もうちょっとしたら帰ってくるのかな。うん、とりあえず軽く食パンでも焼いて食べとこう!



 ◇ ◇ ◇



 とりあえず食パンを焼いて、ジャムを塗って食べ終わり! 兄さんは今日は普通に自室にいるみたいだけど、とりあえず用がある訳じゃないから、そこは問題なし。


「さーて、モンエボの続きをやろっかなー!」


 昨日は木を育ててみたら変な事になっちゃったしね。実況プレイは……そういや土日では昼間の時間が空くのを全然考慮してなかった!

 うーん、これから追加で実況外のプレイ動画として録画をしながらやってみる? それか、土日は実況プレイの時間を倍くらいに伸ばしてみる? いや、流石に4時間の実況プレイは長いよね。


「あ、そうだ! 昨日思った、あれをやっちゃおう!」


 ふっふっふ、昨日気になった事。それはすなわち、配信用のVR空間が標準状態である事! あの辺は兄さんに設定を任せたから、デザイン的には全然弄ってないんだよねー。

 おぉ、それなら折角だし、『VR空間の模様替え』と題して中継をしようかな? うん、モンエボも良いけど、そういうのもありだよね!

 

「よーし、それじゃ素材から作っていこー!」


 既に完成済みの物を並べるだけじゃ面白くないから、ここは自作でいこうじゃないですか! まぁただ単純に無料の物もあるにはあるけどちょっと味気ないし、有料だと単品は安いけどつい無駄に買い過ぎそうだから却下ー!


 姉さんが新しいバージョンに買い替えたからって事で古いバージョンをくれたアプリを使って、VR空間用に使う家具のデータを作成開始だね!

 ふっふっふ、狐っ娘のアバターもこれで作ったのですよ! 私が中学生の頃、兄さんがVR機器をを持ってたのを羨ましがってた時に、VR機器も買ってくれた姉さんには感謝してもしきれないのさー!



 えーと、一応携帯端末の方からでも操作は出来るけどそっちだと妙に動作がワンテンポ遅くなるから、VRでのフルダイブを使わないといけないよね。

 んー、模様替えを配信するにしても、流石にお粗末な家具データから作るとこは見せたくないよね。配信の待機時間で模様替えをする事にして、それまでにいくつかパパッと作っちゃえー!


 では、私の家ならぬ、ホームサーバー内の我が家の特別なVR空間へとレッツゴー! 



 ◇ ◇ ◇



 そうしてやってきました、姉さんが昔作ってくれたVR空間! 満開の桜が見える、和風の庭付きの小部屋! というか、建物が独立してるから離れみたいな感じなやつ!

 姉さんは今はデザイン系の仕事をしてるけど、それまでの練習を兼ねて作ってくれたやつ! そして兄さんが容量の無駄が多いとかなんとか言いつつ、何か買ってきてホームサーバーにつけて常に使えるようにしてくれたやつー!


 お父さんやお母さんもたまにここで寛いでるみたいだけど、今は私が独占だー!


「ここが私の第二のマイルーム!」


 とかなんとか、誰もいないVR空間の無駄に言ってみる。まぁお父さんもお母さんも使うからマイルームではないんだけど。兄さんが使ってるのはあんまり見た事ないねー?

 とにかくここはVR空間での寛ぎ空間かつ、フルダイブでの簡単な作業部屋! お招きの許可を出せば家族以外の他の人も入って来れるらしいけど、そこは関係ないからいいや。


「さーて、配信用のVR空間はどんな風にしようかなー?」


 今のはごく普通の、白い部屋にテーブルや小物入れみたいなのが置かれてるだけだもんね。それで特に問題がある訳じゃないんだけど、どんなのにしようかなー?

 何となく変えたいという気分で考えたけど具体的な案ってないんだよねー。とりあえずここでゴロゴロしながら、考えよー。あー、満開の桜が見える和室ってなんか癒される。実際に作るにしてもコンセプトを決めてからじゃないとねー。



 はっ、閃いた! しばらくボーっとしてたけど、思いついたらこれしかない! そっか、そっか、私のアバターは九尾の妖狐だし、服装も和服にしてるもんね! それなら周囲もその様子に合わせれば良いのです!


「ふっふっふ、姉さんが作ってくれたこの第二の我が家こそ、配信用のVR空間にピッタリなのさー!」


 そうと決まれば、すぐに作成開始だー! 流石にここは私だけの空間じゃないから、転用するのはなし!


 でも、姉さんが作ってくれたこの部屋はデザインの参考になる! まずは部屋全体の枠組みを作るとこから始めて、襖とか障子とか、床の間に掛け軸とかも良いね!

 あ、囲炉裏とか……コタツはまだ時期的に早いから、それは後々にやっていく事にしようっと! よし、そうと決まれば、まずはフルダイブは終了!


「ちょっと和室に行って、参考の写真を撮ってこよー!」


 そう、我が家には和室がある! というか、単純に古い家だから半分くらいは和室なのさー! 私の部屋や兄さんの部屋は洋室にリフォームされた部屋だけど、今はいない姉さんの部屋は和室なのですよ!

 お盆やお正月で帰省してきた時は、姉さんと旦那さんはそこで泊まっているからねー。でもリアルの庭には桜はないから、同じ和室でもVR空間はまた特別なのですよ!



 という事で、リアルに戻ってきた! あれ、玄関にお父さんとお母さんの靴があるから買い出しから帰ってきたのかな?

 まぁそれは良いや。とりあえず1階にある姉さんの部屋にレッツゴー! 縁側でのほほんとしてた姉さんの姿を思い出すなー。


「あ、姉さんに一応許可は取っておこうっと!」


 今は結婚して別の家で暮らしている姉さんだけど、帰省してくる時には普通に使ってるからねー! お母さんが定期的に掃除はしてるけど、勝手に入るのは気分的に嫌なのですよ。


 という事で、姉さん宛に確認のメッセージを送信! あ、すぐに返事がきたよ! えっと、わざわざ許可を取らなくて良いのにって書いてるけど、そこは私が気にしてるだけ! うん、好きに使ってくれて良いという許可は得ました!


「よーし、それじゃ写真を撮っていくぞー!」


 そういえば私がアバターを作った時に和服にしたのは、姉さんが和風のものが好きだった影響かなー? リアルで和服を着るとなると面倒だけど、アバターだったらそういう心配はないもんね!

 あ、折角だし、姉さんが置いていってる和服も何枚か写真を撮っておこうかなー? それを参考に九尾の妖狐のアバターの服装を増やすのも良いよね! あ、巫女服とかも似合いそうかも!?


「……おーい、姉さんの部屋で何やってんだ?」

「あ、兄さん! VR空間の改装の為の資料撮影ー! 姉さんからはちゃんと許可は取りました!」

「……ちょっと待て、VR空間の改装って言ったか?」

「うん、姉さんが作っていってくれたあの部屋を参考に、和風に変更するのさー! これから自作をする予定!」

「……はぁ、そういう事は先に言っとけ。標準から自作のデザインを変えるなら、通常よりVR空間の維持でメモリを使うんだから作り終えた時点で俺に言え。それなりにホームサーバーの増強はしてるとはいえ、保存領域が無限にある訳じゃないし、データ容量の調整はしてやる」


 おぉ!? まさかの兄さんから調整の提案! え、でもそんなに兄さんが気にするような事なの? というか、メモリを使うってどういう事ー?

 うーん、いまいち兄さんの言っている事の意味が分からないんだけど、ここは素直に任せて……。


「はっ!? まさか兄さん、作業料を発生させて私の投げ銭を取るつもり!?」

「……今回は取らねぇよ。だがまぁ、拒否するならそれでも構わん。それで今よりも更にメモリを増設する必要が出てきたら、その代金分は請求させてもらうぞ」

「兄さんに頼らなきゃ、何か逆にお金がかかりそうなのは分かったので、作った後はお願いします!」

「よし、それでいい」

「それじゃ早速、作りに――」

「……おい、もう昼飯だぞ?」

「……え?」


 あ、気付けばいつの間にか12時を過ぎてるー!? あれ、もしかしてボーっとしながら考えてた時に思った以上に時間が経ってた!?


 まぁ過ぎたものは仕方ない。とりあえずお昼ご飯を食べてから、配信用のVR空間の改装の為に和風の小物をどんどん作っていこー! ……あんまりお腹空いてないけど、食パン食べなきゃ良かったかな?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る