第12話中庭1
ここを狙っている!
おヨウとおフウ、二人の子供に覆いかぶさるように、地面に身を投げるっ。
ザァッと羽ばたく風圧に、
悲鳴が起こり、その場が恐怖に支配される。
「神社へっ!
結界が張ってあります。
鳥居から中へ」
泣き出すおフウをしっかりと抱きしめたまま硬直しているおヨウを、走ってきた母親に受け渡す。
「走って!
神社へっ!」
パンッ。
手の平を合わせ、見上げる空には黒く大きな翼を広げた一体の妖魔。
姿形は人のようであれ、
抜刀しても届かないか。
「薄紅ちゃん。逃げるんだよ」
人の逃げ惑う庭先で、老女が私の袖を引く。
「おサナばぁちゃん」
「肩から血が出てるじゃないか。
早く」
泣きそうな顔のばぁちゃんの肩を掴む。
「大丈夫。兄様がいないなら、私がここを守らなくちゃ。
誰かっ」
顔を上げるとおおじじ様が通り過ぎていく。
「おサナ」
「お願いします」
気付いてくれたおおじじ様にばぁちゃんを託した。
空中の妖魔は、神社へ向かう人で溢れ出たあぜ道を物色するように首を動かしている。
さっきの事といい、狙いは子供か。
懐に手を入れ、持ってきた破邪の札を引き抜く。
私だって、巫女としての修行を積んでいる。
立てた人差し指と中指の間に、兄様が仕込んだ破邪の札を挟む。
「破邪、
四縦五横に九字を切ると、指先に向かい熱い霊力の塊が流れてくるのを感じた。
その塊が札に吸い込まれていき、チリチリと紅い火花を散らしながら、一直線に妖魔に向かい放たれる。
札は一種の爆発物のような物。
起爆させる為の力を送り込み意思にそって空間を滑る。
強い術者が作った札ほど、解放される力も大きい。
とりあえず翼を折れれば。
空を駆ける破邪の札に気付いた妖魔が身体を捻った。
「破邪っ!」
続けて二枚。
やっぱり兄様のように精度の高い物は放てないか。
新たに放った二枚は交差するように距離を詰めるが、羽ばたきを調整した妖魔の頭の上を通り過ぎていく。
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