悪役令嬢は倒れない!~はめられて婚約破棄された私は、最後の最後で復讐を完遂する~
D@11月1日、『人生逆転』発売中!
第1話 婚約破棄
「エリザベス、俺はお前との婚約を破棄する」
私の婚約者ジェームズ王子は、卒業パーティーの舞踏会場で、高らかにそう宣言した。
美しい金髪とやせ気味ながらすらりとした体。そして、整った顔。公式な場での私たちの晴れ舞台なのに、彼は私ではなくて、浮気相手が
私が、大好きだった彼は、もう私の婚約者ではなくなってしまった。さっきから、周囲の目が痛い。
会場の全員が、私たちを見つめていた。だって、そうでしょう?
今日は学園の卒業式。王子と婚約者として、私たちは一番注目を浴びるはずのカップルだったのだから。
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
こんな屈辱を受けたのははじめてよ。
「エリザベス。お前は、公爵令嬢かつ外交を司る国務尚書の娘という高貴な身分にも関わらず、男爵令嬢イザイラに対して、悪質な嫌がらせをしていたな? そのような者が、将来、王妃として国の頂点に立つことなど許されるはずもない」
なるほど、よく聞く話だ。王子様と近づきたい女が、ライバルを蹴落とすために、悪評を流す。
だけれども、嫌な予感がするわ。
たまにだけど、私は夢遊病のようになることがあるの。ここ半年くらいで、1時間ほど急に意識を失い、気がついたら別の場所にいる。そんなことが何度もあったから。
「イザイラのことを階段から突飛ばしたり、食事に針を仕込んだこともあるな? 級友たちも、それを実際に、見たと証言している」
証人もいるのね。じゃあ、言い訳をしないほうがいい。今は、ただ我慢よ。
「王子様、私はエリザベス公爵令嬢にこの学園に入ってからの3年間ずっと嫌がらせを受けていました。両親のことを、金で爵位を買った成り上がりものなどと悪口を言われて……とても、とても、悔しい思いをしてきました。たしかに、私の家族は、元々は身分の低い商人でしたが、そんないわれを受ける覚えはありません」
周囲の目が私に厳しく向けられている。こんな悪意に満ちた視線は、はじめて。
「身に覚えがありません」
「なにを白々しいことを言っているのだ。たとえば、2カ月前の昼休み。お前は、私と仲良く話をしていた彼女に難癖をつけて、噴水に叩き落したな? 私の従者がたしかに、それを見ていたのだ。言い逃れることはできまい?」
「記憶にありません」
「ならば、イザイラ説明してくれ」
「はい、王子様。あの日、私は、王子様と一緒にお昼ご飯を食べた後に、授業に向かうために中庭を歩いていました。ちょうど、人気が無いように見えたのでしょう。エリザベス様は、私に向かって『この泥棒ネコ』と怒鳴り散らして、噴水に向かって私を強く押しこんだんです」
「ちょうど、私の従者が、彼女の忘れ物のハンカチをとどけるために、追いかけていてそれを目撃したんだ。残念だったな、エリザベス」
たしかに、浮気性のあなたに、ヤキモキする気持ちはあったけど、そんな暴力をふるうことなんて、考えたこともないのに。あなたは、信じてくれないのでしょうね。むしろ、口うるさい私を排除できて幸運くらいにしか思っていないんでしょう? 浮気をされて、私がどんなに傷ついていたかもしらないくせに……
「さらに、1年前の新入生歓迎会の時だ。お前は、イザイラのケーキに針を仕込んだな。食堂のシェフから、お前に買収されてやったという自供も得ている。これをどう言い逃れるか?」
「そもそも、私は、1年前に、彼女と面識もありませんでした。なぜ、そのようなことをする必要があるのでしょうか?」
「見苦しいな。すでに共犯も、自供しているのだ。そんな言い訳が通じるわけがあるまい」
「私を信じて、ください。ずっと、婚約者として、共に苦難を乗り越えてきた仲ではありませんか、王子様!」
私は、最後の希望をこめて、懇願した。
「くどい。お前が、私の信頼を裏切ったのだ。お前には、すべての身分をはく奪して、国外追放に処してやる。覚悟しておけよ?」
「信じては下さいませんか……」
「ああ、俺はお前のことをずっといけ好かない奴だと思っていたよ。清々する」
「そう、ですか……」
「さあ、認めろ。お前の罪をな!」
「ふふふ」
「何が可笑しい?」
「いえ、まさか、あなた方ふたりが、ここまで頭の中、お花畑だったとは思いませんでしたので」
「王子である私を愚弄するか!?」
「ええ、馬鹿に付ける薬はありませんからね」
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