エイミのプレゼント
源 玄輝
想形の日
アルド達がフィーネを取り戻し、束の間の戦士達の休息の時。
エルジオン。
未来の世界に浮かぶ空中都市では人と合成人間との間でいざこざはあるものの、表面的な部分では平和だった。
そんな穏やかなある日、街中を歩いているエイミが学生二人組みとすれ違う。
「ねぇねぇ、彼氏へのプレゼント何にするか決めた?」
「うーん、まだだなぁ。そっちは?」
「まだー。うちの彼氏って欲しいものは自分で買っちゃうから欲しいもの言わないのよね」
「こっちもそんな感じ。色々揃うのは便利でいいけどこういう時困っちゃうね」
「ねー」
話を聞いたエイミは足を止め、思いに耽る。
(そういえば恋人や気になる異性に贈り物をするイベントがあるんだっけ)
想形の日。
エルジオンでは定期的に様々なイベントが開催されるが今回もそれの一つだ。
昔から行われてる風習と言われてはいるが、実際に文献等はほぼ残っておらず、流行り出したのもここ最近商売になると感じた企業が猛烈にプッシュした影響が強い。
現在エルジオンではそういう企業プッシュのイベントが多く存在するが、このイベントが人々に定着したのは難しいしきたりが無いところだ。
イベント参加者は意中の相手にプレゼントを用意し、想形の日が終わるまでにプレゼントを相手に渡すだけ。
最悪朝一に渡しても完了とみなされる気楽さが参加できる人を増やした要因だとされている。
おかげで先ほどの学生のような若い世代からお年寄りまで幅広い層に浸透しており、想形の日が近くなると物販以外にもラッピング包装サービスなども活気付き、経済の流れが良くなるため企業も毎年飽きられないような戦略を出している。
数年前には詩や歌こそ古来より伝わった文化と豪語する人が現れ、一時的に流行が起きたが最近は鳴りを潜め、元のプレゼントに戻った。
さて、そんな想形の日だが、これまでエイミには特に気にするような異性はおらず、しいて言えば父ぐらいで、そもそも合成人間との戦いでそれどころではなかったので考える余裕すらなかった。
「・・・」
だが今回は違い、気持ちに余裕の出来たエイミの脳裏に一人の男性像が浮かぶ。
仲間で苦楽を共にしたアルド。
どうしてアルドの顔が浮かんだのかエイミにはよくわからない。
ただ、これまで色々と世話になった事を考えればお礼を兼ねて何か贈り物をしてもいいのではないかとは思う。
(でもアルドって何が好きなんだろう?)
アルドの事を考えてもパッと喜ばれそうな物が思い浮かばない。
(仕方ない、誰かに聞いてみよう)
別行動をしている仲間を探しにエイミは再び歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます